かつて7人いた子供達は、それぞれ引き取られ、
今ではたった2人の少年が残っているだけだった
まだ5歳で小さかった俺。
体も小さかったが、世界も小さかった。
俺とスコールの世界は、この小さな石の家。
それでも良かった。
シドとイデアがいて、そしてスコールがいるならば。
久しぶりに澄みきった青空
夏らしい風と潮騒の中、灯台の下で
優しいアルトの声が2人の少年に物語を語る
「“竜宮城から戻った若者は、100年経った地上に驚きました”」
想像もつかない現象に俺はママ先生に問い掛ける。
「ママ先生、100年も経ったら主人公のお母さんやお父さんや友達はどうなるんだ?」
「そうね、サイファー。悲しいことだけど、主人公の知ってる人は誰も生きていなかったの」
「それじゃあ主人公はどうなったの?」
スコールが不安そうな顔で物語の続きを促す
「“若者は決して開けてはいけないと言われていた玉手箱の蓋を開けました。するとどうでしょう、若者は見る見るうちに100年も歳をとってしまったのです”…おしまい」
「ねぇ。ママ先生、本当にそこで終わり?」
「ってコトは100歳トシを取ってそのまま主人公は死んだってことか?」
「死んだとは書いてないけど…そういうことね。人間は百歳以上生きるのが難しい生物だから…」
「違う。歳を取ったからじゃない…主人公は淋しくて死んじゃうんだ。僕だって1人は嫌だ」
スコールがぐずる。鼻の頭が赤くなってもう泣く寸前だ。
「バーカ。お前は1人じゃねェだろ?俺がいつも一緒にいるって言ってんのに何で泣くんだよ?」
「サイファーも絶対にいなくなる!お姉ちゃんも、ずーっと一緒って言ったのにいなくなったんだから!」
「お姉ちゃんは女だからいつか嫁に行くんだぞ。ずっと一緒にいられるはずないだろ。でも俺は男だからスコールの側に一生いてやれんだぜ」
「一生って明日も明後日もずっと?」
「ああ。ずっとだ」
「じゃあ、僕もサイファーが一人ぼっちになりそうになったら一緒にいてあげる」
「あ?俺がオマエの側にいてやるのに、俺が一人ぼっちになるハズねぇだろ?」
そんな俺とスコールの会話を、ママ先生が困ったような微笑を浮かべて見ていた。
子供の世迷言と思ったのか
それとも引き離すことは不可能と思ったのか…
その数ヶ月後、俺達は2人一緒にバラムガーデンへ入学した。
500数十年前の会話は、未来を想定しての話ではなかった。
それでもスコールは覚えていたのか、律儀に無謀な約束を守った。
500年の時を飛び越えて…
2002.07.07