その部屋の中には、大きなカプセルと研究員らしき白衣の人間が大勢いた。
ご丁寧にも、隣室とはガラス張になっていて、これからのショウを見物できる仕組みだ。
「カプセルに入ったら、1分で仮死状態、5分で完全冷凍。早いモンでしょ?」
気さくに、研究員が話しかけてきた。
っつ〜か、今このカプセルに入る俺に言うセリフか?
「へえ、そうかよ。解凍にはどれくらいかかるんだ?」
「500年の冷凍は初めてですからねえ…それまでこの装置が存在するか疑問ですよ」
「この世の中、何があるかわかんねえからな〜」
「アナタがそれを言いますか…」
渡された特殊な服に着替えさせられ、何かの薬品を投与される。
背後でタイムカプセルの蓋が開き、食肉植物のように獲物を待っていた。
カプセルの中に押し込められた時、隣室に見物客が入ってきた。
スコールも警備兵と一緒だ。
俯いたまま顔を上げず、大人しく椅子に座っている。
体を装置に固定される。
さっきよりも機械音が大きくなっていた。
(いよいよだな…。)
カプセルの蓋が閉められ、急速に気温が下がってきた。
その時、ガラスの向こうのスコールが突然顔を上げ、部屋を飛び出した。
警備員が追う。
(見ていられなくなったのか?)
眠気が襲った時、この部屋のドアが開きスコールが飛び込んできた。
警備員の静止を振りきってカプセルに近づく。
カプセルに両手をつき、何かを叫んでいた。
もう涙でグチャグチャだ。
(オマエ、そんなんで俺がいなくても大丈夫なのか?)
(ったく…最後の最後まで心配させやがって…)
(目覚めたら、まず最初にオマエがどんな風に生きたか確認してやるからな)
ガラス越しでもいいから触れたかった。
だが、両腕は何本ものベルトに固定され動くことが出来ない。
警備兵の手が肩にかかり、スコールが引き戻される。
カプセルから手が離れ、どんどん俺から遠ざかって行く。
スコールと視線が交わる。
スコールは、涙で濡れた瞳で…微笑んだ。
幾筋も透明な雫を流し、綺麗に微笑む。
俺も寒さでこわばった顔で微笑み返す。
俺にとって最高の餞。
…3年間、俺を愛してくれてありがとう…
そのまま微笑を残し、俺は500年の眠りに落ちた。
2001.07.07