| ホシウタ |

02

俺がガーデンに復帰し、スコールの副官になって3年目のことだった。

3年。

この3年間で俺とスコールの関係は、微妙に変わった。
ライバルであることは勿論、信頼の置ける仕事仲間であり、…恋愛関係だ。
この俺が、こんな穏やかな気持ちになれるなんてな…。

そう、3年。

3年経てば、町の復興は完了し、国の機能が正常になる
そして、アルティミシアが与えた恐怖は怒りに変わる。



…それは、忘れた頃にやってきた。



各国の協議で『魔女』と『魔女の騎士』を国際裁判にかけることが決まった。
エスタは最後まで反対したらしいが、たとえ大国でも多数決では敵わない。

俺は突然ガーデンに現れた警察に拘束され、その時がやって来たと悟る。


ツケを払う時が来た。
ただそれだこのこと。


抵抗はしなかった。
俺がしたとことは、知らん顔して生きていけるコトじゃねえ。



だが、スコールは抵抗した。
やってきた役人に、こともあろうかガンブレードを向けた。
そんなコトをさせたくて、傍にいたんじゃねえ…
オマエまで捕まったらどうしようもないだろ?



「スコール…悪ぃな。ちょっと眠っていてくれ」

「!…サイ…」



背後に全く注意を払っていなかったスコールの腹に一発食らわせ昏倒させる。
壊れ物を扱うようにゆっくりソファーに寝かせ振り返る。
あっけにとられて、竦んでいる役人達に意地悪く笑って見せた。



「で、どこに連れて行ってくれるんだ?」




両手に手錠が降ろされる。
廊下に出ると同じように連行されるイデアと、大人気なく暴れ、取り押さえられるシドの姿があった。
キスティスが泣きそうな顔で俺を見ている。



「キスティ、スコールのこと頼んだぜ。出来れば、全てが済むまで監禁でもしてくれねえか?」

「あなたは、それでいいの?」

「ああ、いいんだ」



人生の大半を過ごしたガーデンを後にする。

この3年間、俺にとって『聖域』だった場所
きっともう、戻っては来れないだろう…




俺達が連れて行かれたのは、最近出来たドールの国際裁判所
全ての手続きを省略した“魔女狩り”裁判は、翌日に行われた。

全て用意周到で進んだ。











判決は下された。
いっそ死刑のほうがまだ幸せだ。

残酷な刑罰…500年間の冷凍睡眠

つまり、500年後の世界に放り出されるわけだ。
俺は両腕を掴まれ、別室に連行されようとした。
その時、聴衆席側のドアが壊れそうな音をたてて開いた。
入ってきたのは、裁判が済むまで監禁されていたはずの人間。
ここに来るまで、一体何人の警備兵と戦ってきたのか、アチコチ傷を作り服もボロボロになっていた。



「こんな裁判、無効だ!!」



国の要人達が逃げ腰になる。
それほどスコールの気迫は凄まじいものだった。



「速やかに退出しなさい!たとえ、世界を救った人間でも、この男の罪を消すことは出来ない。警備兵!!つまみ出せ!!」



裁判長の声に、10名以上の警備兵と注射器を持った白衣の男がスコールに詰め寄る。
スコールが身構える。
監禁された時に武器は取り上げられていたようだが、スコールは素手でも強い。
しかも、もうボロボロで手加減できない状態だ。

参ったな…本当に参った…
決心がグラつく。
スコールとなら、世界中を逃げ回ってもいいような気になっちまう。
だが…



「スコール、止めろ。おとなしくしてくれ」

「サイファー!?」

「俺は、この判決に依存はない」

「!!…アンタ、諦めるのか!!?500年なんて、信じられない年月だぞ!!そんな未来に放り出されて…生きていけるはずがない」

「俺を馬鹿にするな?大丈夫だ。この3年間で一生分の幸せを貰った。500年後の世界でも、この思い出さえあれば生きていけるさ」



スコールが警備兵に囲まれ、俯き両手を上げる。
室内に安堵の空気が流れる。
スコールが裁判長に顔を向ける



「裁判長…刑の執行に立ち会わせてください」

「君が暴れたり、被告を連れ去ったりしないのなら許可する…だが、いいのかね?辛いと思うが…」

「最後まで、傍にいたいんだ」



俺は再び両腕を掴まれ、別室に向う扉をくぐる。
声にならない声で呟く



「バカヤロウ…」









無機質な色合いの廊下は、これからの未来を予想させた。





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2001.07.07

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