■ｽｺｰﾙ 自室でｺﾞﾛｺﾞﾛ 13：30■
サイファーが１０日から部屋に篭って出てこない。
俺との会話で何かショックを受けたらしい。
（サイファー…悪役のお決り文句みたいな捨て台詞と共に走り去ったけど…気のせいか、泣いてた気がする…）
（やっぱり…俺が何かしたのか？）
（どうしてなんだ？…突然怒ったり、傷ついた顔したり…）
いつも過剰なくらいベタベタして、うざいと思っていたが…肝心なことは何も言ってくれない。
（もう、そろそろ１ヶ月まともな会話をしていないな…。）
（何故、怒っているのか見当もつかない。）
（やっぱり、男同士で付き合うなんて無理だったんだ…）
告白された時は…サイファーの迫力に負けて、つい交際にＯＫしてしまった。
（勢いでＯＫしたんだ…好きだからじゃない…多分…）
（…サイファーだって…失敗したと思っているはずだ）
（だから、あんなワケの分からないこと言って俺を混乱させるんだ）
（そもそも、“付き合う”ってどうするんだ？前とあんまり変わらない…ただ、いつも一緒に居るだけで…）
（なんだかもう、疲れた…）
「…別れる？それもいいかもな…付き合うなんてバカなことＯＫするんじゃなかった」
（別れたらどうなるんだ？）
（サイファーは俺と居る為にガーデンに戻ってきたといってたな）
（まさか、出て行くとか…？）
そう思うと、胸が苦しくなる。
（別に…なんともない…）
（前にもあったじゃないか、サイファーが魔女について行った時…とか…）
（？…なんだ？）
胸が締め付けられるように苦しい。
ふいに、頬に違和感を感じる。
触れてみると手が濡れた。
「俺…泣いているのか？」
…何故？…何故こんなに苦しい？
思考を中断させるように、部屋のブザーが何度も鳴った。
誰が来たかは知らないが、泣き顔を誰かに見せるなんてとんでもない
（面倒だな。居留守でも使うか…）
「スコール！居るのはわかってんのよ！！開けなさい！！！」
（キスティスか…煩いな、ほっといてくれ…）
無視を決めこんだとたん
ズギギャギャギギギッツ
凄まじい音と共にドアが破られた。
無残な…ドアの穴からキスティスの目が光っているのが見える。
はっきりってコワイ。
（…メーザーアイ…そこまでするか？）
仕方なくベットから起き上がり、役目を果たしていない哀れなドアを開ける。
「なんだ？」
「スコール！あなた、サイファーをどうにかしなさい！！」
「ほっといても、腹が減ったら出てくるだろ？だいたい、なんで俺に言うんだ？」
「なんで？って…だって、あなた達付き合っているんでしょう？」
「は？…ちょっと待て、何で知って…アイツが言ったのか？」
「馬鹿ね。女って、そ〜ゆ〜コトに関してはスルドイのよ。ほぼ、ガーデンの女子全員は知ってるわ…男子は頭が硬いから思い付きもしないけどね。」
誰にも知られていないと思っていただけにショックだ。
しかも、女子のほとんど？
じゃあ、なんで俺とサイファーが２人で歩いているとキャ〜キャ〜騒いでいたんだ？？？
乙女の思考は一生、男には理解できないだろう。
「ちょっと！スコール、意識を飛ばさないでよ？」
「あ…あぁ…」
「１ヶ月前頃から、あなた達、変だったわね。何があったの？」
ショックが大きくて、逆らう気になれなかった。
もしくは、聞いてもらいたかったのかもしれない。
すでに自分の心をもてあまし、疲れていた。
「馬鹿？」
呆れたようにキスティスが俺をみる。
「どっちがだ？」
「どっちもよ！！」
「…。（馬鹿で悪かったな）」
「なんで、１４日にチョコをあげなかったの？」
「だから、なんで俺がアイツにあげなきゃならないんだ？」
「だって、好きなんでしょう？」
「…わからない」
「じゃあ、どうして泣いていたの？」
「…別に…（やっぱり、見られたか…。）」
「答えない気なら、襲うわよ？ふふふ」
不気味に笑いながら、近づいてくる。
ちょっと後ずさり逃げ道を探すが、目の前の女怪は見逃してくれないだろう…。
観念するしか、生存の道は残されていないようだ。
「…（逆セクハラだ）…分かったよ、言えばいいんだろ！…アイツがココを出て行くのを想像したら涙が出た…ただ…ただ、それだけなんだ」
「…スコール、あなた…“ただそれだけ”がどういう意味だか本当に分かってないの？」
「分からないから悩んでいるだろ！」
「怒らないでよ。…まったく、こんなにニブイ子だと思わなかったわ。」
「（ムカっ）」
「好きだから、“別れ”を想像しただけで切なくなったんでしょう？」
「そうなのか？」
「だいたい、迫力に負けて交際ＯＫですって！？サイファーを嫌いだったら“エンド・オブ・ハート”かましてでも追っ払うはずだわ」
確かに、そうだ。
今まで、何をトチ狂ったのか言い寄ってきた馬鹿男共には、容赦無くガンブレをお見舞いしてきた。
サイファーだって、その中の一人にすぎないはずなのに、何故許したのか…。
簡単なことだ。
なんで、今まで気付かなかったんだろう？
自分も傍にいたかったから…好きだから…
突然、悩む隙も与えず、サイファーが自分の中に収まってしまったから・・・あまりにも、しっくり嵌りすぎて自分も《好き》かどうか深く考えなかった。
（本当に、馬鹿だな…。）
「そうか、俺はサイファーのことが好きだったのか…」
「じゃあ、納得したところで本題よ。どうしてサイファーにチョコあげなかったの？」
「え？それは、×××××だから…って、おい…？キスティス？っ、ちょっと待て！！」
ドゴーーーーンッ！
3月13日 14：00
スコールの部屋は全壊した…。
■ｻｲﾌｧｰ拗ねて、ちょっとﾌﾞﾙｰ 14：30■
スコールがわからない。
どうしてあんなに淡々としてるんだ？
俺達付き合ってるよな？
恋人同士特有の甘さが全くない…キスをする隙さえない…。
それでも、傍に居ることを嫌がっていないから少しは期待してもいいんだよな？…って思っていたのに、この仕打ち…。
…チョコをあげる対象に見られていなかった…
「俺らしくねぇよな〜、自分でも行動派だと思っていたのによぉ…本命の反応にビクビクしてやがる…」
欲しいものは、どんな手を使っても手に入れてきた。
手に入れることが出来ると思っていた。
それなのに、今はスコールに拒絶されるのが怖い。
『俺と付き合え！』
そう言った直後に恐怖に襲われた。
あの時、スコールの瞳が嫌悪に染まったら、自分はどうしていただろう…。
「ちくしょう！…やっぱりスコール、俺のこと好きじゃねぇのかな〜」
気分は、どん底。
奈落、もしくは底無し沼に落ちていくようだ。
部屋のブザーが鳴った。
ドアを開ける気分じゃない。
ほっとくか…
「サイファー、居るんだろ？」
（ス、ス、ス、スコール！！！？）
「すぐ開ける！待ってろ！！」
俺ってゲンキンなヤローだぜ！
ベットから飛び起き、何かの角に足の小指をぶつけたが、かまっていられない。
でも、イテェ…。
ドアを開けると、３日ぶりのスコールがいた。
ちょっと、アチコチ擦り傷がある。
（？…任務なかったハズだよな？）
「よ…よぉ…」
「…元気か？…３日、何も食ってないんだろ？」
「そういえば、そうだ…忘れてた」
「あんた、馬鹿か？」
「う、うるせ〜…ま、とにかく中に入れや」
ちくしょ〜〜〜っ！緊張する。
今の会話もぎこちなかったよな？
大丈夫か？俺…。
スコールが俺の部屋を珍しがって見ている。
そういえば、コイツが俺の部屋に入るの初めてだよな。
付き合い始めて、何ヶ月もたっているのに…俺、なにやってたんだ？
即日ゴールが俺の自慢だったのに…
スコールが振り向いて俺をじっと見る。
こんな時のスコールは予測不能だ。
もしかして、俺に愛想尽かして引導渡しに来たのか？
それだけは、勘弁してくれ。
「俺、アンタのことが好きだ」
「へ？」
（今、なんつった？？？スキって言ったよな！？）
「スコー…」
「でも、チョコはやらない。これから先もやるつもりはない。」
「は！？ なんでそうなるんだ！！！？」
「２月１４日は、女子が好きな男にチョコをあげるんだろ？俺は男だ！女子の中に入ってチョコ買いに菓子屋に行くなんて冗談じゃない！！」
「確かに男だな。（美人だが）」
「男の俺が、好きな男にチョコをあげなければいけないなら、アンタも俺にくれなきゃ変だろ！！」
なんだか、ハナシが見えてきた…。
なるほど、確かに言われてみればそうだ。
いつも、貰う立場だからコイツから貰って当然だと思っていた。
大馬鹿野郎だぜ。
こんなコトで一ヶ月も不機嫌な態度でコイツに接してたのか…。
穴があったら入りたいとはこの事だ…
別の意味で入れてぇが…
「明日やる！」
「ホワイト・デー？」
「だから、あんたも俺によこすよな？」
不適に笑うスコールを見て俺は思った…
コイツにはかなわねぇ…
■夕暮れの教室17:00
魔女と少女〜■
“逢魔が時”そんな表現がピッタリな、妖しいまでに赤い夕日が教室内を染めている。
普段ならば暗くなっても数人の生徒が残っているのだが、ＳｅｅＤの卵達は「なにか」を感じ取り、早々と退散していた。
そこに残るのは、黒髪の魔女…そして、対峙するのは１人の少女。
窓辺の後部席を陣取って２人は血のような夕日を浴びている。
「手応えが感じられないの…。」
自慢のおさげを弄びながら、溜息混じりに呟く。
最近付き合い始めた相手が、何もしてくれず少女は焦れていた。
そんな少女はバレンタイン前に、目の前の魔女へ相談を持ちかけたのだ。
だが、アドバイスを貰って実行しても、いつまでたっても反応がかえってこない。
「…おかしいわね。アレはちゃんと入れたんでしょ？いくら鈍くてもアレ入ってたら意味くらい分かるはずだわ。」
「……。」
おさげの少女は気まずげに俯く。
魔女は、その様子をじっと見詰め小首をかしげ尋ねる。
「もしかして、入れなかった…とか？」
「ゴ…ゴメンナサイ！だって、恥ずかしくて買えなかったんだもん！！…でもっ、その代わり違うモノを入れたの…それだって、かなり勇気がいったのよ？」
「そうよね…うら若き乙女が“スッポンエキス配合のオットピン”を買うのは、かなりの勇気と度胸がいるわね…で、ナニを入れたの？」
でも、私は買えるわよ？
…魔女の瞳はそう語っていた
おさげの少女は周囲を見渡し、教室には誰も居ないのだが魔女の耳に口を寄せ囁く。
「ふ〜ん…微妙な所ね…」
「やっぱりダメ？？？」
「普通は気付くと思うけど…彼、ゼルは鈍いからな〜」
「でも、バレンタイン・チョコレートに“オットピン”をオプションで付けるのも変じゃない？」
魔女の瞳が一瞬金色に光る
「何を言っているの！鈍い男には押しの一手よ！！私はコレで“魔女の騎士”と“伝説のＳｅｅＤ”を落としたのよ！！」
でも、続かなけりゃ、意味ナイんぢゃないデスカ？？？
どうしてもその一言が恐ろしくて言えない。
彼女もガーデンの生徒だ…危険には敏感だった…。
「大丈夫よ〜ｖｖｖホワイト・デ〜に何か反応があるはずよ！」
「ほ…本当？」
「恋の暴走特急リノア様が言うんだから、間違いナシ！！」
暴走されても困ります…
私はローカルでいきたい…
相談するんじゃなかった！！（ＴｍＴ）
いつのまにか、辺りは暗闇に包まれていた。
少女の心も闇に包まれた…。
■ｾﾞﾙ まだ知らぬ知識 17：30■
2月14日、付き合い始めた図書委員の娘からチョコを貰った。
あの時、世界が薔薇色に見えたぜ！！
だけど、コレはなんだろう？？？
手作りチョコに添えられた１本のドリンク…。
“ローヤルゼリー・アミノ酸添加 《純正 赤まむし》”
“清涼飲料水”とは書いてあるが、何か違う気がする…。
《物知りゼル》の知識には、まだコレは入ってないぜ…。
世界はまだまだ知らないコトが多いな。
ま、添加成分的に、たぶん栄養剤の類だろう。
俺、疲れているように見えたのかな？
おさげの図書委員の心優しさに胸が熱くなる。
ホワイト・デーにキスでもしてみっかな♪
なにやら経路は違ったが、おさげの少女の努力は報われそうだ。
だが、この《 純正 赤まむし 》ドリンクがホワイト・デーに波紋を招く。
NEXT 3月14日
いろいろ手直ししてなんとか予告通りＵＰ！
明日も…。
まだ、なにも入力してないよ〜〜〜！！！
頭の中では完成してるんだけどねｖｖｖ
2001.03.13