| 花 |
03:SAKURA


最初の『別れ』はエルオーネ。
2度目の『別れ』はアンタだった。

ようやく取り戻せたのに、またアンタを失うのか?

もう嫌だ。
何の為に強くなった?
何の為にSeeDになった?
愛する人を守る為だ
だから…。





(ここは・・・何処だ?)


気が付くと、見なれない場所に寝ていた。
徐々に意識がハッキリしてくる。


「!」


ベットから飛び起き、窓に駆け寄る。
窓の外は一面の雲海・・・雲の上を飛んでいた。
どうやら、ここはラグナロク内にある1室のようだ。
安堵に溜息をつく。


「良かった・・・連れ戻されたんじゃないんだ・・・」


引止められるかと思った。
ガルバディア特殊部隊はガーデン出身者が多い。
中にはSeeDだった者もいる。
そんな中へ1人で飛び込んだら死にに行くようなものだ。



ノックと共にドアが開いた。
懐かしい顔がヒョッコリ中を覗く。



「リノア?」

「あ、目が覚めたんだね」

「ああ。・・・あんたも乗ってたのか・・・」

「途中で拾ってもらったんだ〜」

「情報・・・流してくれたんだってな。感謝する。」

「えへへ〜。役に立てて光栄です♪…サイファー…間に合う…よね?」

「間に合わせてみせるさ」

「うん」




それっきり会話が続かない。

別れてから今まで会うことも話すこともなかった。
嫌いだったわけじゃない。
ただ、生きる世界があまりにも違いすぎたのだ。

こんなことで再会しなければ、話したいことが山ほどあった。
だが、今は…何も考えられない。

沈黙を破るようにゼルが部屋に飛びこんできた。




「おわ!?もしかして、邪魔だったか?」

「いや…どうした?」

「あと少しで到着するぜ。ただ、目的地までかなり歩かなけりゃダメだってよ」






『桜』はちょっとした山の山頂にポツンとあった。
空からでも、ピンク色に染まった木が見える。
しかし、ラグナロクの巨船を降ろせるような場所は何処にもない。
結局諦めて、近くの麓に着陸をした。





「はんちょ〜、大変!向こうからコッチに向かって大量にジープがくるよ!!」



双眼鏡で周辺を確認していたセルフィが叫ぶ。
肉眼でも土煙が見える。
30台以上はあるだろう。
これは、本格的に山狩り体制だ。



「思っていたよりも、早いお着きだな…」



体に冷たい汗が流れる。
土地勘も…数の上でも圧倒的にこちらが不利だ。
呆然としていると、キスティスが俺の腕を引っ張った。



「スコール!私達はこの辺に詳しくないわ。あいつ等を山に入れたらお終いよ!あれは私達が押さえるから、あなたは先にサイファーを迎えに行って!」

「だが…あの数だぞ!?今の人数でもキツイのに、俺が抜けたら…」

「あなた、何しに来たの?ガルバディアと戦う為じゃないでしょ?やるべきことをやりなさい!」

「…わかった…ありがとう。俺、サイファー迎えに行ってくる」



皆の顔を見渡すと、早く行けと促された。





任務ではない…楽な戦いではない…
それなのに、俺を励まし送り出してくれる。
仲間の心遣いに胸が熱くなった。



…時間が無かった。

俺は仲間に見送られ、山へと駆け出した。





道なき道…獣道を全速力で登った。

枝が体中を傷つけるが痛みなんか感じない。




(あのジープに乗っているのは、ただの一般兵だ…)

(特殊部隊は…もうこの山にいるのか?)

(間に合ってくれ!お願いだから…間に合ってくれ!!)





深い茂みが途切れ、青空が見える。
頂上だ。





1本の木が頂の中心にあった。

その木の周辺…半径数8・9mには、何故か他に木が生えていない。
背の低い草の絨毯が広がっている。


…樹齢何年だろうか…
遠目にも見事な大木。
太い幹から伸びた枝という枝に花を満開に咲かせている。

その大木の前に、誰かが立っていた。
どんなに遠くても見間違えようがない…サイファーだ。




「アンタ、3ヶ月逃げ回っていた割には、あんまりボロボロじゃないな!」




嬉しさのあまり、叫んだ声が震える。
探して、探して…ようやく見つけた。
ゆっくり歩いて近づく。
走って行くと消えてしまうような気がした。
慎重に…確かめるように足を繰り出す。



アンタまであと10メートル…



「スコール…感動の再会で、最初のコトバがそれか!?」



あと9メートル…



「幽霊や幻だったら、ぬか喜びだからな」



8メートル…



「ひでぇ奴・・・ここには1ヶ月前に着いちまって、この山の炭焼小屋にやっかいになってた。」



7メートル・・・



「炭焼小屋?…人がいるのか?」



6メートル…



「ジジイとガキの2人暮らしでよ、そのガキがまた、昔のお前みたいに生意気で生意気で…!」



「ッ!!逃げろ、サイファーーーーー!!」






殺気が辺りに充満する。


一斉に出てきた特殊部隊の銃口は迷うことなくサイファーに向いていた。



全ては一瞬。



スコールが駆け出す。


十数本の銃口が火を吹く。


スコールがガンブレードを振りかざし…

辺りは閃光に包まれる。





大小の傷を負い、私達がそこに着いた時には敵はすでに全滅していた。
先に仲間の怪我の手当てをさせる。

幸い軽傷で済んだ私は、惜しげもなく花びらを散らす桜の大木へ歩み出した。



大木の影になって、わずかな後姿しか見えなけど…あの後ろ姿は間違いないわ。
3ヶ月間行方不明だった問題児。

大きな木の根元に腰を下ろした男は、先に送り出した恋人を背後から抱き込み、優雅に散る桜を観賞していた。



(まったく…死体が転がってる場所で、よく花見が出来るわね…)




気配に気づいたのか、男が振りかえる。




「よう、先生!」

「元気そうね…。それよりも、アンタ達そんなところでなにやってんのよ!?終わったなら帰るわよ。ガルバディアの残党が、まだいるかもしれないんだから!」

「んなこと言ったってよ〜。俺達、3ヶ月前からここで花見する予定だったんだぜ?」

「スコール、アナタもよ!状況わかってるでしょ?」




スコールがサイファーの肩越しに振りかえった。
安心しきった顔が自分を見返して“お願い”をしてきた。




「ゴメン…あと少しだけ…いいだろう?」




スコールの滅多にないお願い。
コレを断れた例がない。
断れる人間がいるなら、見て見たいもんだわ。




「…仕方ないわね…私達、ここより少し先で休んでいるから、気が済んだら来なさいよ!」


怒っている振りをして、きびすを返す。
数歩、歩いた時スコールが呼びとめる。



「キスティ…いろいろと有り難う」


思わず振り向く。
スコールは、今まで見た中で一番幸せそうな微笑を自分に向けていた。



「ど…どうしたの?改まっちゃって?」

「別に…あんた、良い女なんだから、早く恋人みつけろよ」

「よっ…余計なお世話よ!!嫌な子ね!!」



サイファーも肩を振るわせ笑っている。
なんだか悔しくて、逆襲してみる。



「そういえば昨日…“ガーデンがサイファーを切り捨てたら”の後に何か言いかけたわよね?もし、切り捨てたらどうするつもりだったの?」

「さあ…俺にも分からない。…ガーデンに血の雨が降るか、ガルバディアが壊滅するか…どっちにしろ俺は、最後に自害してただろうな」



スコールの中に潜む暗闇に触れ、キスティスは呆然とする。



「サイファー…あなた、スコールと人類の為に命を大切にしなさいね。」

「おう!」



そのまま振りかえらず、他の仲間の所へ向かう。

その時、振りかえっていたなら…返事と共に挙げた片腕が血に塗れていたのに気づいただろう…。

でも…全ては遅かった。






いつになっても戻ってこない2人にシビレを切らし始めた頃、パンッと小さな乾いた音が1度鳴り響いた。
全員でその場所に向かった時には、すでに遅く…2人は事切れていた…。


伝説のSeeDと呼ばれた男は、体中に銃の弾丸を受け失血死。

魔女の騎士として世界を敵に回した男は、全身をスコールの血で染め…眉間に一発…軍用ではない、威力の低い護身用の銃で撃たれ…即死だった。




ここで何があったのかは、わからない。
人はこれを『非業の死』と言うだろう。

だが、彼らの顔は苦悶に満ちることなく…幸せそうな顔で寄り添い、永遠の眠りについていた。




2人の亡骸を飾るかのように、桜の花びらが散り落ちる。

残された私達は、ただ…そこに立ち尽くすだけだった。








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2001.04.25