| Sorceress And Knight |
第1章
06:愛の証
目覚めた瞬間、幸福で顔がニヤケた。
うおぉぉぉぉ!!幸せすぎる!!生きてて良かった!!!
スコールがっ!俺の腕の中で眠っている!!!!
クハァ〜〜ッツ!しかも、俺の胸板にその白い背中をピットリくっつけてvvv
チクショウ!暴れてぇくらい嬉しいぜっ(≧▽≦)
ああもうっ!心臓がバクバク煩せー!!
心拍、いつもの倍はあるんじゃないか?
眠るスコールを起こさないように軽く抱きしめ、柔らかい頬にチュッと音を立ててキスをした。
長い睫毛が微かに揺れるが起きる気配はない。
規則正しい呼吸音…この腕の中で昨夜あんなに乱れたなんて信じらんねえ…。
でも、大丈夫か?
コイツ、勿論のことだけど初めてなワケだし…一応手持ちのポーションと、痛かった記憶消す為に“忘れな草”使ってみたけどよ…G.F用だけどな…
静かに起き上がり脱ぎ散らかした下着を身に着けた。とりあえず、カラカラに乾いた喉を潤しに簡易キッチンへ向かう。思った以上に水分を放出していたらしく、喉を鳴らして汲んだ水を飲み干した。
「そういえば…昨夜は久しぶりなせいか、かなり燃えたな。抱き心地も良かったしな」
ピー、ピー、ピー・・・
ピー、ピー、ピー・・・・・・・・・・
―――リビングの方から何かの音が聞こえる―――繰り返し鳴る電子音
(…部屋のブザーか?面倒クセーな、ほっとくか…もうちょっとコイツの寝顔見てーし…んんん〜?)
もう一度スコールの隣に潜り込み、来客に対して無視を決め込む。
が、回した腕に、スコールが身じろぎ、目覚めた気配を感じた。
ぼーっとしたまま、そのまま動こうとしない。
全く…昔から、子供の頃から変わらず朝に弱いんだな。
スコールは、ようやく深い眠りからボンヤリと覚醒し、起き上がる―――つもりが、俺の腕が腹に巻きついているせいで起き上がることが出来ないでいた。必至に俺の腕の中でモゾモゾもがいている。
か…かわいいっ…!
こりゃ、どうも昨夜のコトが記憶回路に繋がっていないな…。
反応が楽しくて、そのまま声をかけず観察する。
スコールは寝ぼけた顔でノロノロと自分の躰に視線を向け…動きが止まった。
裸の自分に驚いているのが、手に取るようにわかる。
だろうな…たしか、女になって1日しかたっていないハズだ。
スコールが、腹に回された俺の腕にペタペタ触れる。
そして、大きく深呼吸をし、ゆっくりと恐る恐る俺のほうに振り向いた。
「!!!!!」
ぷぷっ!“世の中の不幸を全部背負いました”って顔してやがる!!
ダ…ダメだ!かわいすぎ!!
「サイ…んっ!」
スコールが何かを言う前に、仰向けにひっくり返し唇を塞ぐ。
抵抗する間も与えず舌を滑りこませ、探るように絡めた。
昨日の夕方から、気絶するまで求めた行為の所為で、スコールの躰は敏感に反応をする。
たぶん無意識だろう…俺の背に腕が回ってきた。
そのまま抱き起こし、膝の上に乗せてやる。合わせ鏡のように額の傷をくっつけ瞳を覗きこんだ。
澄んだ湖水のような青い瞳が困惑で揺れる。
「おはよう、スコール」
「…オハヨウ…もう離してくれ。何か着たい…」
顔を真っ赤に染め、弱々しく答えてきた。
男の時でも綺麗な顔だったが、女になったらさらにモデル顔負けの美女っぷりだ。
昨日から、何度見惚れたかわからねえ…。
もう誰が何と言おうが、コレは俺のものだからな!!
もう一度、唇を重ねようと距離を詰めたその時―――寝室のドアが開いた
「サイファー!あんた何やってんのよっ!!」
「あ?」
がすっ!!!
部屋のドアを振り返った瞬間、頭に衝撃が襲う。
俺の頭から物体がスライドして落ちていく。
ドアの入り口には鬼のような形相でキスティスが立っていた。
その後ろから何故か、異常に目をキラキラさせたセルフィが覗いている。
ズキズキ痛む頭を押さえ、ベットの下に落下した物体を見た。
これかよ…普通こんなん投げつけるか?
俺を直撃したモノは1個の大きなダンボール箱だった。しかも思いっきり箱の角が潰れている。頭に穴空いてねえだろうな?
あ…血…。
頭に触れた指先に赤いものがついている。
俺はムッとして、さっきまでの幸福空間をブチ壊した女を睨む。
「何って、んなの見ればわかるだろ?」
「サイファー…開き直っても罪は軽くならないわよ」
「罪だと???」
「すご〜い!はんちょ、女になって1日もたたないうちにロスト・ヴァージンしちゃったの〜?」
俺の腕の中で硬直していたスコールが、セルフィの言葉にピクリと反応した。
「ロスト?うっ…信じられないっ…」
「!? ス、スコール、どうした!!?どこか痛いのか???」
スコールが、突然両手で顔を覆って泣きだし、俺はただオロオロする。
何だ?何だ!?一体どうすればいいんだ???
すがるようにキスティスを見れば、額に血管が幾筋も浮いている。
げげっ!コッチは爆発直前ってヤツか?
「サイファー…隣の部屋に行きなさい!セルフィ、この馬鹿を連れてって!!」
「ラジャ☆元はんちょ、連行〜*」
「お、おう…」
何か逆らえない空気を感じ、泣きやまないスコールに後ろ髪を引かれつつ、キスティスが指差すリビングに移った。
パンツ履いといて良かったぜ…
セルフィがサイファーを隣の部屋に押し出すのを見届け、キスティスが溜息をつきながら近づいてきた。ベットのブランケットを手繰り寄せ、壁を向いて座る俺の体に巻きつける。
そのまま肩を抱き、膝を抱えて座る俺の頭をあやすようにポンポン叩いた。
「大丈夫?少しは落ちついた?」
「ああ…取り乱してすまない…この状況に驚いて…」
「これは懲罰房なんて生易しい罰では済まされないわね。まさか、アナタ相手に強姦だなんて…そこまで馬鹿するとは思わなかったわ」
キスティスが悲痛な表情で俺を見る。
“強姦”?
アレって強姦だったのか?
待てよ…嫌だって言った記憶はあるが、暴れて抵抗した覚えがない…
「…ちょっと自分でも信じられないが…たぶん強姦じゃない…と思う」
「え?」
「抵抗してなかった…ような気がする」
「ええ!?どうして!!!?」
「どうしてって…それは…えーと…」
昨夜のことを思い出し混乱する
「考えまとめるの難しい?そのまま思ったこと言ってごらんなさい」
「…オナカ空いて気力がなかった…とか」
「結局食べてなかったの?」
「…疲れてたし…」
「イロイロあったものね…」
「女物のビラビラした服を何着も着せられて、精神的に弱ってたし…」
「あは…つい楽しくて…で、でも、それだけじゃないでしょ?」
「あとは…気持ち良かったから、そのまま…」
「気持ち良かったァ!?」
「いや!…今の発言は取り消し!」
「…思いっきり聞いたわよ…」
肩にかけられた指がギリギリ食いこむ
漫画の表現に“怒った人間から湯気が出る”という表現方法があるが、目の前にいるキスティスはまさにその状態だった。
もっと簡単な身近にある表現で言うと『自爆寸前のボム』だ。
(コ…コワイ…)
無意識にベットの上をズズイっと後退していた。
ブランケットで隠れていたシーツが顕わになる
キスティスの視線がシーツに釘付けになり…
「…っ!っっ!!っっっ〜〜〜〜〜!!!…」
―――――ついに爆発した
リビングの長椅子にドカッと座り、タバコをふかす。
テーブルを挟んだ目の前の椅子に、セルフィがバフンッと元気良く座った。
「サイファーはんちょ、久しぶりだね〜*」
「おう、お前は子供の頃から変わってねえな」
「あ〜vvv覚えててくれたんだ!ミンナもねえ、孤児院時代のコト思い出したんだよ〜!」
「へえ?スコールもか?」
「もっちろ〜ん!思い出したよ」
「アイツ、一緒にココへ来たくせに、俺のこと忘れる薄情なヤツなんだぜ」
「サイファはんちょ、昔からはんちょのコト追いかけてたもんね〜。それなのに忘れられるってツライよね…。だからグレちゃったの???」
「グレ…」
魔女側にまわった行動を“グレ”で片付けてしまうのか???
俺に向ってここまで怖れ知らずな発言するとは…ここ女達、甘く見ない方がいいかもな。悪気がない分、痛いトコロを突いてくる…。
「でも良かったね〜、相思相愛になってvvvキスティスはショック受けてたみたいだけど、アタシは良かったと思うな〜*」
「…まだ、相思相愛じゃねえよ。昨夜は騙まし討ちみたいなもんだし…」
「え〜?元はんちょ弱気〜!?アタシの勘は良く当たるって評判なんだけどな〜」
「そうだといいんだが…」
「…スコールはんちょね、ずっとねヤル気なさそうだったよ。あれからずっと、ガンブレ握ってないみたいなんだもん…元はんちょがいなくて淋しかったんじゃないかな?モンスター狩りもライフルばっかりだし・・・はんちょ、誰とでも話すようになったけど、前より壁を感じるのは気のせいなのかな〜」
「アイツ……そんな風には見えなかったぞ?」
「はんちょを見つけたら、急に元気になったんだよ〜」
俺がいなくて寂しかった?
俺と同じくらいガンブレ・マニアなスコールがガンブレ持たないだと?
それだけスコールの中で、俺は大きな存在だったんだろうか?
これは…自惚れていのか?
もしそれが本当なら、俺は押して押して押しまくるぞ!!?
いや、もう絶対落とすって心に決めてるけどな!
ソファーの下に手を突っ込んで1枚の紙を引っ張り出した。
昨夜、スコールが眠ってから、この部屋の端末使って取り寄せた書類だ。
「くくくっ。案外、これにも素直にサインすっかもな」
「何なに〜?わぁ♪元はんちょ!コレってっ!!」
ズババババババッ!!
「「!?」」
突然、轟音がしたかと思うと、寝室の扉が開き、顔を真っ赤にしたキスティスが飛び出してきた。
「心配して損した!!思いっきり和姦じゃないっ!!あんた達最低よーっ!!」
「キ、キスティ〜?」
「帰るわよ!付合ってらんないわ!!」
目から光線を発射しながら、生物兵器となったキスティスが部屋から出て行った。
壁に一筋の焼き跡を残して…
それでもまだ、クサイ息でなかっただけでもマシかもしれない…
「コワ〜…あ!はんちょは!?」
2人で顔を見あわせ、寝室に飛びこむ。
あれだけ爆発していたのだ…爆心地はもっと酷いはずだ。
案の定、床から壁をつたって天井まで亀裂が入ってる。
倒れたベットは無残にも真っ二つだ。
「…はんちょ生きてる〜?」
「スコール!無事か!?」
「大丈夫だ」
ブランケットを体に巻きつけただけの格好で、ベットを盾にしたスコールが顔を覗かせている。
さすがに青ざめながら、床一面に広がったマットの綿と、ボロキレになったシーツを掻き分けて這い出してきた。
「危なかった…直撃したらヤバかった…」
「よく避けたな…さすがSeeDだ」
ブランケットが足に絡まってよろけるスコールを支えてやる。
余計なお世話とばかりに仏頂面で俺を睨んだ。
「変なトコで感心しないでくれ」
「で?どうやって、こんなに怒らせたんだ?」
「…少しマズイこと言ったらしい…その後にさらにマズイもの見られて…」
スコールが赤くなって口ごもる
「あ!はんちょ怪我したの!?血がアチコチに!!」
セルフィが床に散らばったボロキレを指差す。
「何!?さっきの食らったな!?何処を怪我した!?」
「…大丈夫だ。ほっといてくれ」
スコールがますます赤くなる
だが、放っておくワケにはいかねえ
こんなに綺麗なんだから額以外の傷は増やしたくない
「保健室に行くぞ!」
「嫌だ!大丈夫だって言ってるだろう!!」
「駄目だ。こんなに出血してるのに平気なはずないだろ!?」
「怪我じゃないんだ!アンタが…っ、馬鹿野郎!!こんなこと恥ずかしくて言えるか!!なんで分からないんだよ…」
泣きそうな顔で俺を睨んでくる。
なんでだ?
隣でセルフィがポンと手を打つ。
「あ〜!分かっちゃった☆これって処●膜ピーした時の出血〜?」
「あ!?」
「わーーーーーーっ!!!!!!」
「ああ…なるほど…昨夜のアレか!!」
「馬鹿!馬鹿!!大馬鹿!!!もっと早く気づけよっ!!!っていうか、そんなコト大きな声で言うなっ!!!!」
「そうか、こんなに出血したか…悪かったな。スゲェ抱き心地良くて止まんなくてよ〜♪オマエも良かっただろ?」
「っ!!」
全く悪そうな顔をせず、ぬけぬけと言うサイファーに、スコールの瞳が怒りで燃える。
ブチッと何かがキレる音と共に空気を切る音がした。
「いっぺん死んでこーーいっっっっ!!!」
スコールの回し蹴りが、見事にサイファーのコメカミにHIT★
昨日の朝と同じく、放物線を描いて空中を吹っ飛ぶ。
衝撃は脳髄直撃。薄れる意識の端でセルフィの言葉が耳に入った。
「わ〜*はんちょ!!丸見え〜〜〜vvv」
(ナヌ!!?俺も見てぇ〜〜〜〜〜〜〜!!)
願いは叶うハズもなく、意識がブラックアウトした。
体が揺れる…地震か?
目を開けるとスコールが俺の体を揺すっていた。
「サイファー、昼だ。いい加減起きろ!」
「はぁ…。“アナタ、起きてvvv”って、色気のある起こし方してみろよ…」
「寝言は寝て言え!永遠に眠ってみるか!!?」
「イエ…ケッコウデス…」
底冷えする声で室温が数度下がった気がした…
ちょっとした冗談に、かなりマジで怒っている。
拳を握るスコールは、いつもと同じような黒いレザーの上下を着ていた。
「男の時の服が合うはずねえよな…ソレ、どうした?」
「昨日、着せ替え人形にされた後、ネットで買った。今朝、キスティが持って来たダンボールの中身がコレだ」
「ああ…俺の頭にぶつけたあの箱か…しかし、その服、前と変わらねえぞ?」
「これ以上の変化はゴメンだ…」
力なく呟く。
そうとうストレスが溜まっているようだ。
これ以上、突っつくのは止めた方がよさそうだ…コイツの特殊技は、かなりイテェ〜からな…
「それより腹減ったな。オマエ、昨日から食ってねえだろ?食堂行ってなんか貰ってくるぜ」
「…俺も一緒に行く」
「いいのか?その姿で歩きたくねえんだろ?」
「いい。いつ戻るかわからないんだ。いつまでも部屋に閉じ篭っているわけにはいかない…それにガーデン指揮官としての立場から、アンタ1人を生徒が大勢いる食堂に行かせられない」
「けっ!俺だって馬鹿じゃねえよ…ここまで来て暴れるものか」
「駄目だ。皆が落ちつくまで俺と行動しろ。これはガーデン指揮官としての命令だ!」
さっきまでの弱々しい空気が一変して、統率者の顔になる。
他人と関わるのが嫌いだったコイツが、ここまで成長するなんてな…
変わらないのは俺だけか?
俺だけが取り残されるのか?
「分かったよ…指揮官殿の命令に従うさ。俺は犯罪者だしな…」
スコールが何かに耐えるように唇を噛む。
うっすらと埃の被ったガンブレードケースを開け、ライオンハートを取り出す。
「行くぞ」
「ああ…」
気まずい雰囲気のまま無言で通路を歩く。
食堂までの道程がひどく長く感じた…。
食堂は以前と変わらず大勢の生徒でにぎわっていた。
だが、俺の姿を認めると、しんっと静まりかる。
スコールの姿に驚いているはずなのに、誰も何も言わない。
スコールは気にせずカウンターに進んで行った。
「アンタ、何食べるんだ?」
「あ?ああ…Aランチ、大盛り」
「おばさん、Aランチ2つ。サイファーは大盛りで」
スコールがカウンターの奥にに声をかけると、オバチャンがニコニコして出てきた。
「あらあら、サイファー久しぶりだねえ!魔女に操られたんだって?ずいぶん、酷い目にあったんだってねえ。スコール達がアンタを取り戻しに行ったんだろ?まるで御伽噺のお姫サマみたいじゃないかvvv」
「お…お姫サマ?俺がか???」
「おや!指揮官!!女の子になっちゃったのかい!?はは〜、また魔女の彼女の巻き添え食ったんだね?アンタもいろいろ大変だね〜」
静まりかえった食堂にオバチャンのデカイ声が響く。
ちょいとばかり曲解された内容だが、“お姫サマ”発言で背後から複数の笑いが聞こえる。
今の会話で食堂の雰囲気がすこし柔らかくなり、ざわめきが戻ってきた。
これがなければ針のムシロだったかもな…。
スコールがいたから遠まわしで見られるだけで済んだが、俺1人だったら100%リンチだったろう。
さっきよりは少なくなったが、まだ悪意を含んだ視線を感じる。
(待てよ!?…まさか…!!)
「スコール…一緒に行動するのは俺のためか?」
「違う。アンタが暴れないように監視する為だ」
俺の顔を見ず、キッパリ答える。
だが、もう分かっちまった。
俺を私刑から守る為だったんだな…。
でなけりゃ、暫くの間、女になった姿を晒す筈がない。
今日も俺がいなければ部屋から一歩も出なかったハズだ。
さっきのギスギスした空気がサラリと溶ける。
久しぶりのAランチ定食が、今まで食った中で1番美味く感じた。
「ところで、さっきオバチャンが言っていた“魔女の彼女の巻き添え”ってなんだ?」
「それは…」
「お!スコール、ここにいたのか!スコールにお客さんだぜ!!」
ゼルが食堂に走りこんできた。
そうとう捜しまわったようだ。額に汗が浮いている。
「俺の前でスピード違反とは良い度胸だな!」
「げげっ!!サイファー!!…急いでいたんだ。いいだろ?」
「相変わらずチキンだな!放送で呼び出しゃいいだろうが!」
「あ…そうだった!」
「で?ゼル、誰が来たんだ?出来れば、元に戻るまで外の人間と会いたくない」
「あ、それは-----」
「娘よ〜〜〜vvv」
「「「!!!」」」
食堂内の視線が、一斉に出入り口に集中する。
そこにいたのは…エスタの大統領…スコールの父親、ラグナだった。
隣でセルフィが手を振っている。
「忘れてた…セルフィとラグナは異常に仲が良かったんだ…俺のこと筒抜けに決まってる!!」
「スコール、アレ誰だ?なんか見たことあるんだよな???」
「アレは…俺の血の繋がった父親だ…」
「父親ーーーー!!?」
「ついでに、あんたの傍迷惑な“ロマンチックな夢”の火付け役だ…」
「“ロマンチックな夢”???」
大統領一行が近づいてくる。
スコールは俯き顔を上げない。
数メートル手前でお互いの姿が記憶に結びつく。
同時に指を指し、叫ぶ。
「あー!!魔女の騎士だ!!」×2
「オ、俺!アンタの大ファンなんだ!!サインください…っじゃねぇや!サインより、お嬢さんを俺にください!」
「え!?俺のファン!?照れるな〜!!サインはいいが、スコールは駄目!!魔女の騎士に嫁にやったら不幸になるから絶対駄目!」
「俺、あんたに憧れて魔女の騎士になったんだぜ?責任とってスコールくれよ」
一気に低脳な会話が展開される。
これが一国の大統領と、世界を恐怖に陥れた魔女の騎士の会話だろうか…。
(いい加減にしてくれ…だいたい、なんの責任だ…)
「う〜ん…困ったな…分かった!スコールを嫁にやる!!」
「話しのわかる親父さんで良かったぜ!さすが大統領!!」
「そ、そうか?」
黒くなりかている間に交渉が終了してしまった。
運悪く食堂にいたガーデン生徒達がフリーズしている。
「スコール!一番難関な親の了解も貰った!!さあっ、これにサインしてくれ!!」
サイファーのポケットから取り出され、差し出されたのは1枚の書類。
すでにサイファーの名前が記入済みの書類の名前は―――
<婚姻届>
…眩暈がする。
馬鹿?
「……………」
「嬉しくて声も出ねえか!?」
「何考えてんだ…アンタは…」
「何って?そりゃ決まってる。明るい家族計画だ!!」
スコールが微笑む。
それに反して、体中を闘気が取り巻く。
風がないのにスコールの髪が舞った…
「俺は男に戻るんだ!!」
一瞬置いて、バラム・ガーデン食堂から一条の光の柱が空まで突き抜けた。
『エンドオブハート』発動…犠牲者は2名。
本日2度目の気絶者・サイファー及び、逃げ遅れたエスタの大統領だった。
この2人が、数日間、保健室で枕を並べ、すっかり息投合したコトに嫌な予感を覚えたのはスコールだけではないだろう…。
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2001.07.04
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