| Sorceress And Knight |

第1章
03:X-day2

X−Day 再び
暴走★カウントダウン開始



『地獄に一番近い島』を出発し、ガーデンに着いた時には2000を過ぎていた。
麻酔銃で捕獲したサイファーは、半日経ても目を覚まさない。
メルトドラゴンでさえ24時間眠り続ける麻酔だ・・・起きるハズがなかった。

ゼルとセルフィーが俺に非難の目を向けている。



「いくら元ハンチョが頑丈だからって、モンスター用の麻酔銃は酷いよ…」

「一応、サイファーも人間なんだからよ…」

「……わかった…。カドワキ先生に診せてくる」



(あの時、かなり頭に血が昇ってたからな…)

(でも仕方ないだろ?アイツが人の顔みるなり逃げだすから…)

(たしかに、やりすぎたか?って少しは思うが…でもサイファーだし…)



サイファーを担ぎ上げ、保健室に向う。


(重い…)


肩越しに見れば、気持ち良さそうに寝ているだけなのだが…
よく見ると、白いコートのあちこちが綻びている。
どんな生活をしていたのか、指の爪もボロボロだ…
たしかに頑丈だったが、最悪な生活環境で維持できるものではない。
見た目はわからないが、病気になってる可能性もある。



(俺がサイファーを心配?)

(…違う、変な病気を持ちこまれたくないだけだ…)



保健室には、時間が遅い所為か、カドワキ先生しかいなかった。
サイファーを見て驚いた顔をし、すぐに嬉しそうに微笑む。



「良かったねぇ、見つかって」

「良いのか、悪いのか…ガーデンは明日から大騒ぎだ…」

「でもスコール、あんたは嬉しそうだね」

「冗談言わないでくれ。連れ帰ったのは捕獲命令が出てたからだ」

「そうかね?そういうことにしとくよ」



含みのあるセリフに引っ掛かりを感じながら部屋の奥に向った。
ベットにサイファーを寝かせ、布団を掛けてやる。
相変わらず、ピクリともしない。
まるで死んでるかのような寝顔に不安がよぎる。



(いくら麻酔銃っていったって効き過ぎじゃないか?でも、確かにモンスター用は人間には危ないくらい強いし…まさか…このまま目を覚まさないってことにはならないよな…)



「先生。サイファーにモンスター用の麻酔銃を使ってしまったので、ちょっとだけ診てもらえますか?」

「おやおや。でも、サイファーなら麻酔銃くらい大丈夫だよ。安心して園長に報告行っておいで」

「安心って…別に心配してるワケじゃ…」

「はいはい」



それなのに、『サイファーなら大丈夫』…この言葉に体の力がストンと抜けた。
何故か、異常なくらい気持ちが緊張していたようだ。
カドワキが俺の頭をポンポンと叩いた。
その瞳は自愛に満ちている。
この年頃の女性には、かなわない。



「…では、お願いします」



保健室を後にし、園長室に報告に向う。
ガーデンは、新しいペンキの匂いがした。
窓の外を見れば、F・Hの男達がライトを点け外装修理をしている。
ほとんど24時間体制で、彼らには頭が下がる。
『あの日』から2ヶ月。
それでも今の状態は、ガルバディア・ガーデンに襲撃された時よりボロボロ。
ただ救いなのは、死者が1人も出なかったことだ。



「あら、スコール?『狩り』に行ったんじゃなかったの?」



園長室専用エレベーターからキスティスが降りてきた。
俺達でも、『狩り』に向うと、ノルマを達成するには最低3日はかかる。今日出て行ったばかりなのに、即日帰省に疑問を持って当たり前だ。



「大物を1匹捕まえたから帰って来た。園長は在室か?」

「大物?」

「そう、とびっきりの大物…サイファーを見つけたんだ」

「あら、スゴイ。それは大物ね…園長はいるけど…ついでにママ先生とリノアも来てるわ」

「リノアが?」



あの日から彼女たちには会っていない。
事件を起こした直後、吊るし上げを恐れたママ先生が、呆然としたリノアを連れ、石の家に引きこもったからだ。
誰も魔女狩りする体力なんて残っていなかったが…。

実際、アレは凄かった。
特撮映画のようにガーデンが潰れる様は圧巻だった。
目の前で見ていた俺が腰を抜かしたくらいだ。
咄嗟に全G.F.に呼びかけて、生徒全員を瓦礫から守れたのが奇跡だった。
実際、あそこまで上手くいくとは思わなかった。
G.F.と相性のいい体質で本当に良かったよ…



「帰って来たということは、魔力の制御が出来る様になったのか?」
「わからない…だけど、2人とも深刻そうな顔をしてたわよ。」
「深刻?(嫌な予感がする)…とりあえず行ってみるか。園長に重要な報告があるしな…」



エレベーターに乗り、園長室に向う。
新装された園長室のドアをノックし、ドアを開いた。



だが…それは、悪魔のドアだった…。



X−Day 再び
来たれ!不幸の扉を開く者



園長室に重たい溜息が3つ。



「困りましたね…」



妻…イデアに会うのは2ヶ月ぶりだ。
だが、この問題を前にして微笑むことが出来るだろうか?
いや、出来ない…。



「どうしても駄目なのですか?これしか方法はないのですか?」

「あなた…悲しいことですが、どうしようもないんです…」

「イデア…」



私は机に肘をつき、両手で顔を覆った。
目の前が真っ暗とは、このことです。
愛する妻が魔力の継承を終え、明るい夫婦生活はこれからだっていう時に…
幸せだったのは、祝賀会の夜までとは…短すぎる!



「シドさん、ごめんなさい!私がっ、私が不出来なばかりに〜っ!」

「リノアさん、あなたは悪くないですよ。なりたくてなったワケではないのですから…でも、やっぱり駄目なんですかねぇ…」

「…私が魔力を制御する前に、世界崩壊しちゃいます…」

「それはまた…大袈裟な…」

「あなた、諦めてくださいな。セントラの小島5分の1が消えてしまうほどの大暴走なんです」



セントラの小島5分の1が消失!?
たしかに…これでは世界崩壊の危機です。
夫婦の幸せと世界の平和を天秤にかける日がまた来るとは…
妻の顔を見る。
あの時と同じ・・・もうすでに決意した目だ。
もう、私が何を言っても無駄でしょう。



「わかりました。イデアにハインの魔力を返還してください。」


(ああ…これでまた夫婦ゲンカは命がけだ!!)



私の嘆きをよそに、いやに積極的に妻は話しを進める。



「早い方がいいわ。今ここでやってしまいましょう。心さえ落ち着いていれば必ず成功する魔法ですから」

「はい。イデアさん…お願いします…」



目の前で、魔力の継承儀式が始まった。
リノアの体から光が溢れ、胸のあたりでサッカーボール大に収縮する。
それが妻のほうに移動をはじめた時、ノックと共に1人の人物が入室してきた。



「シド園長。サイファーを捕獲しました。それで、彼の処遇をどうするか決めたいのですが…」

「あ!スコール君!今はちょっと…」

「え!!!?スコール〜〜〜〜vvvvお久〜〜〜〜!!」

「あっ、駄目です!リノアさん、集中してください!!!」



移動を始めていた魔女の力は、弾けてゴムマリのように部屋中飛び跳ねる。
妻にぶつかり、私にぶつかり…1番大きな玉がスコール君の頭にぶつかった。
純粋な大きな魔力を浴び、私は…私達はしばらく意識を失った…。















「う…みなさん大丈夫ですか?」



(おや?気のせいか自分声が変に聞こえたような…)


クラクラする頭を抑えながら辺りを見渡すと、妻もスコール君もまだ倒れている。魔力をぶっ放した彼女は、謝りながら泣きじゃくっていた。
力の入らない足で妻に近づく。
うつ伏せになったイデアを抱きかかえ…呆然とした。



「シドさぁぁぁぁぁん!ごめんなさい!!さっきの暴走で―――――」



気のせいかと思った自分声、気のせいだと思いたい胸のふくらみ…。
そして…腕の中にいるのは、ゴツくなった妻。
黒いワンピースのウエストはボタンが弾け、臍が見えている。
裾から出た、美しかったあの足は…ビッシリと…黒々としたスネ毛がはえ…



「性転換させちゃいましたぁぁぁぁ!!!!」

「…悪夢だ…」



向こうで転がっているスコール君…君の目覚めが気の毒です…。
目覚めない方が、君の為かもしれませんね…



NEXT 04



2001.06.02


長編小説TOP