SeeDの仕事に、訓練所用の『モンスター捕獲』というものがある。
捕獲するモンスターは、SeeDレベルによって変わってくる。
AランクSeeDは…当然、最強ランクの捕獲が義務付けられていた…。
最強モンスターの巣窟『地獄に一番近い島』に、本日も数名のSeeDが訪れていた。
見渡す限りの草原を、屋根を取っ払った1台のジープが1匹のモンスターを追いかけている。
前方を疾走するモンスター…いや、ある意味最強だが…それは白いロングコートを羽織った人間…。
大戦後、行方知れずとなっていた自称ロマンチスト、サイファー・アルマシーだった。
「はんちょ!その銃はマズイって〜!!モルボム用の麻酔銃だよ〜!!」
「離せ!アイツはモンスター以上の体力だ!これくらいで、どうにかなるもんか!!」
「わ〜ん!はんちょ、ご乱心〜〜!ゼルも黙ってないで、はんちょ止めてぇ〜!!」
俺はハンドルを握りながら、バックミラーを一瞥した。
後部座席でライフルを手に、2人の男女がもみ合っている。
スコールといえば、普段の“無関心・無反応”がウソみたいに鬼気迫る形相だ…。
ハッキリ言って…コワイ。
触らぬ神に祟りなしだ。
「ゼル!もっとスピード上げろ!!」
「ラジャー…」
「ゼル〜〜〜!!」
逃げる白い背中が近づいて来た。
背後でカチリと撃鉄を降ろす音がし、凄まじい銃声を発する。
「はんちょ、スゴ〜イ!背中に一発ダイ命中〜!!…でも、元はんちょ止まらないよ〜〜!?なんで?なんで〜???」
「ちっ!もう一発行くか!!」
「す…スコール…さすがにソレは、サイファー死ぬぞ?」
スコールは俺の言葉に耳も貸さず、もう一度ライフルを構えた。
その時になって、ようやくサイファーの足取りが怪しくなり…バッタリ倒れた。
本来ならば、どんな大型モンスターでも刺さった瞬間にバタンキューな強力麻酔銃なハズだ。
サイファーは、刺さった後に5分は全力疾走した。
サイファーの化け物並の体力に驚くべきか…それとも、その事実をしっかり把握しているスコールに驚くべきか…。
(マジで、あと一発撃っても平気だったりな…)
スコールがサイファーを担いで、車に戻ってきた。
モンスター捕獲が、大漁だった時以上に晴れやかな笑顔で…
「予定変更だ。ガーデンに戻る」
「イエッサー…」
俺達は、大きなモンスター用の檻にサイファー1匹捕獲して、『地獄に一番近い島』をあとにした。
2001.05.28