| Sweet,Bitter Sweet |

 02
リベンジ編

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3月14日 バラム地方の天気予報

大雨・暴風



数日前から何度も端末を操作し確認しているが、画面の文字は変わる気配がない。
いや、昨日までは【大雨】だけだったのに、もう1つオプションが付いている。
明らかに状況は悪化していた。



「また暴風か…」



1ヶ月前のバレンタインデーを思い出す。
甘い1日は過ごせたが、せっかく趣向を凝らして用意したプレゼントは、目的の人物が1度も使う前に暴風に攫われ、荒れ狂う海の中に飲みこまれていった。
あの時は笑ってたが、本当は俺、今もまだプレゼントのことを引きずっているんだ。
……悪かったな。
どうせ俺はネチッコイ性格だよ。

だから俺は、3月14日にあの岬でリベンジをかける!!
…と思っていたのに、肝心の3月14日が、またあの時のように天気が悪いのは運命なのだろうか?
いや、これはきっと俺に対しての挑戦だ。
…やってやる!
俺が天気に合わせるのではなく、俺に天気を合わせればいいことだ。
俺は【伝説のSeeD】と呼ばれる男。
天気に勝負を挑んで勝つぐらいの、新たな伝説を作っても誰も異を唱えないだろう。



スコール・レオンハート。
優れた戦闘能力と統率能力を持つ彼の血液型は、変人の多いAB型。
そして、やはり彼もまた例に違えることなく、宇宙人的思考の変人だった。



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嵐のバレンタインデーが過ぎ去ってから一ヶ月。
あの時、せっかく準備したプレゼントは渡せなかったが、俺の部屋で帰りに買ったチョコレートケーキをスコールと一緒に食べて…
まぁ、それなりに甘〜い時間を過ごせた。
常にベタベタするのは好きじゃねぇけど、時々はあーゆーのも悪くねぇな。

で、今日はどうやって誘い出すか、俺は唸りながら考えていた。
いい加減、アイツを誘い出すネタは尽きた。
だけど、今日はホワイトデー。
しかも日曜日だぜ!?
先月のバレンタインデーで屋外デートは失敗したからよ、今度は高級レストランの、ちょっと豪華なランチでも食おうと思ったのに、今度もこれかよ…。
外は大雨・暴風の大荒れ。
しかも先月よりも断然酷い。
誰もこんな日に好き好んで外出するヤツはいねぇだろうなぁ…。
アイツは、タダでさえ外出るの嫌がるんだ。
これじゃあ絶望的だ。
チクショウ!
あのレストラン、やっと予約取れたっつーのによ!!
神というヤツがいるなら、ぜってー幸せなカップルを妬んで、わざと天気を悪くしているに違いない。
あーあ、バラムでアルケオダイノスが大暴れしてるとか、気の利いた事件でもありゃ、任務を装って連れ出すのが楽なんだけどよぉー…。


と、窓に張り付き、恨めしげに外を睨んでいると、窓ガラスに恋人の姿が映った。
ドアを閉め、ゆっくりと近づいてくる。
コイツの方から、俺の部屋に来るなんて珍しい。
雨でも降るんじゃ…いや、すでに降りまくってるから案外晴れるかもな?
窓から視線を離し、スコールを見ると、その手には車のキーが握られていた。



「スコール。どこか行くのか?」

「こんな天気だけど…一緒にちょっと出掛けないか?」

「………マジでこりゃ晴れるかも」

「どういう意味だ?」

「いいや〜?」



もしかして、俺がバレンタインデーの時に外へ誘ったから、ホワイトデーはスコールの方から誘ったのか?
意外と律儀なヤツ。
そういう、堅いんだか柔軟なのか分からない、スコールの意外性に俺はいつも嵌っている。

だが、しかし…
俺の理解を遥かに超えた事態が、雨のバラムで待っていたのだった。





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雨を蒸発させる青い炎。
そして、嵐の暗雲を突き抜ける一条の光。
それは…


メガフレア


スコールが召喚した、バハムートの光線だ。
遥か上空で光の爆発が起き、太陽を隠していた厚い雲が一瞬で吹き飛び、荒れ狂っていた風も嘘のようにピタリと止んだ。
っつーか、一番嘘みてぇなのは、スコールのムチャクチャっぷりだよ。
目的地に着くと、『今から雨を吹き飛ばす』と言い出し、俺が止める間もなく、天に向かっていきなりコレ…。
バハムートよ…オマエもこんなコトに使われていいのか?
だが、バハムートは、そんな俺の憐憫を含んだ視線を避けるように、任務を遂行すると素早くスコールの中へと消えていった。



「スコール。オマエなぁ…やることが…」

「何だ?」

「…いや。何でもねーよ」



この奇抜な行動力。
俺にはこんなの思いつきもしねぇし、理解不能だ。
ただ、改めて理解したのは、コイツを敵に回したらヤバイだろうな〜ってコトだ。
一体、何をされるか分かったもんじゃない。
まぁ、もう二度と敵にまわるなんてしねぇけどな。



「おーお、波まで凪いじまって…」



今、俺達が立っている場所は、先月地獄のような姿を見せていた岬だった。
いや。さっきまでは、先月より凄まじい地獄の入り口もどきだったけどよ…
今は、太陽を映しキラキラと輝く海と、バハムートの最初の青い炎で雨が蒸発して、絨毯のように風にそよぐ緑の草。
これだ…
俺が先月、この岬でスコールに見せたかった絶景の風景が広がっている。



「サイファー。ちょうど昼だし、弁当でも食べよう」

「弁当って…本当はこれ、フルコースだったんだぜ?」



ここに来る途中に、俺が予約したレストランに立ち寄り、フルコースの料理を【高級ピクニック・セット】としてバスケットに詰めてもらった。
こんな大嵐の中をピクニック?と、レストランの人間と、ついでに俺も首を傾げたが…まさか、こんな力技でピクニックの環境をセッティングするとは誰も思いつくまい。
スコールは上機嫌で、レジャーシートを広げている。
コイツは俺を出し抜くのが好きだからな。
今日俺が、何度も呆然としているの見て、機嫌が良いのだろう。
この性悪め!
そんなテメェのコトが、悔しいけど、たまんなく好きだぜ!!



「あ、年代モノのワインがある。アンタ奮発したな」

「ったく…俺の計画はロ〜マンティックにレストランで乾杯だったんだぜ?」



ホワイトデーにあやかって、ワインは【白】
ちなみに、エリクサーと同額の50000ギルな高級ワインだ。
こんな青空の下で飲むようなシロモノでなない。
それでもスコールはお構いなし。



「じゃ、ここで乾杯しよう♪」



そう言って、スコールがワイングラスを掲げた時だった。




ボチャン。




スコールのワイングラスの中に、何かが落ちた。
思わず二人で空を見る。
青さを取り戻した空一面に、凄まじい数の海鳥達がはばたいている。
そして、更にパタッと横に落ちる何か…


それは白い海鳥のウンニョ。


スコールと目が合った。
そして…ワイングラスに目を向ける。

50000ギルのワインの中を泳ぐののは、やはり白い…。
スコールが呆然としている。
その顔に、俺は我慢できず大爆笑。



「ぎゃははは!!」



笑いすぎてヒィヒィ言いながら、俺はスコールを指差して言った。


「スコール!俺を出し抜いたつもりが、鳥のウンニョで台無しだな!!」

「ア、アンタだって先月、大荒れのこの場所に俺を連れてきて失敗しただろ!」

「同じ場所で失敗するほど俺はマヌケじゃねー…」



ビチャッ



俺の額に何かが落ちた。
ちょっと生暖かくて、汁っぽい何か…。

スコールが俺の顔を見て笑いかけ、そして我に返ったかのように青ざめた。
そしてワイングラスを放り投げ、足元に敷いてあったレジャーシートを頭から被った。
降注ぐ、海鳥のウンニョ爆弾から身を守る為に。



「あ!ズルイぞ!テメェばっかり!!」

「煩い!俺のはアンタのと違って、上下とも黒いレザーなんだよ!!アンタのは、糞が付いたって白いコートだし、目立たないからいいだろう!!」

「いいわけねェ〜〜〜〜〜!!!」

「あ!止めろ!引っ張るな!!」



ビリリッ



最強の戦士の間で取り合いになったレジャーシートは、勿論呆気なく裂け、バラムの岬に【伝説のSeeD】と【魔女の騎士】の見事な悲鳴のハーモニーが鳴り響いたという。
だが、幸か不幸か、その声を聴いたのは、悲鳴の元凶である生体兵器の海鳥達だけだった。



ここが今の時期、海鳥達の産卵場所になるということを知ったのは、後のことだった。




NEXT 03


シモネタで申し訳ない…。
でも、うんにょも白いし、いいよね?(おい)
もー、うつ病で頭オカシイので、これが限界デス(T▽T)

2004.03.13

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