| A Guardian Deity |

05


時は熟した。
今まで集めたデータは全て頭に入っている。
俺はもう、あの晩とは違うぜ。
生まれ変わった新しい俺。
NEOサイファーだ!

ほら見てみろ。
俺様の雄姿に、男共が道を開けていく。
以前もそれなりに、俺に敵わないヤツラが視線を合わせずコソコソ逃げて行ったが、あの頃の比じゃねぇ。
まるで波が引いてくかのようだ。
中には、俺様のファンなのか、物陰から熱い視線を送ってくるヤツもいるが。
悪いな。
オマエラは、全く眼中にねぇんだ。
俺の獲物は隣を歩く――…
視線に気づいたのか、空の蒼を水面に映したような瞳が俺を見る。
以前は睨み合うだけの関係で気付かなかったが、スコールは本当に奇麗な顔をしている。
男にしては長い睫毛、スッと通った鼻筋、形の良い唇。
その唇が薄く開きピンクの舌が見え、俺は思わずドキリとした。



「サイファー…頼むから、変な目つきでニヤニヤ笑いながら周りを見るな」



不気味に笑いながら廊下を歩くサイファーに、スコールが思わず静止の声をかける。
指揮官としての仕事を終えた後、最近の日課はサイファーを連れて図書室通い。
数時間の閲覧を終え、今は寮の部屋に戻る途中だった。
連れ戻してからのサイファーは、ガーデン生が思わず避けるくらい妖しい行動をとってたが、今日はいつにも増して、おかしな空気を放出している。
サイファーの目は充血しギラギラ光り、目が合ったら喰い殺されそうな雰囲気だ。
そんな自分の異様な姿に気付いていないのか…



「相変わらず、このガーデンはヘタレが多いと思ってよ〜。戦う前から逃げるなんて、どうかしてるぜ」

「それは…違う意味で、アンタから逃げているんだ」

「何だ、そりゃ?」



やっぱり分かってない。
ここ暫く、図書室の共用端末を使い、ネットで妖しく熱い兄貴☆のページを熱心に閲覧していたり、食堂では直視出来ないような雑誌を鼻息荒くしながら読んでるサイファーを、ガーデンの生徒…主に男子が脅えて避けていた。
だから、今のサイファーは男子を物色しているように見えなくもない。
俺だって、こんなのが前方から歩いてきたら絶対避ける。



「アンタ…昨夜、ベッド内にこっそり音声ディスク持ち込んで、朝方まで熱心にヘッドホンで何か聞いてただろ?」

「何だ。気づいてたのか」

「当たり前だ。アンタは普通のつもりでも、寝不足で変なオーラが出てるんだ」



特に突っ込まなかったが、俺は知っている。
少女マンガチックな、薔薇に囲まれた男2人のイラストが描かれた、変なタイトルのドラマCDを持ち込んだのを…
バラムガーデン内でも、結構な人数の女子に人気があるとか、確かセルフィが言ってたな。



「オーラだと?ふん。俺の闘志にアテられて逃げる腰抜け共め!」

「いや…だから…」



まぁ、変な正義感に燃えたガーデン生が、サイファーに襲いかかってこないだけマシか?
相手が強い上に変態だったら、負けた時に自分の身が危ないしな。
おかしな展開になったが、血生臭い面倒事が起きるよりはいいかもしれない。
たとえ変態認定されようとも。
…と、スコールが勝手なことを考えていることも知らず、サイファーが咆える。



「スコール、覚悟しろよ。言っとくが、今度は自信あるぜ!」

「知識を詰め込んだだけで、本当に自信があるのか?もしかして、俺が目を離したチョットした隙に、他の誰かで練習したとか?」

「気色悪いコト言うな。誰がオマエ以外の男を抱くかよ!」



気色悪いって…俺だって男だ。その辺の認識はどうなってるんだ?
それにしても、実験体がいないのに、溢れんばかりのこの自信はどこから来ているのだろう?



「まさか・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分で試したとか?」



俺がボソリと呟くと、サイファーが「うっ」と言葉に詰まった。
ここで沈黙したということは、もう肯定したようなものだ。
一瞬空気が凍ったような気がした。





コイツ…変なところに鋭いぜ。まさかバレるとは思ってなかった。だけど、試さずに実践なんて危険なことは出来ねぇ。ただでさえ1度失敗してんだ。2度目も失敗なんかしたら、俺はもう出家するしかない。



「わ、悪いかよ?誰にも迷惑はかけてないぜ?」

「アンタ…トイレやシャワーがやけに長いと思ったら、そんなコトしてたのか。でもまぁ、人がやらないような、努力を惜しまない所は…凄いよな。色んな意味で」

「お、おうよ!俺は何でも地道に追求すんだよ!見直したか!?」

「……(でも、バカだよな)」



そんなアブノーマルな会話をしながら歩いていると、背中に憐れみと心配そうな視線をチクチク感じる。
それでも『俺が代わりに監視を受け持ちます!』という気概を持つ生徒が皆無といことは、あながちサイファーの「バラムガーデン生はヘタレ」意見も間違っていないのかもしれない。


*******




今夜の夕食は、食堂で食べずに寮の部屋で食べることになった。
サイファーが『今夜は俺が作る!』と熱烈に主張してきたからだ。
きっとまた、何か企んでいるんだろうな。
本当は刃物を持たせちゃ駄目だと言われてるけど、誰も見てない部屋の中だし、そのくらいの自由は認めてやってもいいだろう。
もしも包丁で襲ってきたら…その時はその時だ。

だけど…数時間後、俺はちょっと後悔した。
フシギな匂いを漂わせ、テーブルの上にズラリと並ぶのは…



「ナニコレ?」



俺の呆然とした反応を喜んだサイファーが、嬉々として料理(?)の説明を始める。



「まず、食前酒にスッポン酒だろ。無臭ニンニクで炒めたライスに、マムシの串焼き、サソリの唐揚、高麗人参のスープだ」

「何だか…欲望の食卓って感じだな」



滋養強壮&男の持久力をパワーアップさせるようなものばかり。
どうやらサイファーは、本気で今夜リベンジする気だ。
でも、俺にまで精力つけさせる意味がわからない。普通はヤル方がこういうモノを食べるんだろ?
もしかして、交互にヤリ合うとか?
失敗したな。
それなら俺も、少しはソッチの知識を勉強しておくんだった。



「オマエ、明日は休みなんだろ?今夜は朝まで寝かせねぇ予定だからな。しっかり食え」

「……」

「おい、急に黙りこくってどうした?まさか、怖くなったのか?この期に及んで逃げるなんてねぇよな?」



逃げる?
この状況は少々…
いや、かなりゲンナリするが、逃げるくらいなら、そもそもサイファーを捕獲なんかするものか。



「食えばいいんだろ。それよりも、こんなのいつ買ったんだ?」

「俺が外に出てねぇのは、オマエが一番わかってるだろ」

「ネット通販か。…金は?」

「小遣いくらいくれるんだろ?オマエの名前で買ったから、あとで払え」

「……」



ムッとしたが、確かに“小遣い”をやると言ったのは自分だ。どんなに暴虐不尽三昧でも、サイファーをガーデンに縛り付けるには、これぐらいの覚悟が必要だ。
無言で、ズラリと並べられたモノを胃袋に収めていく。
味はそんなに悪くないが、これを全て食べたら鼻血を噴きそうだ。



「おい、もっと食えよ。高かったんだぜ?」

「どうせ俺が払うんだ。残すのは自由だろ」

「もう終わりか?じゃあ…これを飲め」



そう言って、目の前に出されたのは、見るからに怪しげな小さな容器に入ったピンク色の液体。多分、その辺の薬局では売られてない類のヤバイ薬だろうというのは、簡単に予想できるが…
ニヤニヤ笑うサイファーを一瞥し、俺はキャップの封を切り、一気にその中身を飲み込んだ。



「お、おい!スコール!?」

「飲んだ。で、中身は何だ?」

「オマエ…もし毒だったらどうする気だ?」

「今更ここで毒なんか出さないだろ。まぁ、だいたい予想つくけど。どうせ興奮剤の類か?」

「当たりだ。Wお堅いあの子も大胆に”がキャッチコピーの、裏で流れてる催淫剤だ」

「ふーん。どうせまだ効いてくるには、まだ少し時間がかかるんだろ。先にシャワー浴びてくる」

「おう…」



スコールがシャワーを浴びる為に部屋から出ていくのを見送り、首をかしげる。
どうなってんだ?正直ちょっと拍子抜けだ。
もっと違う反応があっても良さそうなもんだが、すんなりとコトが進み過ぎる。さすがにマムシの串焼きとサソリの唐揚は食わなかったが、抵抗どころか文句や苦情が一切ない。クスリだってそうだ。
アレがもし毒だったらどうするんだ?催淫剤って聞いても、表情1つ動かさねぇし。
あの晩もそうだが、何というか…危うい…って言えばいいのか?
アイツなんだか、自分の貞操どころか、命に無頓着な感じがする。



「何考えてるか分んねぇけど、抵抗されて無駄に体力使うよりはいいか」



まぁ、抵抗されたらされたで燃えるけどな。っていうか、本来は強姦が目的だったのに、何でこうなっちまったんだ?
まぁいい。
何か腑に落ちないものを感じるが、取りあえず今夜は、敗者復活を成功させることだけを考えるぜ!

これからやってくる、めくるめく時間を妄想しながら食器を片付けていると、どんどん俺のテンションが上がってきた。



「アイツ…今夜は随分とシャワーに時間がかかってるな。まさか俺の為に全身隅々までピカピカに磨きあげてんのか?」



ふと、イタズラ心が芽生えた。



「バスルームでおっ始める…というのもアリだったよな?」



俺がシャワー浴びる時間も短縮出来て一石二鳥。それにアイツも、まさかベッド以外のところからスタートするとは思っていないだろう。あの飄々とした綺麗な顔が、驚きに強張るのを見てみたい。
俺はコートを脱ぎ捨て、バスルームへ向かった。

そっと扉を開けると、ムッとした蒸気が体にまとわりついた。
一糸まとわぬ姿で奥に進むが、シャワーの湯が勢い良く出る先にスコールの姿は無かった。
いや…バスタブの中に倒れ、白い身体がシャワーの湯を弾いていた。
俺は慌ててシャワーを止め、スコールを抱き起こした。



「スコールどうした!?」

「う…うごけない…んだ。体に…チカラが入らない」



ハァハァと荒い息を繰り返すスコールは、気分が悪いという感じではない。
それどころか、スコールの中心がすでに熱を孕み、カタチを変え始めていた。
すげぇ…これってあのクスリの効果だよな?
軽くスコールのソレを握ると、ビクリと腕の中のスコールが震えた。



「触る…な!」

「もう自分じゃどうにも出来ないんだろ?俺がすぐに楽にしてやるよ」



スコールも自分の体が、まさかここまで自由にならなくなるとは思っていなかったのだろう。
いつもは氷のような瞳が、不安と緊張のせいか潤んでいた。
その姿に胸がキュンと熱くなる。
あの澄ました顔を歪ませ弄びたいと思ってたが、いざそれを目の前にすると、保護欲に駆られ守ってやりたくなった。
俺はスコールをバスタオルで包み、抱き上げてそのまま寝室へ連れて行った。
そっとベッドに座らせただけでも、小さく呻く。敏感になった体に刺激が走ったようだ。
それに構わず、体を包んでいたバスタオルで、髪の水気をとってやる。
スコールはその間ずっと目を閉じ、絶えず襲ってくる快感の波を耐えているようだった。



「吐き気とかねぇか?」

「…ない…」



熱い呼吸を繰り返しながら、小さく答える声が震えている。



「もしかして緊張してるのか?」

「当たり前だ…。俺だって男相手は初めてなんだ。しかもこの状態じゃ、アンタがどんなに下手でも蹴り倒せない」



こんな状態でも、何だか意地っぱりなところが可愛いと思える。ヤル相手が野郎なのに、スコールだ と嫌悪感を感じないのが不思議だ。それどころか、色っぽく肌を上気させたスコールお見ただけで、俺もすでに臨戦状態だ。ホントどうかしてるよな。男の肌なのに触れたいとか、甘く啼かせたいとか思うなんてよ。



「今度は…失敗しねぇよ。安心して俺に全てを委ねろ」



熱を持て余し、荒い息を繰り返す半開きの唇から、チラリと赤い舌が見える。
吸い寄せられるように、俺はその唇に自分の唇を重ねた。



********





「あ…はぁ…」



甘く掠れた声が止まることなく俺の耳に届く。
まだ愛撫だけなのに、スコールは乱れに乱れている。
首筋を強く吸い、紅い印を新たに刻むと、ため息のような声が漏れた。



「う、ん…体…熱い…」

「思いっきり感じてるからだろ」

「こんなに…なるなんて…最悪だ」

「オマエが強がって、ホイホイ薬を飲むからだろ」

「強がってなんか…」

「よし、ココはそろそろ食べ頃だな」



さっきから触れている胸の飾りは、ベリーのように赤く膨らみ、プックリとした熟れた果実のようになっている。
まずは舌で転がすように舐めてみる。
ビクリとスコールの身体が跳ね、必死で声を抑える。



「んんっ!!」

「いい反応だぜ。なぁ、ココを吸ってみたらどうなるんだ?」

「や…」



強すぎる快感で潤んだ瞳は、今にも涙が溢れそうだ。
そのスコールの顔を見ながら、俺の唾液で厭らしく光る突起をワザとゆっくりと口に含む。
舌で軽く舐めまわし軽く吸い上げると、掠れた嬌声をあげながら仰け反った。
そしてスコールの中心からは先走りの雫が流れ出た。



「くくく…こっちも良い感じに熟してきたな」

「あ…はぁ…こんなのもう嫌だ」

「ヘタクソで痛いのは嫌なんだろ?」

「もういい!早く突っ込んで終わらせろ!」

「あーあ、色気のねぇセリフだな」



グッタリと力なく横たわるスコールを見下ろし、勃ちあがったスコールの分身をそっと撫でる。たったそれだけの刺激で、新たな雫を溢す。だが、これからだ。媚薬と共に取り寄せた、ローションを自分の手に垂らし、スコールの隠れた秘所に軽く塗りこむ。



「うぁ!冷たい…何?」

「オマエが言ってたローションってヤツ。他の夜這いにきた男達も持ってきてたんだろ?」



軽く指先を蕾に潜り込ませると、スコールが身を捩って嫌がった。


「や…だ。何か変な感じがする」

「オマエが早く突っ込めって言ったんだろ」

「言ったけど…指じゃなくて…」

「突っ込むには準備が必要なんだろ。このまま入れたら、この前と一緒だ」

「だけど…あ…ヤメ…指を奥まで入れる…な」



あの晩、まるで経験豊富なような発言をしていたわりには、かなり初心だ。付け焼刃の俺だって、ここまで出来るのに。もしかして、本番の知識は全くないのか?この反応だと、他の奴等はここまでヤルことが出来なかったと思っていいだろうな。
スコールをこんなにしたのは俺だけ。
これから先も、俺以外の誰にも見せるものか。



「ふう…んっ…あっ…くっ…」

「指、増やすぞ」

「も…無理…うう…ん〜っ!」



ローションでヌルヌルになった蕾は、本人の意思とは関係なく俺の指を難なく飲み込む。
更にローションを足しながら熱い内壁をほぐして馴らしていくと、すぐに指が2本、3本と入るようになった。
傷つけないように、だが軽く力を込めて広げながらグリグリと掻き回す。
その度にニチャニチャと湿った音が、俺の身体を熱くさせる。
俺もそろそろ限界だ。



「は…んっ…」

「スコール、痛くねぇか?」

「知らない。あのクス…リのせいだ…こんなの…初めてなのに…オカシイ」

「つまり痛くねぇんだな?」



しかもかなり感じている。
スコールの勃ちあがったままの中心が、それを物語っていた。



「ほら、待たせたな。オマエが望んだモノだ。しっかり味わえ」



俺は挿れた指を引き戻し、柔らかくなった入り口を開いた。
そのまま俺の熱い楔を根元まで一気に押し込む。



「!!…ヒッ…」

「くっ…」



スコールの喉から小さく悲鳴のような声が漏れる。
俺もそのまま動けずに息を飲む。
想像以上の締め付けに、体中の血管がバクバクいっていた。このままだと、解き放つというより、搾り取られちまう。



「い…たい…苦し…」

「スコール…体の力を抜け」

「む…無理…アンタが責任もって…どうにかしろ…まるで丸太を突っ込まれたみたいだ」

「ま…丸太ぁ?」

「…あ…少し萎んで…楽になった」



確かに俺も楽にはなったが…丸太…丸太だとぅ?
くそっ…丸太のように太くて硬いって意味にとっておくぜっ(涙目)
俺はスコールの脚を抱えなおし、軽く腰を揺すった。



「いっ!!」



痛みにスコールの瞼が閉じられ、眦から一筋の涙が流れ落ちる。



「やっぱり痛ぇか」

「あ…たりまえだっ!」

「痛いってことばかりに意識を集中するなよ。俺がオマエの中にいるんだぜ?俺を感じろ」

「アンタが…中に…」

「そうだ。ココで繋がって、1つになってる」

「あー、オンナなら…喜びそうな表現だな」
「こんな時に憎まれ口たたくなよ。それに、オマエの身体の方は、ちゃんと喜んでるぜ」

「うそ…だろ」



ギチギチだった場所が少しずつ緩み始め、俺のモノを更に奥へと引き込もうと妖しくザワめいている。クスリの効果にしては、随分と効きすぎだぜ。
繋がったまま身体を倒し、スコールとピッタリ重なり合う。抱えていた両足から腕を抜き、スコールの頬を包み込み、ついばむようなキスを贈る。スコールはそれに応えながら、支えきれず落ちかけた両足を、自らの手で支え、俺と繋がりやすいように自ら足を開いた。
スコールの中心が俺の腹の下で、雫を流しながらフルフルと震えている。
同じ男のモノなのに、俺は無性にソレが愛しくなって擦ってやった。
スコールが溜息のような声を漏らし、その色っぽさに俺のモノも熱くなる。



「動いても大丈夫か?」

「たぶん…だい…じょぶ」



これは何だ?胸の中が狂おしいくらい甘く切なく苦しい。
まるでこれは………じゃねぇか?

スコールを何度も突き上げると、甘く鳴くその声に全身が痺れるようだ。
スコールが果てた後、俺も迎えたようやくの解放。
充足感に満ち、俺は自分が一番手に入れたかったモノが何だか知った。



********




「アンタは、俺を憎くないのか?」

「は?」

「あの夜、俺を殺しに来ると思ったのに…」

「ああ〜?」



何度か交わり幾度か果てた後、寝ていたと思ったスコールが突然話し始めた。
身体の向きを変え、俺の瞳をジッと見ながら。



「俺が死んだら…アンタも死ねるんだ」

「まぁ、そうだな」

「こんな風にガーデンに縛られるくらいなら、俺を殺してアンタは死ぬことを選ぶと思ってた」

「オマエ…まさか、死にたいのかよ?」



衝撃に声が掠れた。
だって、全然そんなそぶりなんて見せなかったぜ?



「まさか。自分から死ぬ気はないし、殺気を感じたら反撃する。だけど、防ぎきれなかったら…その時は、死ぬだけだ。そしたらやっと…開放される」

「開放って…なんだよ?」



まるで義務で生き、本能で反撃し、でも心は死を望んでいるかのよう言い方だ。



「もう色々嫌になったんだ。英雄扱いされて、望みもしないのに表舞台に引きずり出されて…そしたら、今まで俺に関心なかった奴らまで、群がって、愛想振りまいて。しかも夜になれば、部屋のロックをハッキングで解除してまで入り込んで夜這いにくるし?全部アンタがいなくなったせいだ」

「だから俺を道連れにする気だったのか?」

「そういうわけじゃないけど…でも、そういう結果になってもまぁいいや…ぐらいには思ってた。なのに、まさか…アンタまで夜這いに来るとは思わなかった」



そんな真顔で言われても…
どんな反応を返したら良いのかわからねぇよ。



「っつーか、俺は夜這いじゃなくて、強姦するつもりで行ったんだぜ?そしたら男にヤラれた屈辱で、オマエは俺を殺すと思ったからな」

「何だよソレ。アンタだけ死ぬなんてズルイだろ。俺1人生き残っても面白くない」



これは、ズルイとか面白くないという問題か?
俺達まだ10代だぜ?
普通は人生これからだろ?
ここまでヤル気がないって、どうなんだ?



「そんなに殺される気が満々なくせに、何であの夜、俺を蹴り帰したんだよ?」

「襲撃を覚悟してたのにアンタは殺気が全くなくて。しかも夜這いだし。オマケにあまりにもヘタすぎて、思わずムカついて蹴り出してしまったんだ」

「何だよソレは…」

「でも、そうか…あれは強姦だったのか。それなら受けとくべきだったかな…激しすぎて腹上死っていう可能性もあったかもしれないし」

「漫画や小説じゃあるまいし、Hしただけで死ぬかよ」



勘違いバンザイ。
あの夜、俺のシナリオ通りに事が進まなくて良かったぜ。
頭に爆弾の1つや2つ埋め込まれようが、コイツが手に入るなら安いもんだ。



「ま、いいけどよ。でもオマエ、全然嫌がんねぇで、実は俺の他に男と経験あったんじゃねぇのか?」

「俺にそんな趣味はない。アンタが勝手に俺を抱いたんだろ」

「なんだよ。俺だけ変態扱いか?」

「アンタが変態なのは間違いない」

「オマエ、あんま喋んねぇくせに、口開くと酷いよな。やっぱり俺のこと嫌いなんだろ?」

「別に…俺はアンタのこと嫌いなわけじゃない」

「その割りに、昔っから会えば嫌な顔してたじゃないか」

「アンタが!人の顔みれば嫌味ばっかり言うからだろ!」



今まで感情をあまり乱さなかったスコールが、初めて怒りを孕んだ声で俺を非難する。



「そうだっけか?」

「…そうだよ」



あ〜。そういえば、そんな気が…



「だってよ、オマエに今日の天気とか話題にするのも何だか変だし」

「アンタな…天気以外にも何かあるだろ。それに毎回何か言わなくたって…」

「何も言わねぇで、オマエの横を素通り出来たら苦労しねぇさ」

「何で?」

「何でって…そ、そんなこと、どうでもいいだろ!」

「どうでもって…(そこが肝心なトコロだと思うんだが…)」

「大体オマエはよ、何か言っても『…ああ』とか『…別に』とか、場合によっては『…』な無言の時もあるじゃねぇか!感情を引き出すにゃ、モノで釣るか、怒らせるしかねぇだろ?モノで釣るのには…前に失敗してるしな」



サイファーが俺に何かくれた?
記憶の層を下ってみるが…まったく覚えていない。



「…覚えてない」

「G.F.ばっかり装備するからだ」

「今はもうほとんど思い出した。だけど…本当に俺に何かくれたのか?」

「オマエがシルバー製品好きだって気付いた時に、路上販売で見かけた指輪がオマエに似合うと思って買ったんだ。それなのに渡したその直後に俺に突っ返しただろ!」

「ああ…あれか。あんなメッキの安物なんか恥ずかしくて嵌めれるはずないだろ」

「メッキだったのか!?」

「見た瞬間にわかる。あれはメッキだ」



ピロトークとしては、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。
今までの誤解が解けたのはいいが、これはちょっと友好的ではねぇな。
さて、どうすっかな?

その時、寝室のドアがスライドし、寝室の中に光が差し込んできた。
扉の入り口には逆光でよく見えないが、シルエットで女が立っているのがわかる。



「スコール?…誰かといるの?」

「ああ、アニタか。一緒にいるのはサイファーだ」



アニタ?何だか聞き覚えがある声だな。
まさか…



「ええ!?とうとう夜這い成功されたちゃったの!?スコールがもう大丈夫だって言うから来てなかったのに!」



その叫びと共に、寝室の照明のスィッチが入れられ、女の姿がハッキリと見えた。
見覚えがある女だった。
というか、少しの間付き合ってたことがある1つ年上の女だ。
確かもう20歳過ぎてるハズだから、ここの教師として残ったのか?
アニタは長い緋色の髪に、ナイスバディの美人で、ガーデン内ではキスティスに次ぐ人気だった。



「アニタ、俺が許可したから大丈夫だ」

「じゃあ同意?今まで男相手はあんなに毛嫌いしてたのに?」

「俺も驚いたけど…サイファーは平気みたいなんだ」

「じゃあ〜、今度3Pとかしてみるぅ?」



ちょっと待て。この新密度はなんだ?しかも会話が際どい。
それ以前に、どうやってこの部屋に…



「オ、オ、オマエ、あの女に部屋の暗証番号教えたのか!!!!!?」

「別に。初めからロックしてないだけだ」

「危ねぇだろ!」

「ロックしたって、ここの生徒が本気になれば、ハッキングされてすぐバレるんだ。もう番号のネタを出し尽くして考えるのも馬鹿馬鹿しい」

「じゃあ常にオープンなのか!?」

「そういえば、毎晩のように夜中に誰かが入ってきて、女子が俺の腹の上で踊ってたな」

「毎晩…だと!?」



毎晩いろんな女に誑かされて…
男にとってはかなり美味しい状況だが、俺にとっては恋人の黒歴史を聞いてる気分だ。
しかも時には男も来てたんだろ?



「誤解するな。俺から誘っていない。勝手に入ってきて、勝手にやって帰っていくんだ」

「入れ食い!?据え膳!?来るからって風紀を乱すんじゃねぇ!」

「いやね〜。男のジェラシーって」



アニタが呆れたように溜息をつく。そうさ、俺は心が狭いんだ。たとえ受け攻めが逆でも、スコールと肉体関係を持った人間が全て憎らしい。



「スコール、いつからこの女とそんな関係なんだ!?」

「1年ぐらい前からかな。サイファーを探すようになってから、最近は疲れきってずっと相手なんかやってる余裕なかったけど…アニタが防波堤代わりに泊まりに来てくれて、暫らくずっと落ち着いてたんだ」

「うふふ。たまにはご褒美を貰ったけどね」

「その辺はお互い様だ」



にこやかに微笑みあう2人は、本当に旧知の仲に見える。
俺がいない間に…いない間にこんな…



「この尻軽が!!」

「尻軽?アンタは何か勘違いしてないか?」

「勘違いだと?」

「まさか1回寝ただけで、俺の男になったと思ってるのか?」




「は?」




「俺はそんな簡単に落ちない」

「じゃ、じゃあ、さっきのピロートークは何だよ!?」

「…ちょっとしたリップサービス?もしかして本気にしたのか?」



今まで見たことがないような人の悪い顔でニッコリと笑う。
たかだか1年、されど1年。
俺がいないその数年で、スコールはすっかり強かに変貌していた。

ここは騙されたと怒るべきか?
怒るべきだろうな…

だけど気づいたときには、俺はもうすっかりスコールに骨抜きになっていた。





NEXT 06


気がついたら約2年ぶりの続き更新(滝汗)
そんでもって、以前と同様ムダに長い。

サイハー氏の受難はまだまだまだまだ続きますよー。


2008.10.10

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