目が覚めるとベッドに寝かされていた。
ベッドの周りを白いカーテンで仕切っているこの見慣れた場所は…どこから見てもガーデン保健室だ。
オカシイ。
一度目が醒めた時は、確か懲罰室にいたはずだ。
それが何で保健室にいるんだ?
後頭部のコブが思ったより酷くて治療の為に移したのか?
それにしても、犯罪者を保健室に寝せておくのはどういうことだ?
俺は世界中から指名手配されてる戦犯だぞ。
普通は怪我していようが、鉄格子付の懲罰室に突っ込むもんだろ。
頭を動かすと後頭部がヒリつくように痛んだ。
「いてぇ…あのガッツリ感は、センセイのムチじゃねぇな。セルフィのヌンチャクあたりか?」
実は、あの手の武器を結構バカにしてたんだが、意外と殺傷能力あんのな。
今度から気をつけよう。
コブを確かめようと後頭部に手を当てると…
「あ?包帯?」
頭全体にグルリと巻かれた布の感触。
コブの手当てにしちゃあ随分と大袈裟な。
マジで俺が思っている以上に酷い怪我だったのか?
確かに動かすだけで引き攣れるような痛みと、常に不快な鈍痛を感じるが…これは打撲というよりも切り傷の痛みっぽい。
まさか刃物仕込んでたんじゃねぇだろうな?
「サイファー目が覚めたのか?」
カーテンで仕切られただけの隣のベットには、スコールが寝ていた。
そういや病院に駆け込んだ時、ドジって数日は動けねぇとか言ってたな。
「英雄殿と同じ部屋に戦犯を寝かせるなんて、随分と無防備だな」
「別に…何か起きるとは思えなかったし。それに、アンタの寝顔も結構無防備だったけど?」
「てめぇ!!今ここで決着つけてもいいんだぜ?まだオマエは動けねぇんだろ?」
「俺はもう、いつでも自分の部屋に戻ることが出来る。アンタの目が覚めるまで、付き添いでここに寝てただけだ」
「…昨夜はあんな状態でか?」
背中を打って動けねぇって、自分で言ってたよな?
回復魔法使ったって、こんなに早く治るもんじゃない。
それなのに、小さな擦り傷の類も、跡形もなく綺麗に消えて無くなっている。
「まぁ、アンタは知るはずないけど…実はあれから1週間経っている」
「あれから…って?」
「だから、サイファーの後頭部にセルフィの攻撃が当たってからだ」
「……はぁ!?」
1日くらいならわかるけどよ、1週間ってのは意味がわからねぇ。
「また俺を騙して笑いものにするつもりなのか?」
「騙してない。アンタが勝手に俺が死んだと勘違いしただけだろ」
「勘違いすると分かりつつやってる方が性質が悪いぜ」
あの状況で何も知らないヤツが見たら、俺でなくてもスコールが死んだんじゃないかって勘違いするに決まってる。
せっかく必死になって駆けつけたのによ。
心と身体がバラバラになりそうになったて…あの時、何か大事なコトを気付きかけたんだ。
それなのに、その『大事なこと』を踏みにじられた気分になる。
「サイファー、嘘じゃない。本当に1週間経っているんだ」
「あのデカイ飛空挺使えば、ガルバディアの病院からここまで来るのに1日もかからねぇだろ」
「ああ。確かに半日で着いた」
「じゃあ1週間って何だよ?」
「アンタの頭の手術したから」
頭…巻かれた包帯。
「なぁ、アレってよぉ…そんなに、当たり所悪かったのか?」
「いや。セルフィは、そのへんの匙加減は上手くやって、あの攻撃の怪我はコブ1つだった。あんなのは治療するまでもなない」
つまり…あの攻撃の治療でもないのに、頭に傷があって、1週間も意識が戻らなかったってことか?
嫌な予感がする。
そういや俺は、1度、懲罰室の中で目が覚めたんだ。
あの時には、こんなに痛まなかったし、包帯も巻いていなかった。
つまり…あの後俺の身に、1週間意識が戻らないような『何か』があったということだ。
「…俺に何をしやがった?」
「アンタのココに」と言って自分の後頭部を指差し「自由を制限するモノを埋め込んだ」
「発信機か?」
「まぁ…その類だ。各国からアンタをガーデンに引き取るのを承諾して貰うために色々と機能をつけてある」
怒りで頭の中が真っ白になった。
俺の知らないところで、勝手に俺の命を取引しやがって!
そりゃ捕まったら俺の意思なんか尊重されねぇだろう。
だけど、飛び出したガーデンに…ライバルだったコイツに情けをかけられて保護されるなんて我慢ならねぇ!
気がついたら俺はベッドを飛び出し、窓から外に走り出していた。
「クソッ!こんな所に一生押し込められんなら、ガルバディアに自分から出向いて捕まった方がマシだぜ!」
ゲートを飛び越え、ガーデンを取り囲んでいる塀に向かう。
いくら俺でも、門から堂々と出れるとは思っていない。
後を振り向いても誰も追いかけて来ていなかった。
その時点でおかしいと気づきゃ良かったが、とにかく先にガーデンから抜け出す方が先だった。
勢いをつけて塀を駆け上り、塀のてっぺんに手をかける。
そして体を持ち上げ、塀から頭が外に出た時だった。
何が起きたのか理解できなかった。
痛みというよりも衝撃が頭に走り、俺は一瞬で意識を失った。
次に気がついた時、また俺は保健室のベッドに寝かされていた。
ベッドの横には、スコールが憎たらしいくらい綺麗な笑顔を見せ、俺に言った。
「わかっただろ?逃げられないって」
「頭に仕込んだのは、発信機だけじゃねぇのかよ!?他に何を入れやがった!?俺を一生ここから出さないつもりなのか!?」
「出られないワケじゃない。一応それには解除キーもあるんだ。ただし、俺が直接入力しなければ解除出来ないし、それにも時間制限がある」
「時間内に戻らなければ、またああやって意識奪って俺を回収すんのか?」
「少し違う。俺が新たなキーを認証させなければ、脳内に一緒に取り付けた小型爆弾が爆発してアンタは死ぬんだ。ちなみにソレ、俺がが死んでも爆発するからな」
爆…弾?
「ははっ…冗談だろ?」
「冗談でこの計画に1年もかけるものか。アンタの命は俺のものだ。俺の知らない所で死ぬのは許さない」
俺のこれから先の人生を踏みにじるために1年もかけただと?
「俺をここまで貶めて、楽しいかよ?」
「…楽しそうに見えるか?」
「以前のやる気のねぇテメェに比べりゃ生き生きしてるぜ」
「そうか…そういえば、アンタのお蔭で随分と充実した毎日だったな」
納得した顔で頷いてもらっても、俺のほうが納得できねぇんだよ!
それにしても調子が狂う。
前は俺が引っ張り回してると面倒臭そうな顔をしてたのに、今は普通に会話が成立している。
いや、してねぇか。
精神体の時とギャップがありすぎて、コイツが何を考えてるかサッパリわからねぇ。
あの俺に向けられた柔らかい微笑が素なら、この仕打ちは何なんだ?
「俺はこの状況に納得してねぇからな!」
「そうだろうな。でも、アンタだって自分の立場がどんなものか分かってるだろう?暫くはそれで大人しくしていてくれ」
「嫌だと言ったら?」
「嫌でもアンタには選択の余地がないんだ。諦めろ」
そう言ってスコールは俺を残し、保健室から出て行った。
確かにどうにもならねぇ。
この状態じゃあ外に出たらブッ倒れんだからよ。
どうしても嫌なら、命の開放しか手が無い。
つまり『死』だ。
だからといって、自殺すんのは負けた気がして嫌だ。
じゃあどうする?
スコールは自分が死んでもこの爆弾が爆発すると言ってたが、わざわざ言うあたりが怪しく、他になにかありそうで殺る気にならねぇ。
そうだ。
アイツが俺を保護する為にこんな真似したんなら、アイツの手を汚させるのが一番効果的だ。
それなら俺を殺したくなるようなコトをすればいいわけだ。
スコールを見ていると、何だか分からない衝動に駆られる。
それは以前から感じていたことだが、最近はもっと体の奥から突き上げるような…
とにかく滅茶苦茶にして、アイツが泣きながら許しを乞う姿を見たい。
どうすればアイツを屈服させることが出来るんだろうなぁ?
屈服…そうだ。
組み敷いて、男の俺に抱かれるってのはどうだ?
押し倒しちまえば、抵抗しても体格差で逃げられねぇだろうし。
こればっかりは、いくらガンブレが互角でも、どうにもならねぇからな。
プライドが高いアイツが、屈辱に震える姿を想像しただけで興奮する。
ヤルなら早い方がいい。
今夜にでもだ。
「スコール、俺を保護したこと後悔させてやるからな」
「…アンタ…何やってんだ?」
夜中にスコールの部屋に忍び込み、両手を紐で縛っていると、ぼーっとした表情でスコールが、まさに寝惚けたコトを言ってきた。
何って…普通、縛られてたら驚かねぇか?
っつーか、SeeDなら部屋に侵入された時点で気付けって。
「これからオマエを抱くんだよ」
「アンタには俺が女に見えるのか?」
「いんや。こんなモンが付いてる女はまだ見たことねぇなぁ?」
スコールの股間をパジャマの上から軽く握ると、ビクッと反応した。
なのに、
「……そうか。そうきたか。俺を抱きたいなら、勝手にやってくれ」
は?
勝手に?
っつーか、
「ちょっと待て!テメェ寝惚けてんじゃねぇ!ここは思いっきり抵抗して泣き喚く場面だろが!」
「別に…寝惚けてなんかいない。やりたかったら、やればいいだろ。アンタに首輪を付けたからには、エサが必用だと思ってたし。まぁ…こういう展開は予想してなかったけど…」
「首輪だと?変な比喩を使って俺を犬扱するな!」
「そうだな。犬が可哀相だ」
コイツ、本当に自分の状況がわかってんのか?
俺に組み伏せられても抵抗の1つもしやしねぇ。
「俺にあんなフザケタもん付けた意味わかってるようだな。だけどな、自分をエサ呼ばわりしたこと、すぐに後悔すると思うぜ?」
「というかアンタ…ソッチの趣味があるようには思えなかったけど?本当に男相手に出来るのか?」
「そういう問題じゃねぇだろ!オマエ、同性に抱かれるんだぞ!!普通はここで思いっきり嫌がるだろが!」
「嫌がったらアンタは楽しいかもしれないけど、そこまでサービスするほど俺達は仲良くないだろ」
確かに嫌がって泣いてもらうハズだったけどよ、それってサービスなのか?
何か違う。
激しく違うぞ。
「少しぐらい抵抗しろよ」
「これだけしっかり拘束して、抵抗もなにも・・・無駄に疲れるだけだ」
「オマエ、自分の体なんだぞ?もっとこう大事にしようって気にはならねぇのかよ?」
「アンタこそ、やってるコトと言ってることが矛盾してる」
「オマエがマトモじゃねからだろ」
「それで、マトモなアンタは男を抱けるのか?勢いだけで来たんじゃないのか?ここまでやったのに、最後まで出来なかったら男の恥だぞ?」
抱けるか?
同じ男を相手にしたことがないが…男にも穴はあるし、戦時中は兵隊が男同士でヤッてるのも知識としてある。
先人が出来たなら、俺にも出来ないことはないだろう。
穴さえあれば。
「とにかく俺は、オマエをメチャクチャにしてやりてぇんだよ!!」
そう言って、今度はは下着に手を潜り込ませ、スコールの分身を直接握り軽く扱いてみた。
その瞬間、スコールは俺の下で体をビクリと震わせた。
「くくくっ。感度いいな」
「んっ!!!」
目元を赤くし、呼吸の乱れたスコールは、男のくせに色っぽかった。
その姿に反応し、俺の中心に熱が集まってきた。
「オマエに限っては、ヤレる自信あるぜ?オンナを相手するよりゾクゾクする」
「それはとても光栄だ。でも、それだけ自信満々に言って、もしも下手だったら…スグに部屋から追い出すからな」
そう言った直後、頭の上できつく押さえつけた両腕から力がスッと抜けた。
縛りかけのロープが緩んだが、逃げる様子は全くない。
「オマエ、本当に抵抗しねぇ気なのか?」
「抵抗して逃げても…こんな脱ぎかけの姿で廊下を走る方が恥ずかしい」
「そりゃそうだが…」
「どうせ、ヤメロといってもアンタ聞かないだろ?」
「まぁな。俺のことよく分かってるな」
「アンタとは無駄に付き合いが長いからな…」
こんなに簡単にコトが進んでいいのか?
いや、強姦としては完全に失敗か。
俺としては、コイツを泣かせることが出来んなら、生傷の1つ2つ…いや、骨の1本2本は覚悟してたんだが、当の本人が嫌がらないならどうしようもない。
まぁいい。
それならそれで、今の状況を楽しめばいい。
押さえる必要が無くなった腕を離し、素早くアンダーシャツをたくし上げ抜き取った。
その拍子に、いつもは顔を覆っている邪魔な前髪が除け、奇麗な顔が全開になった。
俺を見る2つの青い宝石。
そこには何の感情も浮かんでいないようだった。
あの機械を繋いだ精神体のスコールなら、一体どんな表情をしてるのか見てみたかった。
何かを引き出したくて、中心の愛撫を激しくする。
声を出すまいと必死に唇を噛んでいたが、そのうち呼吸がついていけなくなり、薄く開いた唇の熱い吐息の間から漏れる微かな声に、俺の身体も熱くなった。
この綺麗な生き物を俺のものにしたい。
いっきに下着ごとスコールの下半身を覆っているものを抜き取り、俺は自分のモノを取り出した。
そして、スコールの秘所にあてがい―――
「サ、サイファーまだ無理っ!…っつ!!」
欲望をそのまま押し入れようとすると、スコールの全身に力が入った。
僅かに入り込んだ俺の分身も、激しい力で締め付けられた。
千切れそうな恐怖を覚え、慌てて身を引いた途端、スコールの蹴りがマトモに入った。
ドガッ
思いっきり蹴飛ばされた俺は、ベッドから転げ落ちげ、ポカンとした俺の尻を更に蹴飛ばし、ついには寝室の外まで蹴りだした。
「テメェ!何しやがる!?」
「アンタ馬鹿か!?オンナと違うんだから、いきなり突っ込もうとしたって無理に決まってるだろ!!」
え?
そ、そうなのか?
男の場合、すぐに突っ込むのって無理なのか!?
「ち、ちょっと手順を間違えただけだ!も、もう1回!」
「煩い!ヘタクソ!」
俺の目の前で寝室の扉が勢い良く閉まり、入ろうとしても今度はしっかり鍵がかかっていた。
いつもなら蹴破るくらいはしてたが、アイツの一言が頭の中をぐるぐる回る。
ヘタクソ…ヘタクソ…ヘタクソ…ヘタクソ…
茫然自失のまま、俺は寝室の扉の前に座り込んだ。
まるで、ご主人の部屋の前で『待て』している犬のように…。
ふふふっ
ヘタクソ宣言されたサイファー(笑)
次回でリベンジなるか?
4話目は明日UP目標。
2006.09.23