| Snow Man |

更新日:2001.03.22

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「今は確か・・・春のはずだよな?」


ガーデンの外では草花が芽吹いていた。
それを見たのは、つい昨日の朝の事だったはずだ。


左足を一歩前に出す…さらに右足を一歩出す…。
この作業は通常無意識にやっている動作だ。
それが今、足を前に出す作業に意識が集中している。
目の前の障害ブツ…膝上まで降り積もった雪によって…。


数時間前から降り始めた雪がいっそう酷くなってきた。
視界0メートル。
あたりは白い闇に包まれる。


唯一の命綱、コンパスを握り締め…俺は叫んだ。



「スコール!!覚えていやがれ!!帰ったらお仕置きだーーーー!!!!」





---Snow Man---






風が春らしい空気になってきた。
今朝、目の前の恋人と散歩していたらフキノトウを見つけた。
春はやっぱりいいぜ!
だが、冬は…大っっっっ嫌いだ!!!!
マイナス温度の中で生活するなんて冗談じゃねえ!!
そんなこと言ったらスコールは


『冬の間に雪のある所で休暇を取りたかった…』


な〜んて言ってやがったな。
何を好き好んで寒いとこに行きたがるのか…



「おい!聞いてるのか!?」



あ、しまった!会話の途中でトリップしちまったぜ。

昼下がりの指揮官室はポカポカしていて、昼寝に最適な状態になっていた。
思考も真っ直ぐ進まず、アチコチに寄り道してしまう…



「悪ぃ…で、なんだ?」

「任務だ。明日トラビアに行ってくれ」

「急だな。任務内容はなんだ?」

「ある“モノ”を指定の場所に運ぶだけだ」



おいおい、運び屋かよ…



「そりゃ、SeeDの仕事じゃねーだろ?“運び”の専門に頼めば済む話じゃねえか」

「サイファー、『SeeDは“なぜ”と問うなかれ』だ。」

「けっ!…じゃあ行かねえ!」

「…アンタな…今回の任務は…詳しい内容まで言えないが、俺とアンタ、そしてゼル・キスティス・セルフィー・アーヴァイン、それからリノアも作戦に加わるんだ…」

「伝説のSeeD with 魔女の(元)騎士と、その他、魔女討伐隊+現役魔女なフルメンバーじゃねえか!」

「…(なんだそれは?)…そうだ。それぞれ違う役割がある」

「…。」



このメンツを揃えるだけの重大な…そして危険な任務ってことか?
財力もそうとうある依頼人だな。
どこかの国か?…エスタあたりかもしれねえな…
そんな危険な任務にスコールを送り出して、俺だけヌクヌクしてるわけにはいかねえ!



「わかったよ、任務引受ける」

「モノはトラビアの3地点で回収することになっている。最終的には合流するが、出発はバラバラだ。」

「…なるほど。ここから全員一緒に行くと敵に感づかれるってワケだな?」

「回収する“モノ”も、ここから運べば悟られる危険性があるんだ」



真剣な眼差しでスコールは答える。
久々の大任務だ…少し緊張しているのか端正な顔がこわばっている。
俺は両手でスコールの頬を包んだ。



「大丈夫だ。俺が付いているんだから成功するさ。安心してまかせてくれ」

「ああ。アンタだから安心してまかせられる。」



緊張が少しは取れたようだ。
少しはにかんだ様に微笑み、嬉しい事を言ってくれた。



ちくしょう!!可愛いぜ!!!!
このまま押し倒したいところだが…まずいよな?



「じゃあ明日、ランデブー地点で逢おう。」



-----“明日”-----


…俺達SeeDには確実な保証はない…
だが、俺達はその言葉を口にする。
それは、願いと祈りがこもった言葉。
あとは自分の実力と運しだいだ。



「ああ、明日逢おう」



そのままお互い抱き合い、しばしの別れのキスをした。







トラビアは、まだ雪が降っていた。
積雪量もかなりのもんだ。
この土地の春はまだ2ヶ月は先だろう。

最初の回収ポイントは、何処にでもあるような雑貨屋だった。
そこで大きな箱を1つ渡された。
モノは分からないが、かなり重い。

2番目の回収ポイントは、これまた一般的な食料品店。
最初に受け取った箱を渡すと何かを詰めたらしく、さらに重くなった箱を渡された。



「重いぞコレ…“モノ”ってなんなんだ?」



とりあえず、第3ポイントの確認をする為に地図をポケットから取り出した。
4つ折したスコール自筆の任務依頼書及び、地図は降り続ける雪でマズイことになっていた。



「嘘だろ…」




水溶性のペンで書いたのだろう…濡れて滲んでいる。
なんとか次のポイントとランデブー地点の座標は読める。
だが、地図としての機能は果たせない状態だ。
道路なのか川なのか、全く解読不能。



「…しゃ〜ねえか!座標が判ればなんとかなるしな!!」



そのままレンタカーを第3ポイントの座標が示すところに走らせる。
さらに雪が酷くなり、視界が悪くなってきた。



第3ポイントは…
肉屋だった。
人の良さそうなオバチャンが出て来て、渡した箱にまた何かを詰めている。



一体なんなんだ!?
何かの機密に携わるような人間に全く見えないぞ?
いや、ガーデンの情報網はスゲェから、案外腕利きのスパイかもしんねえ…



「…ガーデンの裏の一部を見た気がするぜ」



詰め終ったのか、オバチャンが声をかけてきた。
何度見ても、何処から見ても普通のオバチャンだ…完璧だぜ。



「終わったよ。もってきな!」

「ああ、ありがとな!」

「いやいや、こっちも商売だしねえ。あんたもガーデンの人なんだろ?」

「そ…そうだが?」



おいおい、敵が何処にいるのかも分からねーのに、ガーデンの名前だすなよ!!



「ガーデンっていうのは、みんなイイ男ばっかり揃ってるのかねぇ?」

「あ?」

「いやねぇ、この前来た男のコもキレイな顔してたからさ。ちょうどアンタと逆に顔に傷があってね」



と、言いながら額へ指で傷のあった場所の示す。



…スコールだ…。
そういえば、先週トラビアに任務で来てたな。
今日の任務の布陣もしていったのか。
用意周到だ…さすが指揮官なだけあるな。

しかし、アイツらしくない。
ガーデンの名前を漏らすような人間に依頼するなんて…。
帰ったら言っておこう。

そういえば、荷渡し時間がせまっている。
ランデブー地点はここからさらに北北東だ。
地図が無かったら地元の人間に聞けばいい。



「オバチャン、すまん。時間がないんだ。この先に進む道はあるか?」



オバチャンは悪気のない顔でニッコリ笑って言いやがった…。



「この先は行き止まりだよ」



俺は車を捨て、何もない雪原を目的地まで歩いて行く事になった。
かなりの重量になった《高さ50cm×横50cm×縦50cm》の箱を担いで…だ。











左足を一歩出す…足がズブズブと雪にめり込む。
さらに右足を一歩出す…やはり足がズブズブと雪にめり込む。

目前の敵は膝上まで降り積もった雪…。




肩に担いだ荷物の重量分がさらに、歩みを遅くさせる。
いったい何処まで進んだのかさえ分からない。
コンパスの示す通りに進んでいるから目的地には着けるだろう。
…ただ、いつになるか…。



このままじゃ、指定時間に着けねぇな…
スコールにデカイ口叩いてきたのに…情けね〜よ



その時、雪の中に埋もれていた何かに躓いた。
大きな荷物を担ぎ、慣れない雪を漕いで歩いた身体は、あっさりとバランスを崩した。
担いだ荷物も一緒に転がる。
その拍子に蓋が開いたようだ・・・中身が雪上に転がり出た。





「な…な…」




自分はナンデこんな苦労をしているのか…。
それは任務だからだ。
だが、重要機密だと思って運んでいた荷物は…




「なんじゃこりゃーーーーーー!!!」




鍋3つ・大量の野菜が数種類そして…大量の肉…。
立ち寄った店で売っていたモノだった。


そういえば・・・


『冬の間に雪のある所で休暇を取りたかった…』

の話には続きがあった。

『雪を見ながらコタツに入って“鍋料理”が食べたい』だ…。



あの後、俺は『冗談じゃねー!』と却下したんだっけ…
………。



くくくっ…そうか、そういうことなのか

「俺が雪の中を這いずり回っていたのは、アイツの我侭に振り回されてただけなのか!?」



数時間前から降り始めた雪がいっそう酷くなってきた。
視界0メートル。
あたりは白い闇に包まれる。
唯一の命綱、コンパスを握り締め…俺は叫んだ。
叫ばずにはいられなかった。



「スコール!!覚えていやがれ!!帰ったらお仕置きだーーーー!!!!」











サイファーが来ない。
約束の時間から、1時間過ぎている。
肉屋に電話したらとっくに出たと言っていた。
心配になって交通情報をみたが、交通事故の知らせは入ってなかった。




「あの店から車で20分で来れるのに…どうしたんだ?」


もしかして…計画がバレたか?
肉屋あたりがヤバイな…あのオバサン口が軽そうだった…



「もう1度、道路を見て来るか…」



外は吹雪だった。
道路からは車が来るような気配がない。



もしかしたら、途中の崖でスリップして転落したとか…?
それなら目撃者もいないよな。
サーファー…スピード狂だから、ありえるぞ
ラグナロクも免停中だしな…

それとも、バレて怒って帰った…とか?
マズイな。
…でも、どうしてもサイファーとコレやりたかったんだ…



「崖まで見てくるかな…」




車の鍵を取りに戻ろうとし、振り向いたその先…何も無い雪原から何かが近づいて来た。



「熊か!?」



すばやくガンブレードを構え、攻撃体制に入る。
心の中では「熊鍋もいいな…」と考えながら。



---熊が吼えた---


「スコォォォォーーーール!!!!!」

「?…サイファー!?」


事故の心配をしていた本人が自分の目の前にいる。
思わずガンブレードを投げ出し恋人に駆けより抱きついた。
自分で考えていた以上に不安になっていたようだ。
なんだか、視界がぼやける。
嬉しいんだか切ないんだか胸がいっぱいだ。

自分からサイファーに軽くキスをした。



「待ってた…遅いから心配した…」



サイファーは、なにやら毒気を抜かれたような顔をしている。
そういえば、なんで雪原を漕いできたんだろう?
ちゃんと地図は渡したはずだ。
この道路は第2地点まで戻るとあるのに…。



いや…常に前を走っていたいヤツだから、戻りたくなかったのかもしれない



「あ!サイファーはんちょ、おっそ〜〜〜〜い!!」 

セルフィーが出てきた。

「何してたんだい〜?」

「あら、どうしてそんな所から来たの?」

「まさか、驚かす為にワザと雪原から来たのか?」

「ちょっと〜!!2人して抱き合って何してんの!!元彼同士、私の前でイチャつかないで〜!!!」



後から皆がゾロゾロ全員出てきた。
さっきまで吹雪いていた雪も止み、雲の間から月が現れる。
朝からそれぞれが準備して、完成されたものが照らし出される。



3つの大きな“カマクラ”が…。










「ちょっとサイファー!突っ立ってないで箱よこしてよ!!」



リノアが俺から箱を奪い取り、女性陣達が手早く材料を3つの“カマクラ”に分ける。


あの箱…かなり重いぞ?…さすが魔女…
そういえば、俺怒ってたんだよな?


怒りの元凶スコールを見る。



「お前、コレがやりたかったのか?」

「そうだ。」

「任務だなんて嘘つかないで本当の事言えばいいだろ!?」

「以前、言ったら即却下しただろ。」



確かにそうだが、普通ここまでしてやるか?



「寒いから中に入ろう。朝から頑張って作ったんだ」



カマクラの中には、小さなコタツ。
その上にはガスコンロが置いてあって、すっかり“鍋”用に準備が出来ていた。
コタツの中に入る。



「意外と暖かいもんだな。コタツの中に何入れてんだ?」

「炭だよ。寒いからこのくらいじゃ雪融けないそうだ」

「…セルフィーと手を組んだな?」

「黙っててゴメン。でも以前、映像で1つのカマクラに家族や恋人同士が入っていて、幸せそうに笑っているのを見たんだ。」

「それで?」

「だから…やってみたかった。アンタと1つのカマクラの中でコタツ入って、鍋つついて…楽しいだろうと思ったから…」

「俺はオマエと一緒にいれるだけで楽しいし、幸せだぜ?」

「でも、こんなのもいいだろ」



俺は幻想的なロマンティック派だがコイツは…現実的なロマンティック派だな…
もう、怒りなんて吹っ飛んでしまった。
っていうか、この状態で怒れね〜。
結局はコイツも俺と一緒に楽しく過ごしたかっただけなんだ。

俺達は仲良く鍋をつついた。
あの時は、こんな日が訪れるとは思わなかった…

他のカマクラからも笑い声が聞こえる。
みんな楽しくやってんだな。
やはり平和が一番ってか?



たまには、コイツの我侭きいてやるのも悪くねぇな。





END


あとがき

スズノ様の444HIT キリリク
「ワガママなスーに振り回されるサイファー・・・」でした★

なんか、あんまり振り回してない気がするけど、私にはコレが限界。
ヘボヘボ小説でゴメンね(TmT)
だって文章書くの苦手なんだよう。
学生の時、作文&感想文とか大嫌いだったね。

とりあえず、本格的に春になる前にUPしたかったのね〜。

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