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 02

UFOに誘拐…冗談だと思っていた。
だが、上空に浮かぶ“アレ”はなんだろう???

ここは、ウィンヒルへ向かう途中のマンデービーチだ。

そして…その青い空に浮かぶのは、巨像を運ぶ…空飛ぶ円盤



俺は夢を見ているのか?



「はんちょ!何ボケ〜っとしてんの!!アレに元はんちょが捕まってるんでしょ〜!?」

「アレが…そうなのか?」

「アーヴィンも写真ばっかり撮ってないで〜!」

「だって、こんなチャンス滅多にないんだよ〜!オカルトファンに投稿するんだから〜」



横でセルフィとアーヴァインが騒いでいたが、俺は別のことで頭がいっぱいだった。



ショックだ…あんな、マンガのようなモノがUFOだなんて…
UFOって…もっと、こう…直径が20km以上あって、NYが一瞬で壊滅するような…



「はんちょ〜〜〜〜〜〜!!」


呆然とするなか、円盤は水平線の向こうへ消えて行った。





ファースト・コンタクトは…失敗した。











「何かおかしい」


んも〜〜〜〜〜〜っ


「…俺はテメエに言ってんじゃねえ!!」



ドコッツ!!



俺の横を、白黒の巨体が掠める。
素材はわからんが、透明な壁がミシッと音をたてて揺れた。

言っとくが、白黒だからってパンダなんて可愛らしいもんじゃねえ!
牛だよ、牛!!

数日前に、この牛と一緒にココへ吸い込まれた。
どうやら…地球外生物に捕獲されたらしい…。
透明な檻の他には、何も無い。
どこもかしこも白一色だ。
悔しいが、コイツがいなかったら気が狂ったかもしんねえ。



ただ、よくわからんのが…何で“牛と一緒の檻”なのか?


おかげで気が抜けない。
さすがの俺様でも、この狭い空間、獲物もナシでコイツとのバトルは堪えた。

透明な壁の向こう…扉が開き、この部屋に何かがゾロゾロ入ってきた。


奴らだ!!


人とは決定的に違う白目の無い大きな目。
骨格からいっても歯がなさそうだ。
なによりも不気味なのは、体毛の無いツルリとした体…。


…チクショウ!信じられねぇ。まさか宇宙人と接触する日が来るなんてな…。
元々、俺がウィンヒルに飛ばされたのもアホみたいな依頼内容だったらかだ。



“牛がUFOに攫われて、数日後に内蔵だけくりぬかれて空から降ってくる”




俺もスコールも、こんなアホな話を信じちゃいなかった。
だからこそスコールは、今までの苦情の罰としてアホ任務につかせたんだろうが…これは、ちょいとマズくねぇか???

数日間奴等の行動を黙って見ていてわかったこと…あいつらは俺と牛を観察してやがる。
この観察が終わったら…考えたくねぇが、内蔵くりぬかれて地上へダイブかよ!!
俺はロマンチストだがSFは大嫌いだ!!



「この野郎!!こっから出しやがれ!!!言っとくがな、俺は黙って体いじらせねえぞ!!後悔したくなかったら出せーーーーーーー!!」


奴等は驚いたように動きを止め、俺を見た。
そして初めて奴等の声を聞いた。



「死ニタクナカッタラ繁殖シロ」

「は?」

「繁殖シロ」





「…」





「……」





「…………」











「なんだとーっ!?」



この中には、俺と…牛しかいない。


何故、同じ檻なのか?
まさか…コレが答えなのか?










ラグナロクの客席にドサッと腰を下ろし、本日数十回目の溜息をついた。
向かいの席にアーヴァインも腰掛け、やはり大きな溜息をつく。

ファースト・コンタクト失敗の後、エスタ、トラビア、ウィンヒルでも接触は失敗に終わった。
空を飛ぶものに攻撃しても届くはずが無い。
最後に見たときUFOは、ウィンヒルで牛を運んでいた。



「間違いない。サイファーはアレに攫われたんだ」

「でも、どうする〜?相手は空飛んでるから攻撃届かないよ?」

「今度見つけたら、ラグナロクでちょっと体当たりでもしてみるか…」

「スコール…それじゃ、サイファーも巻き添えだよ〜?」



ヤケクソでちょっぴりキケンな思考になりかけた時、コクピットから通信が入った。



「はんちょ!ラグナ様から電話だよ〜!!」

「…(こんな時に面倒だな)…いないって言ってくれ」

「え〜?でも、UFOの件みたい」



すぐさま、外線に繋ぐ。
自分と血が繋がっているの不思議なくらい能天気な声が受話器から聞こえてきた。




「息子よ〜!元気か!?ラグナロクで飛んでるなら会いに来てくれよ!!」

「用が無ければ切る!」

「わあ!!待った!待った〜!!スコール、UFO探してるって聞いたからよ、さっき入った情報教えてやろうと思って電話したんだぜ!?」

「で、何処だ?」

「チョコボの聖域に不時着した未確認飛行物体が…」




プチッ・・・・ツーツーツー・・・・・・・・・・



「セルフィーか?これからチョコボの聖域に向かう」

「スコール…ラグナ大統領が気の毒だよ〜」

「ラグナと会話するよりも、サイファーの救出に向かう方が重要だ」

「…もしかしてスコール、サイファー禁断症状?」




チャキッとガンブレードの刃先が僕の鼻先に向けられた。
無言なのが怖い。



「ご、ごめんね〜。冗談だよ〜!」



だけど、スコール…ちょっと顔が赤くなったのを僕は見逃さなかったよ?
図星だったんだね。











「だからな、俺とコイツは種族が違うんだ!!」

「何処ガ違ウノカ分カラナイ」

「何で同じ種族に見えるんだよ!?」

「白黒デ・・・大キクテ・・・雄ト雌デ、何時モ一緒ニイタカ、ツガイナノダロウ?」

「だーーーーーーーーーーっ!!違うって言ってんだろう!!!」



話しは通じるが、違う意味でハナシが通じない。
あれから、俺と牛では繁殖出来ないって何度いっても理解しやがらねえ!
獣とでも、犯ろうと思えば出来るだろうさ。
戦争が激しかった時代、兵隊は家畜で性欲処理してたらしいが…だが、コイツと犯るのは命がけだ…っつ〜か、ナニが悲しくて奴等の前で、んなもん見せなきゃなんねえんだ!?



「繁殖出来ナイナラ用無シダ。内蔵サンプル取ッテ、サヨナラネ!」

「はっ!出来るもんならやってみな!!」



透明なゲージが開いた。
奴等が拘束具も持って近づいてきたが、んなもんに捕まるバカじゃねぇ!
俺の腰ぐらいしかない身長の奴等を蹴飛ばし、出口に走った。
光線が目の前の壁に当たる。
振り向けば、一番離れた所にいたヤツが、銃らしきモノを俺に向けていた。
勝ち誇ったような動作で俺に檻へ戻るように示す…が、ソイツは横から突っ込んできたウシに吹っ飛ばされ、床に転がった。



「やるじゃねぇか!」

「んも〜〜〜〜〜〜っ」


こうなれば、運命共同体だ。
コイツも状況がわかっているのか、協力体制に入ったようだ。


扉を開けて部屋の外に出た。
バカな奴等だ、部屋のすぐ外に俺のハイベリオンを放置してやがる。
しっくり馴染む、数日振りの獲物を手に俺は低く笑った。





「くくくっ…リベンジ開始だ」











チョコボの聖域の少し北にUFOは不時着していた。
飛んでいないならこっちのもの。

しばらく攻撃を与えると小さな爆発を起こし、西へ飛んでいった。




「追いかけるぞ!!」

「らじゃ〜*」

「でも、変だよねえ?何で反撃してこなかったんだろう?」


(知るか!サイファーが捕まっていることには変わりがない)


「あ!いたいた〜!!バラムガーデンがあったトコに落ちてるよ!!」




小さなUFOから煙が出ている。
中から青い生物が這い出してきた。
ものすごく…弱そうだ。

俺達が武器を手に駆け寄ると、つぶらな瞳をコチラに向け----------ぬかしやがった。





「エリクサーちょうだい」



な・な・なっ!人から大切なモノ奪っといて、さらに要求する気か!!!?



怒りでコトバが出ないでいると、セルフィが横でホイホイとエリクサーを与えている。

バカヤロウ!!
見かけにダマされるな!!
コイツは誘拐犯なんだぞ!!



「ありがとう!」

「ねえねえ!君、サイファーはんちょ誘拐した〜?」

「???してない」

「嘘つくな!俺達は、その円盤でウシを攫っていくのを見たんだ!!」

「あ〜〜〜!はんちょ、この子脅えてるよ〜!!」

「煩い!兎に角、サイファーを俺に返せ!!」

「うわ〜〜、スコール錯乱気味だよ〜」

「ウシを攫ったのは犯罪者をおびき寄せる為、人間攫ってない」

「犯罪者?…詳しい事情を教えろ」



どうやら…この件、まだ奥に何かありそうだ。











高度な文明が作り出した船…俺が攫われたUFOはデカかった。

アチコチ制圧しても、わらわらと銀色の奴等が沸いて出てくる。
が、ハッキリ言ってコイツ等、弱っちい。
下っ端のモンスターとレベル変わんねーのな。

最初のうちは果敢に向かって来ていたが、今は俺の姿を見ると脅えて逃げやがる。



「バ〜カ!!一匹も逃がす気なんてねぇからな!!」

「んも〜〜〜〜〜〜!!」



ちょっと前から戦友となった乳牛に目で合図を送る。
俺が蹴飛ばし、開いたドアから銀色の宇宙人が蜘蛛の子散らすように出てきた。
ハンパな攻撃をかわし、ハイベリオンでなぎ倒す。
数が多いせいか、運良くハイベリオン潜り抜け2・3匹逃げ出した。


それをアイツは、すかさず蹴りと頭突きで床に沈めた。



「まったく・・・ここまで息がピッタリっていうのも、どうかと思うぜ・・・」





前方に、今まで見たものと様式が違う大きな扉が見えた。



「はは〜ん。どうやら最終目的地に着いたようだぜ」

「んも〜〜〜〜〜〜」





一気に中に踏みこむ。
中は無人だった…。


「…もう逃げたあとなのか?」




シュンッと微かな音が聞こえ、振り向いた瞬間、ウシに頭突きをされ俺は吹っ飛んだ。



「てめえ〜〜〜〜〜〜!!!」



痛む背中を擦りながらウシに向かって怒鳴る。



「!!?」



ウシは得体の知れない光に包まれ…消滅した。

消えた先には、銀色のヤツがヘンテコな装置をこちらに向けている。
あの装置がウシを消したということが、なんとなくわかった。
すでに標準は俺に向いている…。



スコール…もう1度、オマエの声が聞きたかったぜ・・・



観念して目を瞑る



「サイファーーーーーー!!!」



あぁ…幻聴が聞こえる…



ぎゅむっ


何かが、しがみついてきた…しかも、記憶に染み付いたこの匂い…



「スコール!?」

「良かった、無事で…今、かなり危機一発だったぞ」

「俺も、今回ばかりは駄目かと思ったぜ…で、何がどうなったんだ?」



見れば、銀色の奴等は糸みたいな物で全身を覆われ、もがいていた。
近くには、ちまっとした青い生物…とても弱そうだ…。



「あの青いの何だ?」

「信じられないが…宇宙連邦捜査官だそうだ」

「宇宙連邦捜査官!?アレがか!!!?」



青い宇宙人は手帳らしき物を銀色の奴等に見せた。
すると、今まで抵抗していたのがピッタリ止まり、観念した…。
なんだかな〜…。



「あの宇宙人は、この星の生態を不法に調べに来てたそうだ」

「生態をねぇ…アイツ等…わかるまで、また来るんじゃねぇの?」

「それは困るな」

「じゃあ、スコール協力しろ!」

「え?」



俺はスコールを引っ張り、銀色の宇宙人達に近づいて行った。



「馬鹿野郎共、よく聞け!繁殖ってなぁ、愛がねぇと出来ないんだぜ?」



そう言って、スコールの口を抵抗する間もなく塞ぐ。
久々の唇をじっくり、まったりと味わって離すと、スコールはグッタリしている。
宇宙人に目を向けると…



「信ジラレン!同性同士デ、ソンナコトスルナンテ・・・」

「コノ星ノ生態ハ、理解不能」




どうやら、コイツ等も愛の表現はキスらしい。
俺はニヤリと笑い言い放った。



「俺達はオメエ等と違って複雑に出来てんだよ!分かったならとっとと、帰れ!!」



青い宇宙人・コヨコヨに連行され、銀色の宇宙人は去った…。
小さな宇宙船に、直径20km以上もある宇宙船が牽引されて…(汗)

まったく…あの星空には、俺達が知らないコトが数多くありそうだ。

帰り際に、コヨコヨが意味の分からない言葉を残していった。


「君たちが、もう少し若かったら、ジェエダイの修行をさせたのに・・・」


「何だそれは?」×2

「フォースを信じるのだ」

「だから、何だそれはーーー!!?」×2










俺達は、ウィンヒルのクライアントに結果報告に向かった。
ここの住人の全てがUFOを目撃していたから、アホみたいな報告内容もアッサリ信じてくれ、すんなり終わった。

俺は牧場の真中に立っていた。

あの乳牛とバトルしたのは、つい1週間前だ。
あれだけ目の敵にされたのに、最後には俺を庇って死んでいった。



「今思えば…な〜んか、誰かさんに似てたんだよな〜」

「何が?」

「意地っ張りで、素直じゃないトコがよ」

「だから何がだ?」

「なぁ、スコール…俺、ペット飼ってもいいか?」

「突然だな…犬か?猫か?」

「牛」

「冗談じゃない!却下だ!却下!!」




だよな〜…だいたい、あんな見事な牛、そうそういないか。

ちょっと、シンミリしているとスコールが手を繋いできた。
驚いて、スコールを見ると顔を赤くしている。



「淋しいなら…俺がいるだろ?…俺だけにしとけ!」

「了解」




俺もスコールの手を握り返し…

ちょっと肥やしクサイ緑の牧場で-----俺達は牛が見守る中、熱〜いキスを交わした。






END


2001.05.05

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