| 星空からの贈り物 |

更新日:2003.12.15

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真直ぐに歩けない男に肩を貸し、俺は1歩1歩苦労しながら前進する。
この分だと、ガーデンに着くのは夜中になりそうだ。



「アンタ…飲みすぎだ」

「テメェも俺と同量飲んでたじゃねぇか」

「俺はアルコール抜けるの早いんだ」



昨日の夜からバラムに出て、何件もの居酒屋をハシゴして。
ホテルに泊まるのが面倒で映画館でオールした。
いつもなら、こんな羽目を外さないが、昨日だけは特別。
昨日、22日はサイファーの誕生日だった。
高級な酒を好きなだけ飲ませてやるのが俺からのプレゼントだったが、
いつのまにか飲み比べになり、結局は次の日まで勝負は持ち越し。
2人して1日以上飲み続けていたことになる。
俺も馬鹿だよな。



「お、流れ星!」



大きな火の塊が、光の軌跡を描いて夜空を横切った。
あれが向かった先は…ガーデンの方角だな…。



「スコール今の見たか?」

「流れ星…っていうレベルを超えてた気がするが…」

「いいじゃねぇか、ありゃあ願い事を3つ全部唱える為のサービスだ」

「…。」



流れ星=隕石が燃え落ちてきている現象
そんな状態の岩石に、願い事して叶うと真面目に思っているのか?
と、目の前の男に言えば『夢がねぇ!!』と返ってくるだろうな。



「また黙って、何考えてんだよ?」

「…別に」

「ま、いいか。ほら早く行かねぇと朝まで着かねぇぞ。仕事に遅れるとアイツ等うるせぇからな」

「アンタ、自分で歩けよ…ひっ!ドサクサに紛れてドコ触ってんだよ!!」

「いいだろ。減るもんじゃねぇし。ホラ、くるしゅうない、近こう寄れ」

「こんの酔っ払い!!」




結局、サイファーの悪ふざけをかわしながらガーデンに辿り着いたのは、夜中の0時過ぎだった。
が、ガーデン周辺は、夜中にもかかわらず何やらザワザワしていた。



「何かあったのか?」

「あ〜?今日はクリスマスだぜ。ちょっとくらい煩くても当たり前だろ」

「…そうだな」



俺達もハメを外してるんだ。
ちょっとくらい煩くたって、今夜くらいはいいか…。


サイファーの部屋の前に来た時、扉の前に小さな塊があった。
桃色の布がモゾモゾ動いている。


「サイファー…あれは何だ?」

「ん?…も、もしかして!!」


サイファーが俺の肩から手を外し、その塊へ猛ダッシュ。
っていうか…アンタ、歩けなかったんじゃ!?



「スコール、奇跡だ!流れ星に願った思いが叶ったぞ!!」

「は?」

「見ろ!俺達の愛の結晶だ!!」



そう言ってサイファーは、桃色の布を俺に差し出した。
布の中には…小さな水色の生き物がつぶらな瞳で俺を見ていた。

まて。
…コレ、どこかで見たことがないか?
…ダメだ、アルコールが完全に抜けてないせいか思い出せないな…



「サイファー…いくらなんでも、俺達の子供が水色のはずないだろ?」

「俺達は男同士で普通じゃねぇから水色の子供でも不思議じゃねぇんだ」

「……そうかな」

「そうだ!」



…そうかもしれない。
男女からは人間の形で生まれるが、男同志の間だったら、水色の子供でも、触覚があっても不思議じゃないかもな。



「ホラ。スコール、オマエも抱いてみろよ」

「…かわいいな…俺達の赤ちゃん」

「お星様、神様、サンタさん、ありがとう」



サイファーが天に向かって、多々ご利益がありそうなものに片っ端から感謝する。

嗚呼…奇跡ってホントに起こるんだな。
サイファー、ゴメン。
今まで俺、アンタを馬鹿にしてた。







「アンタ達何やってんの?」



キスティスの冷たい声が響く。



「キスティス、俺達に新しい家族が出来たんだ」

「俺達の赤ん坊だ。名前はえ〜と…まだ考えてねぇけどな」

「名前…コヨコ…っていうのが、今一瞬頭に浮かんだが…」

「お!カワイイじゃねえか!この子は“コヨ子”に決まりだ!」



「こんの、酔っ払いバカップル!!」


メーザーアイ炸裂。
アトのことは覚えていない。
気が付いたら、俺達は保健室で寝ていた。


ガーデンの裏には墜落したUFO。
実は、昨夜見た流れ星は、コヨコヨが乗っていた宇宙船だったらしい。
夜中に騒がしかったのは、そのせいで…
以前、助けたときに俺のコトを覚えていたコヨコヨは、俺を捜し、ガーデン内を彷徨っていた。
偶然タイミングよく、サイファーの部屋まで移動していたときに、俺達に見つかって…
墜落した挙句、酔っ払い二人に絡まれて…気の毒に…。
いつも泣きそうな目をしてたが、いつもより潤んでいたのは気のせいではないだろう。

それにしたって…俺もどうかしていた。
何故アレが、人間の赤ん坊だと?
男同士で子供は出来ないし、たとえ何かの間違いで生まれたても、水色の生き物であるはずがない。

アルコールは恐ろしいな…ここまで人間の判断を狂わせるとは。
俺は、今後2度とサイファーと酒を飲み比べをしないと、心に誓った。


END