更新日:2008.11.16
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「っ!」
スコールが声にならない小さな叫びをあげ、手を押さえた。
バサバサと足元に広がる書類。
「どうした?」
「手…切った」
「カミソリでも仕込まれてたか?」
「いや、紙の端で切っただけだ」
スコールに近づいて、傷ついた手を覗き込む。
どういう切り方をしたのか、指と手の平に何本もの赤い線が出来ていた。
血はあんまり出てないが、皮膚が線状にパックリ裂けて痛々しい。
「随分器用な切り方してんな」
「紙の束を丸めて輪ゴムをかけたんだ。ゴムを中心まで移動させようとして、紙に沿って手を下にスライドさせたらスパッと…」
ひぃ!
聞いてるだけで痛くなってくるぜ!
「オマエ時々そういうドジするよな。戦闘能力は高いのに、何で普通のコトはそんなに不器用なんだか」
「…悪かったな」
「悪くねぇよ。そういうトコ、可愛いぜ〜?」
「…」
スコールが眉間にシワを寄せて黙る。
さて、どんな反撃してくるか…
無言で傷ついた手を握ったり開いたり…握ったり開いたり…
おいおい。
あの手でそんなことしたら、その度に傷口がパクパク開いてるわけで…
それを想像したら思いっきり血の気が引いた。
ひぃぃぃぃ!!
「見てるほうが痛ぇからやめろって!」
「そうか?切り口から皮膚の層が見れて楽しいのに…」
た、楽しいかぁ〜?
こういう時のコイツは、まるで異次元の生物だ。
昔は理解しようとして失敗し、逆にコッチの言い分を押し付けて喧嘩になったもんだ。
今はもう慣れ…というか、ビックリ発言を受け止めるために、身構えることを覚えた。
今もスコールは、俺と手を交互に見て何か考え込んでいる。
それが、普通のコトじゃないのは…確かだ。
「…やっぱり止めた」
コイツめ…
何が飛び出てくるか身構えてたのにコレだよ!
「オイ、コラ。勝手に自己完結すんじゃねぇーよ」
「だって腐ったら嫌だし」
「そこに至るまでの経過がサッパリで、意味ワカンネーって。付き合ってんだから、コミュニケーションというモンをもう少し実践してくれよ」
ホント頼むぜ。
考えてることを垂れ流しにされるのもキツイが、ここまで意思の疎通が図れないってどうよ?
それなのに、指揮官として表に出ると途端に饒舌になるって卑怯じゃね?
「恋人同士だったら、わざわざ言わなくても、ツーカーじゃないのか?」
「そりゃ、長年の実績があった熟年夫婦なら可能かもしれないが、俺達がライバルの垣根を越えたのはつい最近みたいなもんだろが」
「俺はアンタが考えてること、大体分かるのに、アンタは俺のこと理解出来てないのか?」
「そりゃ、俺はオマエに全てぶつけてるからな。だけど、オマエって何も言わねぇ〜し」
「だって言うの面倒だ」
他の奴等よりは、この目の前のイキモノを理解してる自信はある。
こういう時は俺に甘えてるってことも知っている。
だけど俺は、もう少しマトモな会話を楽しみたいワケで、このフシギ生物の思考解析を研究したいワケじゃない。
「人間関係は受け身になってるだけじゃなく、努力して積み重ねていくもんだぜ?」
「わかった」
甘えてる時は、わりかし素直だ。
俺ってスゲェ我慢強くなったと思うぜ…
だが、スコールの視線が妙なことに気がついた。
俺の体をジーッと見て…
「受け身ばかりじゃ駄目なんだよな?」
「?…ああ」
「じゃあ…時々俺が攻めの方をやれば言いってことだよな?」
違う。
激しく違うぞ!!
END
仕事で手をジャキジャキに切ったことを思い出したので小ネタにw
アレはマジで視覚的に痛かったよ!!
切った瞬間は熱く感じるモンなんだねーorz