「大変困ったことになりました」
ガーデンの最高責任者であるシド園長が、目尻の下がった顔で告げる。
いつも困ったような顔をしているので、最近、誰も気にも留めない。
そうなったのも自業自得。 困った顔で面倒な事態を生徒に押し付けているコトが発覚してからだ。
当然、本日呼び出されたスコールとサイファーも『へぇ』ぐらいにしか思って いなかった。
「園長…俺達今、非常に忙しいのですが。茶飲相手ならシュウ先輩呼んでくだ
さい」
「っんとによ、気軽に呼ぶんじゃねぇ。ニーダもブリッジで暇そうにしてたぜ ?」
静かに散る火花。
ガーデンの最強実力者vs最高責任者。
戦闘能力であれば、この二人に敵う者はいないが、目の前の中年男は、金の亡者なノーグと長年付き合っていた得体の知れない人物である。
腹黒さで言えば、果てしなく真っ黒なガルバディアのカーウェイといい勝負か
もしれない。
「キスティス・アーヴァイン・ゼル・セルフィ、そしてリノアに、ある島へ潜
伏しているテロ組織の偵察に向かわせたのは知ってますね?」
「はい。あまり大した組織じゃないけど、運動不足解消に行ってくるって…」
「俺達に全部仕事押し付けていきやがってよー」
その依頼を受けたのは3日前。
テロ組織が、島に篭って何かをしているという情報がエスタから入ってきた。
場所はシュミ族の村に近い小島。
大した活動は出来ないと思うが、シュミ族が心配だから偵察に行って欲しいとラグナからの要請だった。
本来なら、この程度の仕事はSeeD試験にも使えないぐらい簡単なものだったが、魔女との戦いが終わってから書類仕事に追われた幼馴染達が、気分転換と運動不足解消を兼ねてこの依頼を強奪したのである。
ちなみに、スコールとサイファーは暇があっても無くても、隙があればバトルをしているので、運動不足には縁が無い。
その為、この2人に仕事を押し付け、幼馴染達は全員出払ってしまった。
何故かリノアまで…
まぁ、その方がサイファーにとっては好都合だったりするのだが。
今日は、恋人の、スコールの誕生日だから、誰にも邪魔されずにローマンティ
ックな夜を演出するつもりだったのだ。
部屋の冷蔵庫には、下ごしらえした材料が大量に詰まっている。
上等なワインも数週間前に購入済みだし、二人がけの丸テーブルもわざわざ買った。
ラッキーなことに本日晴天。
キャンドル1本だけを灯し、星空を見ながらスコールの誕生日を祝うのは究極のロマンティックではないだろうか?
サイファーの妄想がピンクタイムまで到達しようとした時、のほほ〜んとした声が幸せな思考を断ち切る。
「その彼らですが…」
「どうかしたのかよ?」
「昨日から連絡が途絶えちゃったんですよね〜。あはは。困りました」
「「“あはは”じゃねぇだろ!!重大事件じゃないか!!」」
だから大変困ったことになったと言ったでしょう?
と、別段慌てる風もなく、いつもの調子で怒れるSeeDの怒声をヒラリとかわす 。
まるで、その様は闘牛士と闘牛のごとく…
いや。ただ単に逃げ方が上手いだけなのかもしれないが、この2人が振り回されているのは、今に限ったことではない。
必死に湧き上がる怒りを抑えて、スコールが問う。
「…園長。捜索と救助は誰に?」
「生憎、SeeDは全員出払ってますからねぇ。しかもあ、あのメンツが捕らわれ たとなると…敵もかなりの戦闘力を持っているものと考えた方が良いでしょう
」
「となると、行けるの俺達しかいねぇじゃん」
「そうですねぇ」
やはり緊迫感の欠片もない返事をする園長に苛立ち、2人は必死に怒鳴りたいのを押さえる。
情報を引き出すには忍耐が必要。
子供の頃からそう指導されたが、それはあくまでも敵に対してであって、育ての親ではない…ハズだ。
「では、今すぐ分かるだけの情報と、周辺の地図。そして飛空艇の使用許可をください!」
「あ…乗り物なんですが、確かサイファー君は旧式セスナのライセンスを取得してましたよね?」
「あ?ああ…おい、まさか?」
「そう。そのまさかです。今ガーデンにあるのは、一昔前の旧式セスナしかありません」
「高速上陸艇は!?」
「残念ながら、全て点検に出しているんですよ」
緊急時に限ってタイミングの悪いことは重なるものである。
幸運だったのは、サイファーが小型セスナ機のライセンスを持っていたということだ。
旧式だろうが、何だろうが、この際目的地に着ければそれでいい。
「わかりました。残ったセスナで救出に向かいます」
「ヴィンター島か…この真夏時でも20℃いかねぇとこじゃねぇか」
寒がりのサイファーはガックリ肩を落とす。
だが、その割には声が弾んでいた。
スコールも瞳に生気が宿ったように輝いている。
何てことない。
二人ともただの戦闘馬鹿だった。
「しっかしよ〜、オマエの誕生日に依頼だなんて最悪だな」
「別に…俺はそんなに祝ってもらいたいわけじゃないから」
「オ・レ・がっ、オマエが産まれてきたことに感謝してぇんだよ!」
「そんなことより、連絡が途絶えた仲間のことが心配だと思わないのか?」
「アイツ等は殺したって死なねぇよ」
「アンタな…確かに、あのメンバーだったら最悪の事態にはなってないと思うけど…」
今回は最強(凶?)の魔女付だ。
異次元ワープとか平気でやってしまう女なのに、敵に捕まって逃げだせないなんてことはありえない。
きっと何か魂胆があるに違いねぇ。
2時間ほど飛んだとき、俺は異変に気付いた。
舵が急にロックされたみてぇにガッチリ固まって動かねぇ。
しかし、微妙な高度調整など勝手にやっている。
これはまさか…自動操縦!?
「サイファーどうした?」
「んー、舵が動かねぇんだ」
普通、恋人を安心させんなら大丈夫だと嘘を付くもんだが、コイツは男だし、なにより俺と同等の戦闘力と知識を持つ。
一緒に問題を片付けた方が効率的だ。
「動かない?俺が舵見てるから、アンタ中を見て故障場所を探してくれ」
「わかった。計器も何か変なんだよな。燃料全然減んねぇなんて有り得ねぇ…
」
俺はそう言いながらパネルのボルトを外し、中を覗いて絶句した。
計器の配線が渦巻く中心にファンシーな紙が貼り付けられている。
その内容は俺を脱力させるには十分だった。
サイファーはんちょへ
この機体は操縦不能になりました〜*
しっかり目的地まで自動操縦になってるから大船に乗ったつもりでドド〜ンと構えててね♪
ちなみに、自動操縦を切り替えても燃料ギリギリだからもうUターン出来ないのね〜。
諦めて、島に着いたらこの座標まで来ってね!
わかっちゃったと思うけど、今回のことは前から計画していたことなんだよ。
勿論テロ集団なんて嘘っぱち〜。
スコールはんちょの誕生日だからビックリさせようと思って。
きっと、はんちょ達は二人っきりでラブラブしたいかもしれないけどー、私達もお祝いしたいのねv
座標の場所には17時までに到着してくれればいいからサイファーはんちょは、好きなシチュエーションでスコールはんちょを誘導してね★
ただし、パーティ分のスコールはんちょの体力は残しておくこと!
あとは〜、17時前に来ちゃダメだよ?
色々準備があるからね〜*
あ、ちなみに、この機体は海岸に不時着するから衝撃に備えておいてね♪
BY セルフィ
そして、座標の書いた紙が別に1枚くっついていた。
目的の島にはあと10分も飛べば着くだろう。
燃料タンクを見れば、やはり残りあと少ししかない。
目的地に着くまでの量しか入れてなかったようだ。
どうやら、どこまでもキッチリ計算された計画のようだ。
ここまで来たら行くしかあるまい。
「スコール」
「何だ?治ったのか?」
「お手上げだ。このセスナはまもなく不時着する」
「…」
セルフィの手紙のことは言わない。
せいぜい目的地まで楽しませていただこうじゃないか。
地図では大きく見えない島でも、いざ降りてみりゃ結構なデカさの島だ。
1周す
るのに歩き詰めでも軽く1日はかかるだろう。
海岸から数十メートル進むと針
葉樹林が鬱蒼と茂り、先を進むのが困難そうだ。
セルフィが示したポイントはここから北東に約10kmの地点。
まあモンスターと戦いながらでも3時間で到着出来そうだ。
現在10時。
17時まで着きゃいいから、その間はスコールと2人っきりでムフフな時間を過ごせるってわけだ。
「落ちる前に、島の中央・・・北東あたりに木の切れ間があった気がする。敵が基
地を作っているならそこじゃないか?」
マジかよ!?
不時着する直前は機体が大揺れで自分のことで手一杯だったはずなのに、あの
状況で冷静に周囲を見てるなんて。
しかも北東と限定。
おっかねぇ奴。
北東といやぁ、ランデブーポイントと一致している。
奴等はそこで着々とスコールの誕生日パーティの準備をしているに違いない。
「…北東に取りあえず行ってみっか」
「ああ」
島の中心に向かうにつれ、苦労していた蔦類が無くなった。
ただでさえ北限の地で寒いっつーのに、杉の巨木が陽を遮っているせいで、8
月半ばも過ぎたというのに、ところどころにまだ雪が残っていた。
ひんやりとした静まった空気。
時折、微かな小鳥の声が聞こえるだけだ。
静か過ぎて、電子音に慣れた体には、かえって耳が痛てぇ。
杉の巨木の下に生えるシダを掻き分け、スコールは口もきかずズンズン突き進
む。
マズイ。
この勢いじゃ、指定の時間前に着いてちまう。
「おい。ちょっと休憩しようぜ」
「冗談だろ。仲間が危機に陥ってるかもしれないのに、こんな所で休んでられるか」
「救助する俺達が疲れてたら任務の成功率下がるだろが」
「俺は疲れてない」
「作戦だって必要だろ」
「場所が正確に特定してないのに、作戦立てたって仕方ないだろ」
うぬぬっ、手強い!!
これは強制的に2時間4千円な“御休憩”に入らせていただこうじゃねぇか!
「サ、サイファー?アンタ何か目つきが変だぞ?」
「どんな目だよ?」
「肉食獣…いや、盛った犬みたいな…」
「恋人に向かって、ずいぶんな言い方だな」
「でもアンタ、ロクなこと考えてないだろう?」
「くくくっ…そこまで言われちゃあ、期待に添えないとイケナイよなぁ?」
スコールがじりじりと後退する。
が、足元に何かを感じたのかスコールの動きが止まった。
そんな隙を逃す俺様じゃねえ!
俺は一気にスコールまでの距離を詰め、襲い掛かった。
「サイファー!待て!!後ろにあ…」
と、言った時にはすでにスコールを押し倒し、茂みの中へ沈み込み、勢い良く
落ちていく…。
…落ちる!?
押し倒した先には、シダの茂みに隠された大きな大穴。
斜めに開いた穴は、俺達二人を飲み込み、またシダの屋根に隠される。
後に残ったのは、穴から響く男二人の叫び声。
「だから待てって言っただろ!」
「俺にも事情があったんだよ!!」
「事情?現在の任務を忘れて欲望に走ることが事情か!?」
「う…そ、それよりコレ、どこまで滑り落ちんだよ!?」
「俺が知るか!垂直の穴じゃないだけマシだろ!」
俺達が落ちた穴は、幸運なことに急勾配ながら穴は斜めに下っており、しかも
触れる壁(?)はツルツルで怪我1つしていない。
そのかわり、どこにも掴まる事が出来ず、こうやって滑り落ち続けてるわけだ
が…
こんな長い距離で一定の広さと滑らかな岩石は自然では作られるはずがない。
これは明らかに人工物。
そして明らかに滑り降りる為の通路。
それが分かったところで、どこに行き着くかはわからねぇが、怪我をさせない
ような作りから言って危険な場所には辿り着かないだろう。
といっても、俺達は間抜けにも頭から落下している状態で、出口の状態によっては楽観できねぇ。
「少し明るくなってきたな。出口が近いかもしれない」
「“出口まであと何メートル”って案内板とかありゃいいのによ」
「?」
「?」
突然、音というよりも、頭の中に何かを感じた。
スコールも同じものを感じたのか、俺の顔を見る。
「今の…何だ?」
「オマエも何か感じ…」
俺が言い切るより早く、ギネス級の長距離滑り台の床が消えた。
それは、すなわち
「「出口だ!!」」
素早く受身の態勢をとり、一瞬のうちに周囲の状況を確認する。
危険は感じない。
気配も殺気もない。
それでもガンブレを即座に構えれるようにグリップを握りなおし、滑り台を勢
いよく飛び出した体を丸め着陸する。
数度転がりスピードを相殺させ体を止めた。
警戒しながらゆっくりと周囲を見渡し、俺は驚き、そして感嘆した。
スコールも驚いている。
「…すごい」
「遺跡にしては高度過ぎじゃねぇか?」
「今の文明以前に高度な文明があったって不思議じゃない」
「まぁ、そうだな」
改めて周囲を見る。
明らかに人の手で創られた建造物の中に俺達はいた。
巨大な石柱が円を書く様に立ち並んでいる。
中心には円形の台座があり、巨大なクリスタルのオブジェらしきものがあった
。
それが常に発光し、周囲を照らしている。
スコールが、何かに気づいたように地面に手を伸ばした。
突起がアチコチからでた変わった棒状のもの。
「…杖かな?」
「杖にしちゃあ邪魔なモンがついてるから違うんじゃねえのか?まさか、それ
をどこかの窪みに突っ込むと、元に戻れる橋が出てくるなんて言わねぇよな」
「…探してみる」
マジ?
俺は冗談のつもりで言ったんだが…。
探すっつったって、見たこともねぇような形状の建造物ばかりだ。
ルナティックパンドラの方がまだ分かり易い。
「これじゃないか?」
スコールが幾分もしないうちに、それらしきモノを見つけちまった。
俺が何か言うよりも早く、小さな穴に拾ったものを差し入れた。
その瞬間、中央にあったクルスタルのオブジェが激しく発光し、驚いたことに
何かの映像が映し出されていた。
「オマエな、俺の冗談真に受けやがって…もう少し用心しろよ。ここが崩れる
装置とかだったらどうするんだ」
「用心…アンタにそんなこと言われるとは思わなかった」
「けっ。俺はどうせ向こう見ずで猪突猛進な性格だよ」
「いじけるなって。何か起きても、アンタが一緒だったら大丈夫だと思ったん
だ」
ちょっと待て。 今、すっげ〜嬉しいこと言わなかったか?
つまり、俺とならどんな困難も乗り切れるってことで…それだけ俺のこと信用
してるってことじゃねぇか!!
うを〜〜〜!
今すぐ、ハグしてチュ〜してぇぞ!!
「スコー…」
スカッ。
思いっきり空振り。
俺の愛がこもったハグをアッサリかわし、スコールはクリスタルオブジェに向
かって歩き出す。
「…あの映像は何だろうな」
「…」
俺が感激してんのに、言った本人は俺なんかに目も向けず、映し出されている
映像に関心を寄せている。
「スコール。俺はもう少し甘い雰囲気を…」
「アンタはどうして、こんなよく分からない場所でそんな気分になれるんだ」
「オマエさ…無人島に漂流して二人っきりなんてシチュエーション、全く燃え
ないクチだろ」
「当たり前だ。食糧確保・その島のモンスターのレベルと属性・安全な寝場所
、そんなこと考えなきゃいけないのに、そんな状況でなんで燃えるんだ?」
「…もういいデス」
今更だが、こいつは筋金どころか超合金仕様の現実主義者だった。
こんなに幻想的でも流されることなく、目の前の問題に向かっている。
中心のクリスタルオブジェに向かって歩いているのも、映像から脱出経路のヒ
ントでも捜す為に決まっている。
最終的に行き着くのは行方不明の仲間達の救出であることは容易に想像つく。
はぁ…なんで俺はこんな固い人間、しかも男を好きになっちまったのかな。
そんな自分にほんの少しだけ悲しくなり、それでもスコールが見ているクリス
タルオブジェへ足を向けた。
「サイファー。この映像は、この星の過去…歴史だ」
「失われた文明の歴史か。オマエの親父さんとオダインが喜びそうだなぁ」
映し出されたのは大きな隕石の衝突。
それからの厄災。
星のチカラを吸い取って大きくなった軍産業。
黒い珠をめぐって戦う人間。
長い銀髪の黒いコートの男と、変わった髪形の金髪の少年が何度も戦うシーンが映し出される。
その合間に神秘的な顔立ちの女性が、白い球に祈りを捧げ…その直後に銀髪の男に長い刀で刺される衝撃的なシーンもあった。
音の無い断片的な映像だけだと何があったのかよくわからないが…
黒い珠は隕石を呼び、星を滅ぼすためのもので、白い珠は星を救うもののようだ。
今のこの世界には、そんな強力な擬似魔法はない。
「これは…この場所のコトは誰にも教えない方がいい気がする」
「俺もそう思うぜ。魔女の存在だけでも脅威なのに、こんな強力なチカラが存
在するとなりゃあ、どこの国も血眼になって捜すぜ?それこそまた戦争だ」
映像はまだ続いていた。
隕石を食い止めた後、何故か星の一部が地上から切り離され、上空に昇ってい
った。
1つの町と、奇妙な形の剥げた山。
星を離れたところで映像が終わった。
「おいおい。あの町はどこに飛んで行ったんだ?」
「どこかは分からないけど…たぶん、この星から隔離されたんじゃないのか」
「何でだよ?」
「さあ?ここには脱出のヒントはない。もう出よう」
古い石造りの遺跡から出ると、道らしきものが先に続いている。
中央には真っ白い巨木が密集して、天にその枝を伸ばしていた。
ただし、枯れているのか、根の様な枝が見えているだけだった。
岩山に囲まれた、草一本生えていない死んだ都。
草の替わりにあるのは驚いたことに珊瑚だ。
10mくらいの高さもある巨大な巻貝も何個か直立してた。
まるで南国の海の中にいるような景色だ。
「不思議な所だな」
「俺もこんな所見たことねぇぜ」
「サイファー見ろ。この巻貝、もしかして家じゃないか?」
巻貝の中は…マジで居住区だった。
歴史の中に残っていないくらい長い間放置されていたはずなのに、内装もしっ
かり残っている。
しかも、何を電源につかっているのか知らねぇが、明かりが点いている。
その中に、青い光を放った石が置いてあった。
何気なくそれに近づいてみた瞬間…
「!?」
「!?」
この遺跡へ落ちてくる時、出口あたりで感じたものと同じ。
頭の中へ直接語りかけてくるような感覚だ。
「サイファー。今のって…」
「エルが悪戯してオマエを俺にジャンクションさせた時の感覚に似てるぜ。なんつーか、ザワザワした感じがな」
「いや。俺には“言葉”に聞こえた」
「言葉?」
「意味がハッキリわかるワケじゃないんだ…たぶん意思なんだと思う」
「俺にはサッパリだぜ?」
「行こう。俺達に来いと言っている」
嘘を付いているようには思えなかった。
こんな時に冗談を言うヤツでもない。
でも、普通の状態じゃない。
まるで神憑りのような…
「寄り道していいのか?仲間が心配なんだろ?」
「彼らが大丈夫だと言っている」
「はぁ?彼らって、誰だよ?」
「古代種…もう滅びた一族。俺はその先祖返りらしいな」
「先祖ガエリって…オマエ、つくづく面白い経歴だよなぁ。親父さんが大統領だったり、あの魔女の騎士の映画俳優だったり…」
「煩い。先祖も父親も俺の意思で決めたんじゃない」
「で、どこに行くんだ?」
「こっちだ」
中心にあった真っ白い木が密集したところに、スコールは迷い無く進んでいく
。
木のトンネルを潜り、抜けた先には泉の中にやはり巨大な巻貝の建物が1つ立っ
て…というか建っていた。
今度は居住区ではなく、地下へと降りる穴が開いている。
「降りるぞ」
「でも、ここってよぉ、泉の中心にあるんだから、降りたら水の中なんじゃねぇのか?」
「大丈夫…だと思う。行けなかったら戻ればいいことだし」
「まぁ、そうだな」
穴の中は地面というか、足場・天井・壁を全てガラスのような透明なもので覆い、水が入らないようになっていた。
壁の向こうは水。
水族館の水中トンネルなんてレベルじゃねぇ。
長い長い透明な通路が下に向かって続いている。
ずっと下のほうには、最終地点なのか建物らしきものが見える。
スコールに警戒の緊張がないということは安全なんだろう。
かなり落ち着かないが、俺は黙ってスコールの後をついて行った。
通路が終わり、その場所に出たとき俺は驚愕で声が出なかった。
通路と同じく全てが周囲がクリスタルで覆われたドーム。
優美な曲線を描く長い通路と階段。
地上から差し込む光がクリスタルに反射して、まるでこの世の世界と思えないくらい綺麗だった。
中心にあるのは東屋もしくは祭壇だろうか。
その円形の台座と通路の周囲には清らかな水が流れ、どこまでも深く透き通っている。
夢でも見てるんじゃないかってぐらいに幻想てきな光景だ。
「サイファー、口が開きっぱなしだ」
「あ、当たり前だろ!!こんなスゲェ所初めてみたんだからよ!」
「ルナティックパンドラだって似たようなモンだったろ?」
「いいや!アレは近代的でロマンを感じなかったが、これは失われた都だぜ!?ロマンティックじゃねぇか!!」
「アンタ、またソレか…それ系のハナシはパスだって何度言ったらわかるんだ
?」
「いいから、早く中心まで行こうぜ!」
スコ−ルが呆れたように俺を見てるが、こんなの見せられて興奮しねぇやつは
いねぇぜ!
あ、目の前にいたか。
コイツの場合は例外中の例外だからなぁ…。
中心に辿り着いたが、特に何があるわけでもなかった。
「ここは何に使ってたんだろうなぁ?」
「祈りを捧げる場所…あの祭壇で最後の古代種は死んだ」
ああ、あの映像。
刺されて死んだ女が古代種だったのか…
と、ちょっとシンミリしている俺の前で、スコールはいきなり服を脱ぎ始めた
。
「お、お、お、お前!!ここでヤルつもりか!?いくら俺様でも心の準備っつーもんが!」
「アンタ1度死ね。…ちょっと潜ってくるだけだ」
「潜るって、このクソ寒い所で素潜りする気なのか!?」
「その為に呼ばれたんだ。あの…白マテリアを俺の手に委ねるために」
白マテリア?
あの女が殺された時に、この水の中へ落ちた珠のことか?
「あんなもん、ドコまで落ちたかわかんねぇじゃないかよ」
「近くにある。俺にはわかるんだ」
ダメだ。
今のコイツは止められない。
仕方ねぇな、今回は俺がフォロー役に回ってやるさ。
下着1枚で水中に潜ったスコールを見守り、ため息をついた。
オカシイ。
こんなハズじゃなかったのに。
あんな所に穴がなければ、今頃、青姦の真っ最中で。
ぜってーアイツ、抵抗するだろうから、強姦テイストも入って燃え燃え状態だ
ったハズなのに…。
俺が悲嘆にくれているところに、スコールが水中から戻ってきた。
手には見つけた白い珠を握っている。
だが、やはり寒いのか、唇は紫色だ。
服を手早く着たスコールを俺は引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
寒さで体が小刻みに震えている。
「何する…」
「冷え切ってるクセに無理すんな。こうした方が体温戻るの早ぇだろ」
「…悪いな」
「なにも悪くねぇよ。俺達恋人同士だろが。どうせなら、すぐに熱くなる方法
もあるぜ?パンツだってグショグショじゃねぇか」
濡れてんのは水に潜ったからだが、俺はワザとからかってみた。
ついでにベルトを緩め、濡れた下着の上からスコールのモノを指で刺激を与え
る。
「や、やめろ!ここでやるのだけは絶対に嫌だ!」
「ここで女が死んだからか?傭兵業のクセして、んなこと気にしてんのかよ」
「古代種に…あの煩い意思に語り掛けられながらじゃ勃つはずないだろ!」
「…死んでるとはいえ、公開SEXか…」
「だから止めろって!」
「くくく…逆に燃えるぜ」
「は!?アンタ何言って!?…ちょ、ちょっと待て!」
スコールを押し倒し、暴れる体を押さえつけ、体重をかけてのしかかる。
必死に暴れてるが、冷え切った体では思うように動かないのか、いつもより動
きが緩慢だ。
冷たい唇をこじ開け、舌を滑り込ませる。
俺の熱を分け与えるように、いつもより丹念に咥内を蹂躙する。
舌を絡め、舌裏の筋を舐め上げると、腕の中でスコールの体が震えた。
寒さで震えたわけじゃないのは確かだ。
冷たかった頬に赤みがさして来た頃には、スコールの抵抗は治まっていた。
「まだ、したくねぇか?」
「…ここまでやって、アンタだってもう止まらないだろ…」
「まぁな。一応確認しただけだ。俺には古代種のコトバが聞こえねぇからな」
「もう存在しない人達だし…気にしないことにする」
まさか、こんな所でコトに及ぶとは思ってもいなかったが、どんなラブホテルよりもムード満点。
ベットはねえが、この際目を瞑ろう。
寒くて、ムードん欠片も無い原生林の中で青姦するよりはずっと良い。
もう1度スコールに口付けると、スコールの腕が俺の首に回ってきた。
では、イカせて戴きます!!
と、俺が張り切ったとき、
パカッ
スコールの真下にパックリと大穴が開いた。
そう。あの時と同じだ…
「サイファー…やっぱり古代種はココでイチャつくのは許さないみたいだ」
「チクショウ!!小姑かよ!!死人は俗世に口出しすんなーっ!!」
俺とスコールは抱き合ったまま、またもや頭からどこかに滑り落ちていく。
滑る…滑る…滑る
ひたすら滑る
そしてまた、頭に何かが響いた…ってことは出口が近い。
今度はこの先に何かの気配を感じる。
敵じゃあない。
この気配は…
スッポリと穴から勢い良く飛び出し、降り立った場所は―――――
「わ!はんちょ達、どっから来たの〜???」
「そっちには道なんか無かったよなぁ?」
セルフィとゼルが驚いた顔で俺達を見ている。
もしかして、ここはランデブー地点なのか?
は!
しまった!
コイツに任務のことが嘘だって言ってねぇ!!
「さっすが、時間通りだね!」
「じゃあ早速始めましょう」
「クラッカ〜、クラッカ〜」
現・魔女と同い年の女教師は俺達の出現に動じず、ロンゲの狙撃主は仲間にク
ラッカーを配っている。
「スコール…実はな」
『スコール、お誕生日オメデトウ!!』
5個のクラッカーが同時になり、ヒラヒラと紙が俺達の周りを舞う。
「途中からだけど知ってたよ。ミンナが無事だって教えて貰ったときに、パー
ティの準備をしているらしいってコトも伝わってきたから」
「そうだよな…そうじゃねぇと、あの時絶対オマエがOKするはずねぇよなぁ
」
「祝ってくれてありがたいが…戻ったら全員覚悟しろよ。仕事が山のように溜
まってるからな!」
園長に仕事を全部預けてきたが、あの園長に処理の能力は無いに等しい。
逆に増えている可能性もある。
いや、増えているだろう。 あの園長は、どんな依頼でも断らないのだ。
リノアの時もそうだったが、依頼主の話を聞いているうちに情に流され、家の
下に潜り込んだヘビの退治まで受けてしまう。
だから、今までそんな依頼を受けさせないように、必ず誰かがガーデンに残るようにしていたのに…
「ねぇスコ〜ル。どうでもいいけどぉ、いい加減“社会の窓”閉めたら?うふふv見えちゃってるよv」
「!!!!!」
ファースナー全開。
しかもサイファーのせいで、下着から俺の分身が少しはみ出ている。
そうだ…サイファーと途中までした時に床に穴が開いたんだ。
しかも下着が濡れていて、これじゃあまるで…
ショックで呆然としている俺に代わって、サイファーが俺のファースナーを上げた。
ついでにベルトもしっかり締めて、「テメェら、俺のモン見てんじゃねえ!」
と叫んでいる。
キスティスが「ちょっとアンタ達、どこでナニやってたのよ?」と呆れている。
リノアは怒りまくり、変な魔法でサイファーに攻撃し、俺は残った男性陣に
よくわからない慰めの言葉をかけられた。
なんで、こんな目に…
「最悪だ…黒くなれ!!」
俺の18歳の誕生日は…こうして最悪の幕開けで始まったのだった。
うううっ
やっと出来た〜!!
停電・左目のアレルギーでちょっと諦めかけちゃったよ。
しかもテキストファイルの保存異常なのかHP作成ソフトのエラーなのか、メモ帳からテキスト貼り付けると文字化けが…
何でなの〜!?
仕方ないからHTMLで貼り付けたんだけど、今度は改行部分に半角スペースが出現。
なんかもう…(号泣)
今回の外伝内容は、ホシウタ本編にかなり布石打ってます。
これやらんと新章に行けないので…
これでやっと彼等が出せるぞvvv
2003.0823