| Hole |

更新日:2002.02.26

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「これも…これもだ」



最初、何気なく1つに目がいった。
気になって他のも見て見たら、どれもこれも同じ事態に愕然とする。



「なんだコレは!?」



その物体をムンズと掴み、持ち主の元へ押しかけた。
その張本人はソファーに腰掛け、月間武器を読んでいる。時刻は22時。いつもならこの時間、シャワーを浴びる前に床に転がって腹筋運動・腕立て伏せなどしてるハズだが、珍しいこともあるもんだ…
あぁ!俺が言いたいのはそうじゃなくて!
手に掴んだものをサイファーに投げつける。突然、読んでいる本の上に靴下が降ってきて驚いたように顔を上げた。



「サイファー!!穴の開いた靴下履くのやめろ!!」

「ああ?」

「見たら、ほとんどの靴下に開いてるじゃないか!」

「あ、それ全部新しいぜ?靴下って1回履いただけだけで穴空くだろ?」



サイファーが不思議そうな顔で俺を見ている。
1回履いただけ?
確かに、この靴下は履き古した感じがしない。



「サイファー。靴下は普通1回履いただけで穴は空かない。原因はアンタにあるんだ」

「俺?その布ッキレが俺の運動力についていけねェだけだろ?…!?うわぁっ!!ス、スコ〜ルゥ〜???」



俺は反論するサイファーの隣に座り、片足を掴んで俺の膝に引っ張っり上げた。意表を突いた行動にサイファーはあっけなくバランスを崩し、ソファーの上で転がった。変な風に転がったせいで、起きあがれずにバタバタもがいているサイファーを無視し、靴の紐を解きにかかる。靴をもぎ取り、現れたものは…やはり、黒い靴下のつま先から親指がピョッコリ顔を出していた。



「サイファー…」

「コ、コンニチハ〜」



俺の視線を感じたのか、ピコピコと器用に親指を曲げる。



「馬鹿か、あんた?」
「言っとくが、それも今日降ろしたてだぜ!?」
「確かに新しい。だが、アンタこれじゃあ穴が空いてあたりまえだ!!」
「なんでだよ?」
「爪!!なんでこんなに伸ばしてるんだ!?5mmはあるぞ!!」
「…だってよぉ、んなトコ1人で切れねぇじゃん」
「は?…ちょっと待て。じゃあ、今までどうしてたんだ?」
「ああ、風神に」



ムカッ
椅子にふんぞり返って座るサイファーの爪を甲斐甲斐しく切る風神…何だか、ご主人様とメイド的なその構図を想像したら気分が悪い。
たとえ、風神と恋人同士でなかったとしても腹が立つものは立つのだ。
俺はポケットの中に忍ばせていたものを取り出した。本当は、本人にやってもらうつもりだったが、そんな話を聞いたら予定変更だ。思いっきり穴の空いた靴下を足から抜き取り背後に投げ捨てた。



「おい!?」

「俺が切る」

「っ!!…待て!待て!!待て!!!」



サイファーは俺の手から足を引っこ抜いた。
何故か首も耳まで真っ赤…
これは意外な反応だ。
サイファーの、こんな反応は始めて見る。



「爪切るだけだ。何で風神はよくて俺は駄目なんだ?」

「だってよぉ…心の準備っつーもんが…それに、恋人にやってもらうのって恥ずかしいだろ?」

「アンタ…毎晩、俺にあれだけのことして、よくそんなセリフ言えたな」


今回に限らず、ほったらかしにしていたせいで、サイファーの爪はずいぶんぶ厚くなっている。その爪を強引に切っていくと、自分より一回り大きな足は、羞恥のせいか少し熱かった。
俺だって毎晩恥ずかしい思いをしてるんだ。
これくらいやったって、まだまだオツリが来るくらいだ。
それに、もう少しサイファーの恥ずかしがる顔見てたいな…滅多に見れるもんじゃないし…。
チラリとサイファーを見る。
まだ顔を赤くして、不貞腐れたように視線を落としている。
カ、カワイイかも…
俺は、ちょっとだけ悪戯心を起こした。
爪を切ったばかりの親指に顔を寄せ、口に含む。ほんのり温かい指に舌を這わせた。そのまま丹念に舐めまわす。



「わ!スコール、やめっ…うっ…」

「サイファー、気持ち良いか?」

「馬鹿言ってんじゃねぇ!!離せって!!」

「アンタ、俺のもっと恥ずかしい場所舐めてるクセに」

「それとコレとは…くそっ…」



舌で指の形をなぞり、他の指も1つ1つシャブっていく。時折、ピクリと掴んでいる足が震えた。必死で声を押さえているのか、呼吸が荒い。
俺ってもしかしてテクニシャン?指だけでこんなにグッタリして…
グッタリ?
ここで異変に気付いた。
そもそも、サイファーがこれくらいのことで恥ずかしがるか?
いや。便乗して最後には、逆に俺がヤラレてるハズだ。
赤い顔・・・俺の口の中より熱い足の指…
この状況から考えられるのはただ1つ。



「サイファー!アンタ、熱があるだろ!!…サイファー?」



返答がない。
それどころか、意識もない。
喘いで呼吸が乱れているとばかり思っていたが、どうやら違ったようだ。
案の定、触れた額は異常に熱かった…。












カドワキが呆れながらサイファーに薬を打つ。
体温計は壊れたんじゃないか?というくらいの温度を示した。
41.1℃
グッタリして当たり前どころか、非常に危ない体温だ。



「指揮官。何でこんなになる前に、この馬鹿は私の所に来なかったんだい?」

「見た目は何も異常がなかった。夕食はいつも通りの量を食べてたし…もしかしたら、サイファーも気付いてなかったかも…」



あれ?と思ったのは、サイファーが本を読んでいた時で・・・
でも、ココまで熱があがるなら、日中もそうとう熱が高かったハズだ。それなのに普通に仕事して、普通にバトルして…一体どういう体してんだか。



「全く…“馬鹿は、風邪を引かないんじゃなくて自覚がないだけだ”って、誰が言ったか忘れたけど、この子にはピッタリだよ。スコールが気付かなかったら朝には手遅れだったかもねぇ」

「つまり、サイファーはニブイんですか?」

「そういうことだね。これから気をつけておあげ。このままだと何か大病にかかっても自覚ないままポックリいっちまうよ?」

「こ、心がけます…」



言えない。
俺がさらに熱を上げるようなコトをしてたなんて…

サイファーは次の日の朝、ケロリとした顔で目を覚ました。
恐ろしいことに、体温も平常だ。
いつもの日課をこなし、部屋に戻る。今日はちゃんとシャワー前に運動をしていた。ホッとしながら、洗いものを洗濯機に放り込む。が、またしても見つけてしまった。
サイファーの穴空き靴下を。

そういえば、昨日は片方だけ切ったっけ…
俺は爪切りを片手にサイファーのいる部屋に向かった。



「サイファー、足出せ」


腕立て伏せをしていたサイファーがニヤリと笑う。
そうだ。これがいつもの反応だ。



「いいぜ〜。ついでに昨日の続きも希望するぜ」

「…覚えてるのか?」

「バ〜カ!んな美味しいコト、忘れてたまるかよ」



残った足の爪をプチプチ切る。サイファーが嬉しそうにそれを見たいた。昨日とは全く正反対の反応だ。



「やっぱり、ミミカキとか爪切りっつーもんは、母親か秘書か奥さんにやってもらうモンなんだよな〜」



サイファーの何気ない一言が胸に突き刺さった。



「…ホラ、もう終わった。俺は行くぞ!美人の秘書やカワイイ奥さんでなくて悪かったな。やってもらいたいんなら、俺なんかに構ってないで早く奥さんになる女子を捜すんだな!」

「何だよ?何でいきなり怒るんだよ!?」

「煩い!!」


頭にきた。
俺はサイファーに爪切りを押し付け立ち上がった。
やっぱりサイファーにとって、俺とのコトは遊びだったということだ。
秘書なんてガラじゃないし、女じゃないから奥さんにもなれっこない。母親なんて、逆立ちしても最初から無理だ。



「待てって!」



サイファーが背後から俺の腹に腕を回し、自分の腕の中に俺を引き込んだ。
その勢いを利用して、倒れこむようにソファーへ沈み込む。あっという間に仰向けにひっくり返され、身動きが取れないように押さえ込まれた。
ソファーが2人分の男の体重で、ギシリと大きな軋んだ音を立てる。



「離せ」

「怒るなよ。俺の言い方が悪かった」

「言い方?」

「スコール。奥さん…じゃちょっと変だな。俺の人生のパートナーになってくれるか?」

「…俺は男だぞ。法的にも無理だ」

「法律なんか知るかよ。そんなモンが邪魔すんなら、無人島にでも行っちまえば関係ねぇ。今、俺達の心にあるものが真実だろ?」

「…」

「スコール?」

「…」

「返事は?」

「…この部屋に“ミミカキ”ないんだ…綿棒でもいいか?」

「全然OK!!」


サイファーが抱きしめる腕に力を込める。
それも力いっぱいに。
オーディンですらぶった切る男の腕力で、コレをやられたら、たまったもんじゃない。肋骨が悲鳴を上げる。



「くるし…」

「あ、悪ぃ。つい嬉しくてな」

「その…無人島のことだが、俺にアテがある」

「そうか?じゃあ、オマエに任せた」

「ああ。まかせてくれ」



俺達は2人きりでヒッソリと誓いのキスを交わした。

数ヶ月後、バラム・ガーデンの指揮官&補佐官が突然辞表を出し姿を消した。世界中で彼等の捜索にあたったが、ついに誰も探し当てることは出来なかった。



「スコール!!確かにここも無人島だ!でもこれじゃあ危険過ぎてイチャイチャできねぇぞ!!」

「ゴチャゴチャ抜かすな!アンタ、俺に任せるって言っただろ。文句つけるな!!」



瀕死のメルトドラゴンが口論する俺達に向かってブレスを仕掛けてきた。シェルが効いているものの、熱風を浴びた髪がチルチリと焦げる匂いがする。
キレたサイファーが“始末剣”でトドメを刺した。



「これじゃ、モンスター島だろが!」

「拗ねるなよ…別に毎晩のエッチが大変だからって、アンタの体力を削るためにこの島を選んだわけじゃない」



サイファーがジト目で俺を見ている。
確かに、それも少しはあったが、俺の体力も削れては意味がない…



「スコール…」

「アンタだって、この島が危険だって言っただろ?それが狙い目なんだよ」

「はは〜ん。読めてきたぜ。確かにこの島に好き好んで近づくヤツはいねぇよな〜?」

「俺ですら初めてこの島に降りた時死にかけたんだ。今でもココに来て生きて帰れる人間は10人もいないはずだ」

「っつーことはだ。こいつ等さえ始末してしまえば、誰の邪魔も入らずイチャイチャ出来るんだな?」



俺は無言で頷く。他の島では、いつ誰が来るともわからないからな。
この先は自分で口にするのもこっ恥ずかしい。



「んじゃ、早くこの島を俺達のパラダイスにする為に、モンスターをとっとと根絶しにすっか」



俺達って、きっと傍から見ればバカップルだよな…
木々の間から覗いた空を見る。
その空を何か黒い物体が横切った。
地面に突き刺したガンブレードを引き抜く。



「サイファー!来たぞ!!」

「おう!」



そして俺達はモンスター狩りに明け暮れる。
自分達の楽園を築くために。




END



あとがき

ささら様に贈る25000HITきりりく小説です〜*
“サイファーくんのゆでダコ 状態”をご所望でした。こんなモンでいかがでしょうか???っつーか“スコ×サイ”っぽい気が・・・(滝汗)
何故に靴下の穴から地獄に一番近い島までぶっ飛んでしまったのか自分でも首を捻る。暴走コンビ、ゆーこと聞いてくれないのね…。
いつものコトだけど(^^;)

ちひろ

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