| 一粒 ・・・|

更新日:2001.02.18

*****

バラムの小さなコンビニで、俺は「ソレ」に釘付けになった…。


そもそも俺は、今までこのコーナーには立ち寄ったことがなかったが…
運悪くバラムに出る時セルフィーに捕まってしまったから仕方がない。


「スコールいいんちょ〜!バラム行くならポテチ買って来て〜*」

「…わかった」


特に断る理由も無かったから頼まれたが、俺を気軽に使うのはセルフィーとキスティスぐらいだ。


自分の用事を済ませ、頼まれたものを買いにコンビニへ行ったのはいいが…


「なんでこんなに種類があるんだ?」


袋モノ・筒に入ったモノ、しかも何種類も違う味がある。
てっきり「ポテチ」って商品名があると思ったのに…一体どれなんだ???

気が付けば、20分くらい立ちつくしていたようだ。
心配したバイトらしい店員が声をかけてきた。


「お…お客サマ、何かお探しですか?」

「ポテチを探していたんだが、種類が多くて悩んでいる」

「え?」


店員は一瞬目を点にした。

仕方ないだろ!今までこんなものに縁がなかったんだ!!

ムッとしたのに気が付いた店員は、すぐに笑顔で応対してきた。


「これなんかが、一般的だと思いますが?」


と言って差し出したのは袋に入った塩味なモノだった。

一応礼を言い、レジに向かう途中「ソレ」が視界に入った。



<ひとつぶ300メートル>



「ソレ」は筋肉質な男が走っている絵が印刷された、オマケ付きのキャラメルだった。

一粒300メートルってどういう意味だ?
まさか、食べるとパワー300メートル全力疾走できるだけのスタミナがつくってことか??

妖しげな成分が入っていないか成分表を見てみたが、全て一般的な栄養分だ。
もう一つのキャッチフレーズも気になる。



<おいしくてつよくなる>



強くなる!?
コレは、そんな奇跡的な力を持ったキャラメルなのか?

スコールの横で店員がまた声をかけてきたが、全く気が付かない…。
完全に自分の世界へ旅立ってしまっていた。
10分経過…。



もし、これが本当なら…戦闘訓練が長引いてもサイファーに勝てるかも…

実力は変わらなかったが、体力差でどうしても長時間の打ち合いになると負けてた。
体質的に筋肉がつきにくいものは、どうしようもない。
それでも、G.Fで体力面をなんとか補ってきたが、副作用で想い出を忘れるのは痛かった。

「コレ」だったら、そんな心配はなさそうだし…。
べ…別に、負けて悔しいってから「コレ」が気になっているんじゃないぞっ!
俺はこんなモノが無くても、サイファーに勝てる!!
ただ、こんな画期的な食べ物だったら、ガーデン推奨食品にするべきか考えているだけだ!
この値段だったら、幼年部にも手が出せるし、小さいから携帯しても邪魔にならない)
…だから、俺で試すだけなんだ!!
これで…


「お客様!!」


何度も呼びかけても反応がないスコールに店員もキレたようだ。
無理もない。
キャラメルの前で立ち止まってから1時間が経過していた。
お菓子を買いに来た子供や主婦が迷惑そうな顔をして見ている。
営業妨害もいいところだ…。
文句を言おうと店員は口を開いたが、スコールが振り向いた瞬間、怒りが吹っ飛んだ。

スコールは全開で幸せそうに微笑んでいた。
はっきりいって、このフェロモン大放出のこの微笑みは凶器だ。
その場にいた老若男女かまわず機能停止に追い込んだ。
それにかまわず、スコールはレジに向かい手にしたものを差し出した。



「コレの請求書をバラムガーデン宛に送ってくれ」



スコールが外出から帰って来た。


「すぐ帰る」


と言ってた割にはけっこうな時間たってるぞ?


「おかえり」


俺はスコールを抱きしめ、軽くキスをした。
そのまま先に進もうと腰に手を回そうとした手が空振りする。


「サーファー訓練に行こう!!」

「お前、突然だな。俺としては違う汗かきたいんだが…」

「そんなもの後でもいいだろ。俺は訓練がしたいんだ!」

「そんなものって…わかったよ、付き合えばいいんだろ?」


何故か意欲的なスコールに不信を抱いたが、俺達は訓練場に向かった。





スコールは最初から全力で向かってきた。


「おいおい、そんなに飛ばして大丈夫なのか?」

「大丈夫だっ!あんたも真面目にかかってこいよ!」


そう言いながら、いつもより強い打ちこみがきた。
外出先で何かあったのか…?

スコールの無茶な戦い方は、やはりすぐにスタミナが切れたらしい。
いつもなら軽くかわせる足払いをまともにくらって転んだ。


「っ!!」
「なにやってんだよ、お前は?」
「…やっぱりアレは嘘だったんだ…。」
「なんのことだ?」
「…別に…。」


少し拗ねた顔でスコールはフイッと横を向いた。



「外で何かあったのか?」

「あんたには関係ないだろ」

「そうか…俺はそんなに頼りにならないのか?お前の悩みを聞いてやることも出来ないのか?」

「!…そうじゃない…違うんだ…俺が勝手に勘違いしてただけで、何かあったわけじゃない」

「そうならいいが、何処に行って来たんだ?」

「本屋と…コンビニ」
「お前がコンビニ行くってめずらしいな」

「そ、そうか?…俺だって時々行くさ…それよりも心配かけて済まなかった」


謝罪のセリフと共にスコールの唇が重なってきた。
なんか、コイツ今日は変だぞ?どうしたんだ?


スコールのキスは…何故かキャラメルの味がした。



どうにか、ごまかせたよな?


あんな風に心配されるのは心が痛んだが、真相を話すわけにはいかなかった。


ばれたら絶対にバカにされる!!
これは一生俺の記憶に封じておく…絶対にだ!!



だが、スコールは忘れていた。
サーファーが自分の補佐をし、最初に郵便物に目を通すことを…


ガーデン宛に届いたコンビニからの請求書をサイファーが見たのは、それから2日後だった。
その日、サイファーが爆笑しながらコンビニへ支払に行く姿が目撃される。



お〜しまい★


あとがき

高校の生物の先生から聞いたハナシを思い出して書いてみた。
陸上で1000mのタイム計るときに< グ●コ >のキャラメルを4つ食べて全力疾走したら倒れたとういう本人体験談が数年たった今でも忘れられないよ。
真面目に信じていたんだと。「ひとつぶ300m」を…
(^_^)
なかなか楽しい先生でした。



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