| ホットファーザー |

更新日:2008.10.13

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俺だってよぉ〜、まさかこんな結果になるとは思わなかったんだ。
たとえどんな出来でも、スコールの手料理を食べられたら満足だった。
でも…人間には生理的に絶対駄目なものってのがあるらしい。

カレーの具にモルボル…

まさか愛息に、モンスターの肉を食べさせられるとは、誰が思うだろうか?
いや、誰も思わない!(涙)

俺は…どうしてもモルボルだけは駄目なんだよ。
あの姿を脳裏に思い浮かべただけでサブイボが。
ほ、ほら、見てみろ!
想像したらまた出てきたじゃないか!

実はな…昔、連れ去らわれたエルオーネを追いかけている途中で、発情期のモルボルが勘違いして、俺を巣の中に連れ込んだことがあるんだよ。
濃厚なクサイ息をかけられて頭はピヨるし、身体は動かないし。
そしたら、あの何本もある触手で全身を弄られ、何日も散々嬲られ…
どうやって逃げ出したかあまり覚えていないが、今こうしているのは本当に奇跡だと思うぞ。
あの直後からだよ…痔を患うようになったのは。
つまり、そういう場所もあの太い触手でピーッされたんだよ。
きっと、コト細かくあの出来事を自伝にして書いたら、触手好きのエロマニアには、大ブレーク間違い無しだ。

いや…今はそんなコトどうでもいいか。
問題は昨日、スコールが作ったカレーを食べて、あろうことか目の前でリバースしちまったってことだ。
イマイチ表情に乏しい息子は、どう思ってるだろうか?
かなり強引な手法で作ってもらったことは自覚してるんだよ。
なんつーか、その…金の力?
だってよぉ、血の繋がりはあっても、絆っていうのが全くないんだ。
息子という存在を知ったのも最近だしな。

俺だって努力はしてるんだぜ?
でもな、携帯に電話しても怒って切られるし、どうにもならないだろ?
残る接点は、ガーデンに指名で依頼しかない。
しっかしビックリしたな〜!
スコールはSeeDの中でもTOPクラスのランクAで、依頼料もハンパないんだってな〜!
さすが俺の息子!
レインにも似て美形だし、きっと女の子にもモテんだろな〜。
で、その依頼料だが、シド園長が

『スコール君は本来なら休みですので、割り増し料金にになりますよ?』

と言うから、いくら払っても構わない!って俺は言ったんだよ。
そしたら提示されたのは1億ギル。
まぁ、ちょっと高いけど、それくらいなら何とかなる。
勿論、公的資金になんか手をつけないぞ!
俺はクリーンな大統領なんだ!

そう、俺は大統領。
いろんな国の大統領に会っても、大勢の国民の前に出て演説しても、もう足なんかツラないぜ!
どんな人間に会っても、全然平気な男なんだ。

だから大丈夫。
この扉を開き、たった1人の息子の前に出ても、普通に会話が出来る!
でもよぉ…
昨日の今日で、何から話したら良いだろなぁ〜?



「えーと…大統領?早く中に入りませんか?もうかれこれ1時間は、この指揮官室の前にいますよ?」


シド園長が控え目に、中に入るように促す。
時計を見れば…たしかに1時間以上こうやって扉の前に立っている。


「シド園長…スコールは昨日のこと怒ってるかな?」

「大丈夫ですよ。反省するのはスコール君の方ですから」

「そうかな」

「あまり緊張しなくても平気ですよ。中にはスコール君だけじゃなく、孤児院で一緒に育った幼馴染達もいますから」



よ、良かった〜!
中にいるのはスコール1人じゃないのか!
それなら…なんとかなるよな?
俺は思い切ってノックし、扉を開けた。

中にいたのはスコールと、サイファー君。
そしてアルティミシアを倒す為に、エスタに来ていた数人の男女。
そうか…みんな一緒に育った仲間だったのか。



「何の用だ?」

「スコール…仮にも父親なんだからよ、もうちょっとソフトに」

「そうだな。仮にも依頼人だしな。で、大統領。今日はどのような用件ですか?」

「え、えええと、そのな…あたた!足がつった!!」



スコールが溜息をつく。
ああ…やっぱり怒ってるし呆れてるよ。
心なしか、グッタリして目の下にクマが…
もしかして落ち込んで眠れなかったのか?
たかが料理でライバルに負けたくらいで、こんなに憔悴するとは…



「なぁスコール。料理が出来なくても落ち込まなくてもいいぞ。料理が得意な可愛い嫁さんを見つければいいんだ」

「嫁…」

「そうお嫁さん。あー…スコールはあの魔女の子と付き合ってたか。カーウェイの娘さんならお嬢様育ちで無理っぽいかな〜」



スコールがスッと椅子から立ち上がり、サイファー君の腕を引っ張って俺の前に連れて来た。
そして…



「紹介する。料理が得意な嫁、サイファーだ」

「ウィーッス。料理が得意な嫁サイファー・アルマシーだ」

「…2人も冗談が上手いな〜」



サイファー君がスコールを引き寄せ…
唇と唇が重なった。
スコールも抵抗せずに、深く唇を合わせている。



「〜〜〜〜〜!??」



少し長めの口付けが終わり、目元を少し赤くしたスコールが口を開いた。


「わかっただろ。冗談は言ってない」

「ま、ベットの上じゃ嫁役は逆転するけどな☆」



シド園長が、慰めるように俺の肩を叩く。
園長…知ってたのか。
そこにスコールがトドメの一撃。


「言っておくけど、サイファーとの関係に、あれこれ父親臭い説教なんかしたら、たとえ仕事でも二度と口きかないからな」

「まぁ、お義父さん。そん時は俺がちゃんと通訳してやるから心配すんな」



息子がホモ…息子がホモ…
こんなに綺麗だから仕方ないのか?
それなら初めから女の子だと思えば…
それはそれで、まだ嫁に出したくない〜〜〜〜!


「あーあー、ラグナ大統領、放心しちまったぞ。いきなりアレは衝撃デカイって!」

「うっせーなチキン!スコールは実の親より俺の方が大事なんだってよ」

「俺…そんなコト言ってない」

「言ったぜ〜?俺にしがみつき…グフッ!」



無言でスコールの拳が、光速でサイファーの鳩尾に決まる。


「すっごいね〜。目の前で手を振ってもこのフリーズ解けないよ〜*」

「突然降って沸いた優秀な息子に、思いっきり舞い上がってたものね。ちょっと可哀想かも」

「どうする〜?ラグナ大統領の休暇は今日までなんだろ?そろそろ帰らないとラグナロクでも間に会わないだろ?」

「こんなの、揺すったら気がつくだろ」


だが…
スコールがラグナの両肩を掴み、乱暴にガシガシ揺らしても駄目だった。



「これで駄目なら…」



そう言いながら皮手袋を脱ぎ、思いっきり振り上げ…
慌てたサイファーに止められた。


「それは待て。いくらなんでも張り手はマズイだろ」

「駄目か?確実に目が覚めるのに」

「ただでさえ傷心中なのに、息子に張り手されたら立ち直れねぇと思うぜ?」

「そうですね〜、どうせならこのままラグナロクに乗せて、帰って貰いましょう。セルフィとアーヴァイン、大統領をエスタまで無事送り届けてください」

「「ラジャ〜」」


翌日、『大統領が使い物にならない』とエスタから苦情の電話がきたのは言うまでもない。


END


これはプチオンリーで発行した『BISTRO 8』のサイドストーリーというか、翌日のハナシです。
本の中に組み込もうと思ってたけど、間に合わなかった(^^;)
あと1話、リノア絡みのハナシもあったり・・・