| A Guardian Deity |

07

「わりぃ。今夜はその…ダメだ」



あんなに元気だったのに、今はグッタリと項垂れた俺の息子。
せっかく土曜日のうちにスコールが早く帰ってきて、明日は休み。
ついでに場所はラブホテルという、絶好のシチュエーション。
待ちに待ったH許可が出たのに、すっかり戦意喪失していた。



「今更それはないだろ。コッチは準備OKなのに」



俺だってさっきまでは超OKだったぜ。
だけど、盛り上がった所を現実に引き戻されて、そのまま続行出来るほど俺は図太くない。



「俺はオマエと違って、心は繊細なんだよ!」

「こんな手術跡くらい何でもないだろ…アンタもっと目立つトコに傷付けたくせに」



スコールの額に残る俺が刻んだ傷。
俺にも対照的に、スコールが付けた傷がある。
一生残る目立つ傷だが、これは勲章…今となっては所有印みたいなもんだ。
この傷と、頭の中にある傷とじゃ意味が違う。
この傷の下には、小型爆弾が隠れているんだ。
コイツには何の落ち度もないのに、俺のトバッチリで。
俺が外で何かやらかしたら、自爆を迫られることだってあるかもしれない。
そういう事態だって有り得るのは、コイツだって分かってるはずだ。
それなのに、何でこんなにコイツは平気な顔をしていられるんだ?



「俺の場合は、自分で自爆コードを発動させなければ爆発しないんだ。アンタみたいに時限式でもなければ、誰かの死によって爆発することもない。だから、そんなに深刻になることないだろ?」

「俺が何かやったって、オマエが自爆する必要なんてないだろ。俺のせいで死ぬのは嫌じゃないのかよ?」

「別に。まぁ手術で少しハゲたのはムカついたけど」

「…他にもあるんじゃないのか?俺絡みで、押しつけられたり、制限されたりすることがよ?」

「勿論あるに決まってる」



…即答かよ。



「他にも変な手術されたのか?」

「いや。体をイジられたのは、ここだけだ」

「爆弾以外は何があるんだ?」

「別に。これに比べたら、たいしたことじゃない」

「言えよ」

「バラム・ガーデンに永久勤務が決まったのと…結婚してガーデンの外に家庭を持つことが出来ないだけだ」



だけ…って軽く言えるモンじゃねぇだろ。
この歳で、一生独り身でいろだなんて、どこの馬鹿野郎がそんなこと言ったんだ?
そういう奴に限って、愛人を何人も囲ってるに違いない。
しかも、人生のレールまで決められて、これじゃあ未来を潰されたようなもんだ…



「何でアンタがそんなに凹むんだ?俺は別にこの程度の条件はなんとも思ってない。だから、ほら続き…」

「そう簡単に復活するかよ」



俺にはショックだったのに、コイツにはその程度の問題なのかよ。
続きを促されても…すっかり落ち着いてしまったしなぁ…
もったいないが、今夜はもう諦めるしかない。
それなのにスコールは真顔で一言。



「だったら、俺が手伝えばいいのか?」



一瞬、耳に届いたコトバが理解出来なかった。

手伝う…
手伝うって…
手伝う!!!!!?

俺は今日何度心臓が止まりかければいいんだ?
現金なことに、その一言で復活の兆しが見え始めていた。
頭の爆弾とか、結婚とか、もう頭の片隅に追いやった。
今は「手伝う」の一言が脳内を独占している。



「何だ…少し復活してきたな。手伝う必要はないか…」

「い〜や。俺のモノは、まだまだこんなの復活した内に入らないらねぇよ。せっかくだから手伝ってくれ」

「…随分嬉しそうだな」

「いいからヤレよ」



スコールが俺のモノに手を伸ばす。
そして少し躊躇いがちに軽く握った。
クールな言動のわりには、その手は緊張で微かに震え、冷たく汗ばんでいる。



「熱いな」

「オマエが触ったから熱くなったんだ。擦ってみろよ」

「擦れば…いいのか?」

「オマエだって自慰くらいしたことあるだろ」

「しない。そんなのしなくても入れ替わりに女子がきたし」

「その女子達は、誰も擦ってくれなかったのか?」

「…自分がやるのと、やって貰うのとじゃ勝手が違う」



恐る恐るスコールが擦り始めた。
擦るというより撫でてるといった感じでくすぐったい。



「もう少し強く握ってもいいぜ」

「潰れたら?」

「そんな簡単に潰れるか」



冗談を言ってるかと思ったら、スコールの顔は真剣だった。
上気した頬は桃色に染まり、緊張で強張っている。
呼吸も早く浅い。

コイツ…俺のを触って興奮してるのか?



「あ…大きくなってきた」

「オマエ上手いな。すっげぇ気持ちいいぜ〜」

「じゃあ、こういうのは?」



そう言って屈みこんだかと思うと、俺の股間に顔を埋め、俺のモノをパクリと何の抵抗もなく口に含んだ。


だ〜〜〜〜〜っ!?


いつかは、やって貰おうと思ってたが、それは今じゃねぇ。
1つ1つ段階を踏んで、俺の色に染めようという計画が、2度目にしてブチ壊しだ。
っつーか、俺が先にやるつもりだったのに!!


「この野郎…俺だってまだ遠慮して、オマエのしゃぶってねぇのに!」

「やった者勝ちだろ」

「う…」


挑発的な言葉と共に出た吐息が俺のモノにかかり、ゾクゾクする。
スコールの熱い舌が亀頭の裏側を滑り、根元までスライドする。
それだけで熱がどんどん集まっていった。
くそ…なんて舌使いだよ。
甘噛み加減も絶妙で、先端から雫が垂れるのはそう時間がかからなかった。



「上手いじゃねぇか。本当は初めてじゃねぇんだろ?」

「疑い深いな。アンタが初めてだ。光栄に思え」

「初めてだ?そしたら生まれつきの才能だな」

「黙れ」



スコールが股間から上目づかいに見上げ、男のモノを咥えながら偉そうに言う姿は…逆に俺の欲情を掻き立てる。
ここまで回復したら、もう自力で疾走可能だ。
俺は体勢を入れ替えようと、スコールの肩を掴み、押し倒そうとした。
だが、一瞬早くスコールが圧し掛かり、俺のほうが仰向けに転がった。
ニッと何かを含んだ笑みを浮かべ…



「今日は俺が全部やる」

「は?」



やるって…
まさか俺をヤルっていうことか?
マジかよ…
流石にリバーシブルという展開までは考えちゃいなかった。



「アンタ、なんて顔してるんだ」

「いや…オマエが俺に突っ込むって全く予想してなくてよ、本気で驚いているんだ」

「何で俺がアンタに突っ込むんだ?自分で挿れると言ってるんだ」



自分から!!!!
昔からコイツって何考えてるか分からねぇトコがあったが、今日は全く予測不能だ。
だけど、いくらなんでもまだ早い。



「まだやめとけって。身体が慣れてねぇのに、そんな上級者コースは絶対無理だ」

「煩い。俺は主導権握られて、やられっぱなしは嫌なんだ」

「んなこと言って、オマエ自分の後ろはどうやって解すんだ?」

「あ…」



流石に自分で解すとは言えないらしい。
コイツ、変なところでヌケてるよな。



「じゃあ俺を跨ぐように四つん這いになって、コッチに尻を向けろよ」

「何で?」

「オマエが俺のをしゃぶってる間に、俺もオマエの後ろを解してやる」

「それって絵的に…すごく恥ずかしくないか?」

「他に見てるヤツもいねぇのに、恥ずかしくないだろ」

「アンタが見てる」

「当たり前だ。っつーか、俺のをしゃぶってるヤツが、何を恥ずかしがってるんだか」

「そうだけど…」

「ヤリたいんだろ?早くしねぇと、俺のがまた萎んでくるぜ?」



不承不承といった感じで、ノロノロと俺の上で向きを変える。
四つん這いのまま振り返ると、自分の股間の間から俺を見る形になってスコールの頬が羞恥で赤くなった。
流石に恥ずかしいか。
自分のモノを視界に挟んで俺を見るのは。



「…こうか?」

「ちょっと待て」



枕を重ねて背を預けると、スコールの蕾がちょうど良く目の前にきた。
尻を引き寄せ蕾に息を吹き掛けてやると、ヒクッと収縮する。



「んっ!」



おおー!
薬がなくても感度良好。



「こっちも準備OKだ。始めようぜ」



生温かくヌメったものが、俺の陰茎に絡みつた。
さっそくオクチに頬張ったか。
俺もスコールのまだ固く結んだ蕾をベロリと舐めると、何か言いたげに振り返ったが、思いっきり無視して蕾の窪みに舌を突き刺すように押しつける。
舌先を細かく動かしながら先端を少し潜り込ませると、「あ…んんっ」と色っぽい声を漏らし、スコールの動きが止まった。
その快感が去る前に、俺は左手にローションをたっぷり垂らし、太腿を抱え込むように腕を回した。
そしてスコールの動きに合わせて揺れるモノを、その手で擦り上げる。
急に与えられたヌメヌメとした感触に、スコールの体が強張った。



「ああっ…ちょ…やめ!…解すのは後ろだけだろ?」

「旨そうなのが目の前にブラ下がってるのに、見てるだけじゃ勿体ないだろ」

「くっ…また俺ばっかり…ズルイ」

「やった者勝ちなんだろ?」



悔しそうなスコールにニヤリと笑う。
無言で前を向き、さっきより早い動きで俺のモノを育て始める。
この負けず嫌いめ。
子供の頃は泣き虫で…だけど負けず嫌いだったスコール。
今はもう泣きはしなくなったが、こういうムキになる所は変わってないよなぁ。

さて、本人もああ言ってることだし、本格的に後ろを解してやるか。
俺の舌で軽く弛めたそこは、ほんのりと赤みを増していた。
ローションを垂らしながら、指先を埋めるとヒクヒクと誘い込むように収縮する。
この間の夜を身体が覚えているのか、まるでここだけ飢えた生き物のようだ。
そのまま引き込まれるように指を一旦根元まで沈めると、呻き声と共に指を締め付ける力が強くなった。



「サイファー…痛い」

「力抜けよ。自分で締め付けて痛くしてんだぜ」

「無理」

「そんなんで、よくまぁ自分でヤルって言ったもんだな」
「〜〜っ…」



グリッと捻ねりながら指を引き抜く。
そしてまた指にローションを塗りつけ、蕾の奥へと潜り込ませた。
何度も繰り返し、そして指の数を増やしていく。
時々内部で指を曲げて刺激を与えると、甘い声が漏れ始めてきた。
前の雄からも先走りが溢れ出し、俺の胸や腹の上にポタポタと落ち始めている。
その頃にはもう、俺のモノに手を添えるだけで、スコールの動きはすっかり止まっていた。
手足はガクガクと震え、四つん這いの体勢を維持するのがやっとという感じだ。



「ふ…ぅんっ…」

「おい、そろそろ余裕がなくなってきたんじゃないのか?さっきから手も口もお休みしてるぜ?」

「…うっさい!アンタだって、もう何もしなくても、こんなになってるくせに」



スコールが言ったとおり、俺のも元気を取り戻し反り勃っている。
いつでも出撃可能だ。



「ソレがオマエの中に入るんだぜ」

「本当にこの前…コレが入ったのか?」

「根元までしっかり飲み込んでたぜ」

「そうか…じゃあ入れてみる」



コイツ…やっぱり自分でヤル気かよ。
スコールが俺と向き合うように体勢を戻し、勃ち上がった俺の雄を、赤く濡れた秘所へとあてがう。
先端が少し潜り込み…だが、そこで動きが止まり、なかなか腰を落とすことが出来ないでいた。
そりゃそうだ。
まだ2度目だぜ?
しかも今回はクスリ無しでシラフだ。
そんな状態で貫かれるのを想像したら…直前で戸惑ったてところか?
どっから知識を仕入れてきたか知らねぇが、行動がそれについて行ってない感じだな。



「ほら、出来ねぇんだろ。俺に主導権寄こせって」

「いやだ」

「じゃあ手伝ってやるから、もっかい後ろ向け」

「いやだ」

「出来もしねぇくせに、アレも嫌、コレも嫌って…」

「だって、後ろ向いたらアンタの顔が見えないだろ」



切羽詰った顔でそんなコト言われたら…
俺の方が我慢きかなくなっちまった。
スコールの男にしては細い腰を掴み、引き下ろす。
ズブッと先端が潜り込み、驚いたスコールのバランスが崩れ…
そのまま一気に根元近くまで蕾の中に飲み込まれた。



「うぁあ…サイ…ファ!」

「くっ!」



直後に熱く強烈な締め付けが襲ってくる。
スコールも辛そうな顔をしてるが、俺も相当キツイ。
何とか震える手でスコールのモノを掴み、刺激を与えすぎない程度に擦ってやると、少しずつ力が抜けてきた。



「ふ〜、オマエ…絞め過ぎだ」

「少し…ぐらいじゃ…潰れないんだろ?」

「憎まれ口だけは達者だが、これからどうすんだ?」

「これから…」

「自分でヤルんなら、自分で動かねぇとなぁ?」



すでに身動き出来ない状態なのは見て判る。
俺は「よっ」と身体を起こし、スコールの腰を引き寄せた。
更に深く楔を打ち込まれたスコールが、仰け反るのを両手で支える。



「あ…あっ…勝手に動くな」

「強情っぱりめ。動けねぇんだろ?自分でやんのは、また今度にしろよ」

「次は…もう…ないかも」

「じゃあ、今のうちに堪能しとくぜ」



腰を突き上げると、スコールが呻いた。
閉じた目尻に浮いた涙を舐めとると、震える様な吐息が漏れた。
躊躇いがちに開いた瞳と目が合う。
どちらからともなく唇が引き合うように重なった。
スコールの舌を追いかけ絡ませると、繋がった場所がヒクヒツ蠢いた。
今回が2度目のせいか、すぐに痛み以外の感覚を掴み始めたようだ。
突き上げる速度を上げ、スコールを攻め立てる。
振り落とされないように俺の首に両腕を回し、肩口に顔を埋めていたスコールの呼吸が熱く早い。



「ああ…サイファ…もう…」



それが合図のように、スコールの中が痙攣し収縮した。
俺もその締め付けに逆らわず、奥の肉壁に男の精を解き放った。





**********







1週間ぶりに下半身は満足した。
それなりに楽しめた。
だが、体は繋いでも、コイツの本心が見えてこないのは気持ちが悪い。
今回だってそうだ。
表面上は何でもないような澄ました顔をしてるが、俺にはスコールが相当無理をしているように見える。
シドが苦言するくらい俺は過保護にされているみたいだしな。
確かに、駅に迎えに行っただけであの剣幕は異常だ。
かと思えば、こうやってコイツから誘ってみたり。
自惚れてるワケじゃなぇが、これじゃまるで…
必死に俺の気を引いているみたいだ。



「さぁて…始めるか」



何で自分の身を犠牲にしてまで、俺をガーデンに保護しようとしたのか、いい加減ハッキリさせたい。
コイツの傍にいるって覚悟を決めたからには、奥底に隠してる本心を吐き出してもらう。
俺を好きって言うなら両想いってことで嬉しいし、例え別に違う目的が在ったって構わない。
でないと、何を守れば良いのか履き違えるかもしれねぇ。

俺はシーツを裂き、簡易ロープを作った。
そして最初に襲った時のように、スコールの両腕を縛る。
余ったロープの端は、窓の転落防止柵に結びつけた。
両足を縛ってる時に、ようやくスコールの意識が戻り薄っすらと目を開く。
ああ…本当にムカツクくらい綺麗だよな。
この綺麗なイキモノが、その身体で俺の精を受け止めたなんて今でも信じらんねぇ。

そんなコトを考えながら足を縛ってると、その綺麗なボンヤリとした目に、戸惑いの色が見え始めた。



「サイファー…なにを?」

「よっし!完了っと」



縛り終えた俺は、スコールを置いて扉に向かう。



「じゃあな、スコール。この1ヶ月、結構楽しかったぜ」



いっきに覚醒したスコールが青ざめた。
俺を追いかけようとするが、縛って繋いだシーツのロープに行動を阻まれガクンと動きが止まる。



「サイファー、どこに行く気だ?アンタそのままじゃ、半日で死ぬんだぞ」

「ああ、そうだな。半日もあれば死に場所を見つけるには充分だ」

「サイファー…ふざけてるだけなんだろ?」

「オマエを俺から解放してやるよ。俺が死んだら頭のふざけたモン取り外してもらえばいい」



努めて穏やかに言う俺に、スコールは本気を感じ焦ったのか、今までクールぶっていた仮面が剥がれ始めた。



「行くな!死んで欲しくないんだ!」

「俺を保護することで、ガーデンは色んなコト要求されてんだろ?俺にそんな価値はねぇよ」

すること言うな!それだけの価値があるから、みんなが動いたんだ!」

「ミンナって孤児院で一緒に育ったアイツ等だろ?幼馴染だからって、変な気を使わなくたっていいんだぜ」

「違う…そんなんじゃない」

「じゃあ何だ?俺にはどんな価値があるんだ?」

「…俺と互角なガンブレード使いだ」



スコールは、一瞬言葉に詰まり、それから無難な答えを言った。
だが、俺が欲しいのはそんな言葉じゃない。



「バーカ。それはオマエがSeeDになる前のハナシだろ。今の俺は、オマエの足元にも及ばないさ。なぁ、他にもっと、別の理由があるんだろ?」

「…」

「言えねぇような後ろ暗いことなのか?俺はそんなモンに巻き込まれるのは真っ平だぜ」



スコールに背を向け、ドアノブに手をかける。
もしも、ここで何も関係が変わらないなら…本当に終わらせてもいいと思っていた。
俺は何も知らないまま、コイツに守られてヌクヌクと生き伸びたくない。



「嫌だ!俺を置いて行くな!どうしたら俺の側にいてくれるんだ!?」



ようやく本音が出てきたな。
もっとオマエの心を曝け出せ。
振り返り、スコール側へ数歩近づくと、明らかに安堵した様子だ。



「なんだ?オマエ、俺にいて欲しいのかよ?」

「…」



ここでまた黙るか。
これじゃあまるで以前のスコールだ。
だが、俺にはコッチのスコールの方が馴染みがあってやり易い。



「おい、ダンマリなら俺は行くぜ?」

「待ってくれ!いて欲しいから!…あの夜這い事件で、サイファーが俺に興味持ってるのが分かって…だからアンタが退屈しないように頑張って、必死にアンタ好みになろうとしたじゃないか!」

「………はぁ?」



欲しかった言葉はまだ完全じゃない。
だけど、ついてきたオマケの事実にポカンとする。



「俺好みって…どういう意味だよ?」

「アンタの要求にすぐ応えても、面白みがなくてスグに飽きられるとか…だけど、あんまりジラしすぎても離れてくとか…意外な行動を取れば、アンタは俺から目が放せなくなる…って色々教えてもらったから、俺は毎日必死に策を練って…」
「誰だ?んなこと教えたのは?」

「アニタ」

「何でまた、そこにアニタが出てくんだ?」

「サイファーと付き合ってた人間に聞くのが一番的確だろ」



まぁ、確かに当たってるけどな。
…って、もしかして俺は、昔からコイツのこと気になってたのか?



「何だか…ハナシがおかしくなってきたな」

「サイファーが俺の計画をおかしくした張本人だろ!」

「はぁ?」



何で俺の知らない計画のことで、しかも逆ギレされんだよ?
そんなの知らないっつーの!
だが、顔を真っ赤にした涙目のスコールに凄まれると、本当に俺が悪い気がしてくる。



「そもそも、サイファーが俺を殺しに来るんじゃなく、夜這いに来るから計画が狂ったんだ!…しかもアンタは思いっきり失敗するし!最悪だ!」



確か最初に抱いた夜にも、俺が殺しに来るのを待ってた…みたいなことを言ってやがったな。
その後アニタが来て『ちょっとしたリップサービス』とか言いやがったくせに、コイツ、実はかなり本気だったのかよ。
だけど夜這いじゃなく、俺は強姦に行ったんだっつ〜の!
強姦だから下手でもい…
じゃなくて!
アレをもう蒸し返すなっつーの!



「あの時の話はもういいだろ!っつーか、俺は夜這いじゃなく、強姦するつもりだったって言っただろ!それなのに、オマエが超ウエルカム状態だったから、俺だって予定が狂ったんだよ!」

「こっちだって、あれから作戦変更するのが大変だったんだ!アンタは俺を憎むどころか、夜這いのリベンジ誓って俺を抱く気満々だったし!」



またソレだ。
計画とか作戦とか。
そこが肝心だろ!
スコールが体を張ってまで俺をとどめたい本当の理由を早く言え!
何でスポーンと出てこないんだよ!?



「だから何だよ、その作戦とか計画っつーのは!?」

「俺は…憎まれ役になるハズだったんだ。俺に憎悪が向いてたら、他には被害が出ないからな」

「そりゃムカついたぜ。だから襲ったじゃねぇかよ」

「襲うの意味が違うだろ!アンタがソッチ方面できたから、憎しみの対象から、恋愛や性欲の対象になる計画に急遽変更したんだ!俺を抱いて大人しくなるなら、俺だってアンタを満足させるテクが必要だろ!」

「テク?」

「アンタは飽きやすいから、マグロは駄目だって。意外性で攻めなきゃ逃げられるわよ…って」

「誰だ?んなこと言ったのは?」

「アニタ」

「それもあの女か。昔からあの女はよー…」



昔?
確か付き合ってたことがあって…でも、それはいつだった?
あの女はガーデンで何を専行してた?
何も思い出せないが、デートコースだけは鮮明に浮かぶ。
だが、その場所に一緒に行ったのは…



「おい。アニタはガーデンで何をやってるんだ?」

「何って?」

「アイツ、20歳超えてるだろ。通常ならガーデンに残ってねぇはずだ。先生やってんなら何を教えてる?」

「そういえば…あれ?」

「俺がいない間、アニタがお前の部屋に行けない晩は、他の女子を斡旋してたそうだな」

「ああ」

「その女子達をオマエ本当に抱いたか?」

「抱いた…と思う。でも…」



スコールの中でも「?」マークが飛び交っているようだ。



「じゃあ最後に聞く、リノアはどうした?戻ってから一度も会ってねぇぞ」

「リノアは魔女の修行中で留守だ。それに以前言っただろ。別に付き合ってるわけじゃ…ないんだ」

「結婚禁止だから別れたってか?」

「ああ…だって可哀想だろ。でも何でアニタからリノアの話になったんだ?」

「本当に気付いてないんだな」

「え?どういう意味だ?」



これはガーデンに帰ってから、目の前でネタバラシした方が効果的だろうな。
今はもっと肝心なことを聞かなきゃならん。



「そんなコトより、身体を差し出すっつ〜ことまでして、俺を引き止める理由はなんだ?何で側にいて欲しいって思うんだよ?俺なんて、自分で言うのも何だが、厄介もんだろ?」

「理由は…その…一言じゃいえない」

「いいぜ。オマエがわざわざ早く帰ってきてくれたお陰で、時間はタップリあるんだ。ここだったら邪魔も入らねぇし、じ〜っくり聞いてやるよ」



目に前にいるのは、もう【やり手】の指揮官様じゃねぇ。
面倒くさがって自分の考えを言わない、俺が知っているスコールだ。
自分を理解して貰おうという努力をしないって損だと思うが、産まれついての性格じゃ仕方がない。
俺からしたら、この1年で社交的で積極的になったスコールを「良い変化」で片付けてしまった連中の方がどうかしてると思うぜ。
たった1年やそこらで、この性格が変わるわけねぇ



「理由言えば…アンタはガーデンに残ってくれるのか?」

「その理由がふざけた答えじゃなかったな。そしたら…ガーデンというより、オマエの傍にいてやるよ」


スコールの目が驚いたように見開く。


「俺の…」

「ああ。嫌だと言っても一生傍にいてやる」

「本当に?」

「嘘じゃねぇよ」



義務や哀れみで俺をガーデンに保護したなら、こんなコトに食いついてくるわけねぇ。普通は一生傍にいるなんて言われたら、ウザがるもんだぜ?理由はなんであれ、俺に執着してるってことだ。
スコールが必死に俺を納得させる言葉を考えている。
まぁ、最初から本心を曝け出すとは思っていないが…



「じゃあ…アンタには稼いで償いを…というのは、駄目か?」



コイツはよ…
「じゃあ」とか言って、俺に聞いてくるあたり、もう駄目だろが。



「オマエな…こうやって、俺を外に出すのも怒って止めるくせに、そんな理由通ると思ってんのか?」

「その理由は駄目か…それなら、風紀委員を復活させたいから…とかは?」

「却下。それはキスティスの要望だろ」

「何でアンタが知ってるんだ?」

「本人から聞いたからに決まってるだろ。ほら、次」

「調理パンが売り切れる前に、ダッシュで購買まで…」

「それはゼルだろ?」

「文化祭や体育祭の実行委員を…」

「そりゃセルフィだな?おい、俺はもう本当に行っちまうぞ?」



余裕がないのは分かるが、俺を引き止めたいなら、嘘でもそれらしい理由を言えばいいものを…
言えば言うほど、ふざけてるとしか思えない理由だ。
このまま本気で、どっかに行っちまうかな…



「俺が他国に捕まる前に保護したのは、幼馴染の1人が戦犯として公開処刑されるのが、寝覚めが悪い。ただそれだけだろ?」

「…違う。…そうじゃない」

「あと半日、俺は誰にも見つからない場所にいればいいだけだ。オマエの目に付かない所で、この世から消えてやる。じゃあな」

「アンタにいて欲しい理由。それは…アンタは…俺を英雄扱いしない」

「あ?…当たり前だろ。オマエはオマエだ。今更態度を変えられるもんかよ。っつーか、いい加減、ふざけるの止めろよな。もうこれ以上、聞くのが馬鹿馬鹿しくなったぜ」



コイツ、本気で俺を引き止めたいのかよ?
流石に苛ついて睨むと、スコールは真剣な目で俺を見ていた。



「スコール?」

「ふざけてなんかいない。それが理由だ。俺には伝説のSeeDとしての発言しか許されない。英雄としての行動から外れた、俺自身の小さな希望や意見は全て…拒絶されたり…反対されたり…我侭だって言われるんだ。俺は…何も変わってない。…今まで通りにやろうとしているだけなんだ。周りで勝手に英雄像を作り上げて、皆が俺にそれを…強要する」



その言葉で、スコールのこの1年がどれだけのものだったかを知ったような気がした。



「俺は…世界中の人間を守ろうと思って、未来の魔女を倒したんじゃない。ガーデンの皆…もっと厳密に言えば、たったこの両手で数えれるだけの人間の未来を守りたかっただけなんだ。
それなのに、還ってきたら…俺は…世界中からまるで腫れ物扱いだ。口では皆、英雄とか言ってるけど…各国政府は俺達を警戒している。善き魔女として戦ったリノアまでだ。
封印はなんとか止めたけど、俺の行動がどんどん制限されていくんだ。今度は俺達がモンスターなのか?俺は一体何を守ったんだ?腹黒い政治家が安泰する世の中か?そんなつもりで戦ったんじゃない」



なりたくもない指揮官を押し付けられ。
伝説のSeeDというフィルターをかけられ。
スコールというまだ大人になりっきってない生身の人間を、祀り上げたこの世界。
そして畏怖の目を向けられ…



「オマエな…そんなに深く考えるなよ。世の中なんてそういうモンだろ。オマエがこんなに根暗でヤル気のない人間だなんて知らねぇんだからよぉ。周りにいる連中が理解してくれたら、それでいいじゃないか」

「俺も…仲間と一緒にこの苦難を乗り越えれば、大丈夫だと思ってたんだ。なのに…魔女の最期を見届けたのは俺だけど…なんで一緒に戦った仲間まで俺を"伝説のSeeD”扱いするんだ?俺はそんなに偉くない。それに、指揮官なんて本当はやりたくないし、俺には向いていない。だけど、何度言っても我侭言うなって辞めさせてもらえないんだ。それなら、皆が望む人間になるか、死んで開放されるかない。正直…優秀な指揮官を演じるのはもう疲れた」



あの徹底した指揮官っぷりは、やはり仮面だったのか。
コイツにとっては、せっかく歩み寄ろうと思っていた相手に、見えない線を引かれた気分なのだろう。
それを突破するだけの体当たりなコミュニケーションも取れない。
自然と、皆の“理想の指揮官”として追い詰められていたに違いない。
ちゃんと人間関係を築いてこなかったコイツの自業自得だけどよ。
コイツはなんて哀れなイキモノなんだ。
だが、同情はコイツがもっとも嫌う行為だ。
俺に求めているのは…いつもの俺。



「で、俺もオマエの言う、両手で数えれる“守りたい”人数に入ってたのか?だから爆弾を頭に埋め込まれてまでガーデンに引き取ったのか?」

「いや。ガルバディアがアンタの処刑を訴え始めて、ようやくアンタの存在を思い出した程度だ」

「オマエな…」

「だけど、思ったんだ…アンタならもっと上手くやれたはずなのにって」

「俺は犯罪者だぜ。指揮官なんて絶対誰も許さないだろ」

「そうだな。でも…アンタがガーデンにいれば、俺は自分を保てる」

「なんだ。俺はてっきり…オマエは俺のこと好きなんだと思ってたぜ」
「アンタ、それは自意識過剰だ」

「そうかよ?」

「伝説のSeeDがそう簡単に落ちるわけがない」



それはまるで…自分に言い聞かせているようだった。
今はそれでもいい。
取り合えず、スコールは本気で俺を必要としている。
縛ったロープを解きながら、もう1つの疑問を投げかける。



「それにしてもよ〜。オマエ、死ぬまで俺と一蓮托生なんだぜ?何でそんなに平気でいられんだよ?」

「アンタが傍にいたら、そんな退屈な人生じゃないだろ?」



絶句。
微笑み付きの直撃弾だった。
とんでもねぇ殺し文句だよ。

やっぱりコイツには、なるべく早目に「好き」と言わせよう…
と俺は心に固く誓った。




NEXT 08

本当はもっと××で▲▲なシーンが続く予定でしたが、根性なくて途中で力尽きました。
オイラこのシリーズの為に『官能小説用語 表現辞典』っていう本を買っちゃったアホなんだぜ(笑)
でもアレだ。
ノーマルカップルの表現だから、あまり参考にならんのね(汗)



2008.11.09

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