「ハーティリーさんからお届けものです」
22日の朝早く、宅配便の男が1つの箱を持ってきた。
発送人は…リノアかよ。
俺宛に何か送るって、どういう風の吹きまわしだ?
「モノは何だ?」
俺は警戒して、サインをする前に聞いた。
宅配便の男は、気を悪くした風もなく送り状を確認する。
「冷蔵の食品ですね。それ以上はちょっと分からないなぁ」
「食品か…それなら受け取るぜ」
男から箱を受け取り、部屋の中に入る。
「リノアがよぉ、俺に何か食い物を送ってきた」
「アンタの誕生日だからだろ」
「それはそうだけどよぉ…もうそんな仲じゃねぇぜ?」
「リノアは気まぐれだからな。突然アンタの誕生日を思い出して送ってきたんじゃないのか?」
それが一番妥当な線か。
あの女の行動は読めねぇからな。
「食い物らしいが…何が入ってんだ?」
天地無用のシールが貼ってあるから、ひっくり返したら駄目なモノか。
包装紙をビリビリ破り、箱の蓋を開ける。
俺は不覚にも、驚きで言葉を失った。
「サイファー?」
「おい、スコール…コレ見てみろよ!スゲェぞこれ!」
箱の中に入っていたのは、ホールのケーキ。
何が凄いって、ケーキのトップ部分に俺とスコールのツーショット写真がプリントされてるってことだ。
スコールを引き寄せ、肩を抱いた写真。
満面の笑顔の俺と、少し怒ったようなスコールがちゃんとケーキに印刷出来ている。
「本当だ。凄いな。食用のインクでここまで出来るのか」
「あの女も気が利くじゃねぇか。さっそく食うか」
キッチンからナイフと皿とフォークを持ってきて、さぁ切るぜ!…ってトコで気がついた。
ドコを切れば良いんだ?
真ん中から切ったら…俺とスコールが分断されちまう。
横に切ったら、首チョンパだ。
食わずにとっておけば、そのうち腐ってくるしよ。
そしたら腐った関係みたいで嫌だ。
冷凍…するか?
だ、駄目だ!
冷え切った関係になっちまう!!
これは…
なんて不吉なケーキなんだ!
「サイファー、何をそんなに悩んでいるんだ?」
「俺には…とても切れない!」
「アンタ、そういうトコ意外とナイーブだよな」
「うるせー」
「切れないなら…このまま食べればいいじゃないか」
そう言ってスコールは、ホールケーキにフォークを突き刺した。
「オマエ…頭良いな〜」
「は?頭使ってないし」
実は、スコールといえば、生クリームがついた皿は洗うの面倒だよな…
ぐらいにしか考えていなかった。
「オマエの部分は俺が食う」
「好きにすればいい。アンタが貰ったケーキだ。だけど俺はアンタの部分は食べないからな」
「何でだ!?食えよ!!」
「何か…ヤダ」
ヤダって…どういう意味だ?
聞きたいけど、聞いたら立ち直れなくなりそうで怖い。
「そうかよ」
2人無言でケーキを食べる。
俺は写真部分。
スコールはその周り。
そんなに大きくないケーキは、すぐに俺達の腹の中に納まった。
箱を片付けていると、スコールが俺の袖を引っ張った。
「別に…アンタが嫌ってことじゃないんだ」
「ああ?」
コイツまだそれに拘ってたのか?
「あの写真…リノアが撮っただろ?」
「そうだな」
「写真があれだけ笑顔ってことは…それを撮ったリノアにむけた笑顔なんだろ」
「はぁ?」
コイツ、何カワイイこと言ってんだ!?
っつーか、どういう勘繰りだよ!?
「スコール、それは違うだろ!オマエと一緒だから俺は笑顔なんだ!」
「そうなのか?」
「当たり前だ。あの女とはスッキリ終わったんだ」
「本当に?」
「ああ」
「でも…リノアはアンタにケーキを送ってきた。もしかしたら、まだリノアはアンタを好きなのかもしれない…」
どうしてそうなるんだよーっ!?
やっぱりこれは不吉なケーキだ!!
2人の元彼が、ケーキ1つで破局の危機を迎えている頃、それを贈った魔女といえば…
「うふふ〜*今頃ケンカでもしてるかな?」
やっぱり何かをしたらしい(笑)
END