更新日:2011.02.14
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掴みかかってきたサイファーの手を体を捻りかわす。
その反動で足払いをかけるが、勘のいいサイファーが受身を取りながら横に転がって素早く起き上がった。
その時、手に触れていた砂を俺めがけて投げつけ、視覚を奪おうとする。
サイファーの手を知り尽くしている俺は、エアロを発動させて砂を吹き飛ばす。
ついでにサイファーも吹き飛んだ。
揉みくちゃにされたサイファーが、地面へ綺麗に大の字になってバタリとうつ伏せに落ちる。
いつも思うが、あの「ぎにゃあ」という叫びはどうにかして欲しい。
立ち上がらないサイファーに近づくと、落ちた時に股間に衝撃があったのか、手で大事な場所を押さえて悶絶していた。
そのサイファーへ容赦なく声を掛ける。
「勝負あったな。俺の勝ちだ」
勝負は付いたが、これで終わりではない。
むしろ今からヤルことが肝心だ。
仰向けに転がす為にサイファーの背を蹴り上げようとしたその時。突然振り返ったサイファーに足首を掴まれた。
一瞬で風景が回転し、俺の背は地面についていた。
クソッ…あれは芝居だったのか。
「悪ぃな、スコール。俺の勝ちだ」
「…」
「さぁ終わりにしようぜ。さっさと口を開けろ」
悔しさにサイファーを睨みながら、口をゆっくりと開けた。
サイファーの親指が俺の唇を撫で、そして…小さな塊を口の中に入れた。
甘い甘いチョコレートを1粒。
「どうだ?美味いだろう?」
「アンタのチョコは甘すぎる」
「俺みたいだろ?」
「最悪だ。死ね!バカ!」
「へいへい」
サイファーが笑いながら俺の腕を取り、起き上がらせようとした。
「まだ終わっていない!」
俺がその腕を思いっきり引っ張ると、不安定な中腰だったサイファーが、バランスを崩して膝をついた。
そのままサイファーの首に片腕を回し引き寄せて、素早く口の中へ自分が作ったチョコを突っ込んだ。
「オマエな…」
「気を抜いたアンタが悪い。ほら存分に味わえ」
「苦ぇ…オマエ、チョコはもっと甘くしろよな」
「それ以上甘いもん食ったら、アンタの頭は砂糖漬けになってしまう」
「スイーツ男子の何が悪い」
「砂糖はもっと有意義に使われるべきだ」
昼休みに訓練施設で暴れている者がいる、と連絡を受けたキスティスとセルフィが見たものは…
ガーデン屈指のガンブレード使い2名のじゃれ合いだった。
「ねぇ、あれってバトルじゃなかったの〜?」
「いつものイチャイチャよ。気にしたらダメよ」
「ハンチョ達って、いっつも仲いいよね〜」
「全然羨ましく思えないのが笑えるけどね。さ、行きましょ」
「止めへんの〜?」
「あんなバカップルに付き合ってられないわよ。昼休みが勿体無いわ」
呆れたキスティスが、声も掛けずに出口へ向かう。
セルフィもその後に続き、残されたのは2名の男のみ。
不毛な口喧嘩もといイチャつきは、結局、休憩時間が終わるまで延々と続いた。
END
2011.02.14